日に日に暖かさがまし、今年もお出かけシーズンが到来しました。お気に入りのスニーカーをスタンバイさせている方も多いのではないでしょうか?
スニーカーの出番が増えてくると、気になるのはそのメンテナンス。特に素材が特殊で繊細なハイブランドのスニーカーは「傷めてしまうのでは……」という不安から、なかなか自宅ではお手入れしにくいですよね。
そこで今回は、水洗いクリーニングの専門店「Licue(リクエ)」の職人で、被服の素材に詳しい永井良房さんに、自宅でできるハイブランドスニーカーのお手入れ方法を伺いました。
ハイブランドのスニーカーを傷めずキレイに!自宅でできるお手入れ方法
今回用意したスニーカーは2種類。どちらも、レザー素材のスニーカーです。
● 女性らしいカラーにスタッズが印象的なクリスチャン・ルブタンのスニーカー
1足目は「クリスチャン・ルブタン」のフラットタイプのスニーカー。赤いレザーとスタッズに、白いソールと靴紐が特徴的です。
● エナメルの光沢とウッド素材のソールが特徴的なステラ・マッカートニーのスニーカー
2足目は「ステラ・マッカートニー」のエナメル加工されたレザーと星形のパッチが愛らしい「コッパー エリス スター シューズ」。つま先が深い型と、ソール部分にウッド素材が使われていることが、お手入れでポイントとなります。
永井さんによると、この2種類はレザーの上から特殊なコーティングがされており、とてもデリケートなのだそう。そのため、今回教えていただいた方法は基本的にどんなスニーカーにも対応できるそうです。
自宅にあるもので準備完了!まずは用意するものを確認
お手入れを始める前に、必要な物を確認しましょう。
●本体のお手入れの汚れ落としのステップで使う
・エアダスター ・爪楊枝 ・歯ブラシ
●靴紐のお手入れ・本体の水拭きのステップで使う
・タオル(数枚) ・メラミンスポンジ ・綿棒
・食器用中性洗剤 ・衣類用柔軟剤 ・皮革用加脂剤
●本体を乾燥させるステップで使う
・和紙 ・割り箸(あればシューキーパー)
このほかに、水と洗剤を混ぜるための小さなコップ、タオルを洗うためのバケツ、靴紐を干すためのハンガーなどもあると便利です。また、お手入れした後に乾かす場所として、直射日光が当たらず風通しのいい場所も確保してください。
段階を踏んで少しずつ汚れを落とす!
ハイブランドのスニーカーのお手入れ「基礎編」
まずは、クリスチャン・ルブタンのスニーカーのお手入れからご紹介します。
【基本ステップ】
■1:靴紐のお手入れ
■2:本体の汚れを乾いている状態で払い落とす
■3:ソール部分の汚れを落とす
■4:レザー部分のお手入れ
■5:型を整えて乾燥する
それぞれのステップについて、詳しく見ていきましょう。
■1-1:靴紐のお手入れ――食器用洗剤を使ってつけ置き洗い
まずは、靴紐をスニーカーから外して洗います。
靴紐を外したら、食器用中性洗剤を溶いた水に浸し、30分以上置きます。
地面に近いところにあり、洋服に比べさまざまな汚れが付きやすい靴紐は、衣類用洗剤よりも洗浄力の強い食器用中性洗剤で洗うのがいいとのこと。
洗剤と水の割合は、靴紐の素材や色によって調整します。今回の靴紐は丈夫な繊維でつくられており、色落ちの心配がない白色なので、「水:洗剤=1:1」の濃い洗浄液で洗います。水を熱めのお風呂くらいのお湯にすると、さらに洗浄力がアップします。
靴紐をつけ置きしている30分の間に、「■2」以降のスニーカー本体のお手入れを進めると、効率よく時間を使えますよ。
■1-2:靴紐のお手入れ――もみ洗いで汚れを落とす
30分程度つけ置きしたら、靴紐を水から取り出してもむように洗います。
もみ洗いをしても汚れが残っている部分は、食器用洗剤を原液でつけ、ピンポイントでこするように洗いしましょう。
汚れが落ちきったら、流水に当ててすすぎ、洗剤をしっかり落とします。
■1-3:靴紐のお手入れ――指アイロンで型を整えて陰干し
靴紐をすすぎ終わったら、ハンガーなどにかけて陰干しします。
靴紐には折りじわがついていることも多く、また干すと布が乾燥するときに変形することがあります。ハンガーにかける前に、指でアイロンをかけるようにしごいて型を整えましょう。
型を整えたら、室内の風通しがいいところで陰干しして乾燥します。日の当たる屋外の方が乾きやすいような気がするものですが、濡れた靴紐に砂埃などの汚れがついてしまう恐れがあるため屋外は避けたほうがいいとのこと。また、直射日光に当たると紫外線で変色してしまう可能性もあるそうです。
陰干しして乾いたら、靴紐のお手入れは終了です。
■2-1:本体の汚れを乾いている状態で払い落とす――靴底の泥や砂を歯ブラシで落とす
ここからは、スニーカー本体のお手入れです。
まず、スニーカーのソール(靴底)についた泥や砂を歯ブラシで払い落としていきます。泥や埃などの汚れは湿るとこびりついてしまうため、乾いている状態で落としておきましょう。
溝に挟まった小石は、歯ブラシや爪楊枝で取り除きます。爪楊枝のように使っているうちに折れてしまうくらい弱い道具の方が、ソールを傷めずに汚れを落とすにはちょうどいいそうです。
■2-2:本体の汚れを乾いている状態で払い落とす――スニーカーの内側にはエアダスターを使う
ソールの汚れを歯ブラシで落としたら、エアダスターを使って細かい部分の汚れを吹き飛ばします。
靴の中には、靴下の綿ゴミや埃が溜まります。それらが汗を吸うと、ニオイの原因になります。綿ゴミや埃は濡れると内側にひっついてしまうので、乾燥している段階でしっかり取り払いましょう。汚れがたまりやすいつま先の部分は特に念入りに空気を送って埃を吹き飛ばします。
■3-1:ソール部分の汚れを落とす――固く絞ったタオルで水拭き
埃やゴミを落とし終わったら、ソール部分から本格的に汚れを落としていきます。
まずは、水で濡らして水滴が落ちないくらいまで固く絞ったタオルで丁寧に拭いていきます。このとき、初めはこすらずにゆっくりとソールを湿らせて汚れを浮かせ、少しずつ拭いていくのがポイント。レザー部分をこすってしまわないように気をつけましょう。
■3-2:ソール部分の汚れを落とす――メラミンスポンジで細かい汚れも白く綺麗に
水拭きで汚れを落としたら、メラミンスポンジを用意します。
コップ1杯の水に食器用中性洗剤をワンプッシュ程度溶いたごく薄い洗剤液にスポンジを浸して固く絞り、ソールの表面をこすっていきます。
メラミンスポンジはとても粒子が細かいため、タオルや一般のスポンジでは落とせない細かい溝の汚れも落とせます。また、細かい粒子が汚れのみでなく、劣化し黄ばんだソール表面を薄く削り落としてくれるため、メラミンスポンジで丁寧に擦り上げると見違えるような白さになります。
最後に水で固く絞ったタオルでひと拭きして洗剤を落としたら、ソールのお手入れは完了です。
ソールが綺麗に白くなるだけで、靴の印象は格段に変わりますよ。
■4-1:レザー部分のお手入れ――衣類用柔軟剤を解いた水で絞ったタオルを使う
ソールのお手入れが完了したら、本体レザー部分のお手入れに進みます。
衣類用柔軟剤を薄く溶いた水でタオルを固く絞り、靴の外側・内側ともに優しく拭きます。柔軟剤はバケツ1杯の水にひと垂らし程度で十分とのこと。柔軟剤を混ぜると水がやわらかくなるため、普通の水より素材を傷つけにくくなります。さらに、静電気を防いで汚れをつきにくくするコーティング効果もあるそうです。
スタッズ部分も柔軟剤を溶かした水で絞ったタオルで優しく拭きあげます。
表面の特殊なコーティングがされているレザー素材は強くこすったり洗ったりすると色が剥げてしまう恐れがあるので、水拭きはこれだけにとどめておきましょう。
靴紐を通す金具の部分は、汚れが残っていたら湿らせた綿棒でさらに拭います。
■4-2:レザー部分のお手入れ――靴の内側は皮革用加脂剤を使って皮革に栄養を与える
それほど色の変化の心配がない内側にはもうワンステップ。皮革用加脂剤を薄く溶いた水でタオルを固く絞り、こするように拭います。加脂剤の量は、先ほどと同じくバケツ1杯にひとたらし程度。
加脂剤を少量含ませたタオルで拭うことで、汚れをとりつつレザーに栄養を与えることができます。
■5:型を整えて乾燥する
レザー部分の汚れも落としたら、仕上げは乾燥。しっかり型を整えた状態で乾かすことがポイントです。
和紙を丸めてつま先・かかとに詰め、適切な長さにした割り箸やシューキーパーで固定します。
靴紐と同じように、室内の風通しがいいところで陰干します。日光に当たると紫外線により色落ちしてしまうので要注意です。
和紙が水を吸うため、半日に一度を目安に紙を交換しましょう。季節にもよりますが、約1日で乾きます。
以上でクリスチャン・ルブタンのスニーカーのお手入れは完了です。
繊細な部分は濡らさない!
ハイブランドのスニーカーのお手入れ「応用編」
続いて、ステラ・マッカートニーのコッパー エリス スターシューズのお手入れ方法をご紹介します。
基本的なお手入れの流れはクリスチャン・ルブタンと同じですが、このスニーカーならではのポイントが3つあります。「靴紐のつけ置き」「ソールのウッド素材の扱い」「つま先の掃除」です。それぞれ、お手入れの流れに沿って確認していきましょう。
■1:靴紐のお手入れ――つけ置きする洗剤液は薄い濃度で
コッパー エリス スターシューズの靴紐は淡いピンク色です。
この場合、白の靴紐とは異なり、濃い洗剤液でつけ置きすると色落ちの危険性があります。水に溶く食器用中性洗剤はコップ1杯の水にワンプッシュ程度まで薄くしましょう。
■2:本体の汚れを乾いている状態で払い落とす――つま先部分は特に入念にエアダスターで埃を払う
先ほどと同じく、最初に乾いている状態で落とせる汚れを払い落とします。
このとき特に念入りにケアしたいのが、つま先部分。先が深い型なため、つま先部分に綿ゴミや埃がたまりやすくなっています。エアダスターのノズルを靴の中に入れて空気を吹き付け、しっかり埃を吹き飛ばしましょう。
■3:ソール部分の汚れを落とす――ウッド素材の部分は手を加えない
ソール部分を水拭きでお手入れするときに気をつけなければならないのが、コッパー エリス スター シューズの特徴であるウッド素材のソールです。
ウッド素材はとてもデリケート。濡れてしまうと変形してしまう可能性があります。また、木目の上からついている淡いピンク色が、濡れたり擦れたりすると取れてしまう可能性も。タオルやメラミンスポンジを使ったお手入れはソールの白い部分のみにして、ウッド素材にはあたらないように気をつけましょう。
■4:レザー部分のお手入れ――手が入らないつま先部分は棒を使う
レザー部分の水拭きの手順はクリスチャン・ルブタンの場合と同じです。ただし、ウッド素材は水拭きNG。タオルが当たらないように注意しましょう。
皮革用加脂剤を含ませたタオルでスニーカーの内側を拭くときも、ポイントがあります。このスニーカーの型はつま先が深く、奥まで手が届きません。そこで、棒にタオルを巻きつけるなどして奥までタオルが届くようにし、綺麗に掃除しましょう。
ソールとレザー部分を一拭きするだけでも、エナメルの光沢が増し、スニーカー全体が明るく見違えります。
■5:型を整えて乾燥する
仕上げの乾燥は基本の手順と同じく、和紙と割り箸を使って型を整え、陰干しします。
以上でステラ・マッカートニーのスニーカーのお手入れは完了です。
ハイブランドスニーカーのお手入れに「時短」は禁物
最後に、お手入れの手順をまとめて確認しましょう。
【まとめ|ハイブランドスニーカーのお手入れ基本ステップ】
■1:靴紐のお手入れ
■2:本体の汚れを乾いている状態で払い落とす
■3:ソール部分の汚れを落とす
■4:レザー部分のお手入れ
■5:型を整えて乾燥する
ついつい「この手順はスキップしても大丈夫かも…」などと考えてしまいそうですが、永井さんは「時短は禁物」といいます。
「時短しようとすると、いいことがありません。例えば、ソールを拭き洗いするときに水拭きを飛ばして最初らメラミンスポンジでこすったりすると、落ちる汚れも落ちなくなってしまいます。できるだけその段階、その段階で落ちるものを落としきりましょう」(永井さん)
繊細な素材によるデザイン性が魅力のハイブランドスニーカーは、その素材を痛めないように丁寧に扱う必要があります。しっかりとクリーニングをしたい場合や、使われている素材が何かわからない場合は、素材の知識があるプロにお任せしましょう。自宅では、今回ご紹介したお手入れ方法以上に洗浄力の強いものを使ったりゴシゴシと擦って洗ったりしないように気をつけてください。
お気に入りの一足を長く愛用するためにも、適切なお手入れをぜひ試してみてくださいね。
問い合わせ先
- Water cleaning Licue 大岡山店
- 営業時間/10:00〜21:00
- 定休日/無
TEL:03-5726-8966 - 住所/東京都目黒区南2-8-9 クーネル目黒南1F
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- PHOTO :
- コウノユタカ
- WRITING :
- 澤田絵里
- EDIT :
- 廣瀬 翼(東京通信社)