日々の疲れを洗い流し、心身共にリフレッシュできる温泉旅。天然資源である温泉はその土地ごとの個性があり、ただ体が温まるだけでなく、全身の凝りがほぐれるのを感じられたり美肌に近づけたりなど、普段の入浴では得られないさまざまな恩恵をもたらしてくれます。

そうした温泉のポテンシャルをしっかりと実感できる九州の名宿を、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんがピックアップ。今回ご紹介するのは、熊本・小田温泉にある「草太郎庵」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の3000スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

5つの貸切風呂を完備!秘湯の温泉宿で心も体もデトックス

熊本・阿蘇山と九重連山の緑深い山々に囲まれた小田温泉。全国的にも有名な黒川温泉から車で5分ほどのロケ―ションながら、賑やかさから隔絶されたのどかな田園風景が広がり、知る人ぞ知る秘境の名湯として温泉愛好家たちの間で厚い支持を得ています。

「草太郎庵」の外観
木々の奥にひっそりと佇む「草太郎庵」。

今回ご紹介する「草太郎庵」はその一画に佇み、本格手打ちそ蕎麦が味わえる食事処と5つの貸し切り湯を備えた1日4組限定の純和風温泉旅館。高い口コミ評価を誇り、なかなか予約がとれないほど人気の宿の魅力について植竹さんはこう話します。

「5か所ある温泉は全て貸切風呂。入口に“入浴中”の札がかかっていなければ、予約なしでいつでも好きなときに利用可能で、人目を気にせず源泉かけ流しの湯をゆったり堪能できます」(植竹さん)

山魚狗の湯
5つの貸切風呂の中で最も広い「山魚狗(やませみ)の湯」。22時まで利用可能。

「泉質は、ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉。古い角質や皮脂などの汚れを乳化して、なめらかなツルすべ肌へと導く炭酸水素塩泉と、肌の蘇生を促してしっとりふっくら肌に近づける硫酸塩泉という美人の湯の要素をダブルで兼ね備え、さらに保湿をサポートするメタケイ酸も豊富に含まれるというマルチコスメのような湯です」(植竹さん)

頬白の湯
「頬白(ほおじろ)の湯」は24時間利用可能。深夜に静寂のなか星空を眺めながら湯浴みするのもおすすめ。

「5つの貸切風呂は、岩風呂、檜風呂、石風呂など浴槽の造りが異なり、それぞれの風情を楽しめるのも魅力。開放感のある露天風呂で緑の木々に囲まれて湯浴みするのも、和の情緒溢れる内湯でじっくり名湯と向き合うのも非日常感たっぷりで心も洗われます。浴槽に浸かると、少しとろみのある湯が肌にぐいぐいと染みわたるようで、自然豊かな環境でのんびり寛ぎながら肌に潤いを閉じ込める愉悦のひとときを過ごすことができました」(植竹さん)

22時まで利用可能な「小啄樢(こげら)の湯」。秋には紅葉を眺めながら湯浴みできるとのこと。
22時まで利用可能な「小啄樢(こげら)の湯」。秋には紅葉が目を楽しませてくれる。
鴛鴦の湯
冬場に一番人気の「鴛鴦(おしどり)の湯」も24時間利用可能。
鶯の湯
24時間利用可能な「鶯(うぐいす)の湯」。3つの露天風呂のなかでは最もこぢんまりとしている。

麺もつゆも絶品!職人の技が光る本格手打ち蕎麦に舌鼓を打つ

こちらの宿は、オーナー自らが手打ちする蕎麦も人気。ランチタイムの食事処は宿泊客以外も利用可能で、珠玉の味わいを求めて数多くの客が訪れます。

食事処
食事処からの眺めも趣きがある。

「阿蘇産と北海道産の蕎麦粉を店内の石臼で挽いてブレンドし、清らかな水で手打ちした蕎麦は風味豊か。冷たい蕎麦は細麺、温かい蕎麦は太麺と2種類を使い分けるなどこだわり抜いた麺は、食欲をそそる艶感とほのかな香りがあり、つるつるとなめらかな喉越しがたまりません。

私は、えび天、山芋、大根おろしの3種類の味を楽しめる『三色割子そば』をいただきましたが、コシのある蕎麦とキリリとしたつゆの相性も絶妙で、素朴ながら奥深い味わいがしみじみと印象に残っています」(植竹さん)

三色割子そば。
三色割子そば。
蕎麦のアップ
こだわりの手打ち蕎麦は、食通の胃袋をつかむ逸品。

夕食は1日4組の宿泊客のためだけに提供される和食会席。脂肪分控えめで赤身本来の旨味が楽しめる“あか牛”の石焼きや、熊本名物・馬刺しなど、郷土色も豊かな料理の数々が旅人のお腹も心も満たします。そして、シメにはもちろん名物の手打ち蕎麦が登場。食べる直前に自分ですり下ろす生ワサビで蕎麦の甘みが引き立ち、満腹状態でもついつい箸が進むと評判です。

夕食一例
夕食の一例。

以上、熊本・小田温泉の「草太郎庵」をご紹介しました。阿蘇の雄大な自然に抱かれた隠れ宿で、極上の湯と滋味深い料理にもてなされ、心からリラックスできるひとときを過ごしたい人は、次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

問い合わせ先

  • 草太郎庵
  • 住所/熊本県阿蘇郡南小国町満願寺5956 
    客室数/全4室
    料金/朝夕2食付き 2名1室1名¥14,300~ 
  • TEL:0967-44-0108

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WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)