俳優・安田 顕さんの最近の話題作といえば、NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の平賀源内、ドラマ『ダメマネ!-ダメなタレント、マネジメントします-』での無茶な指令を出す芸能プロの部長など、クセあり人物ばかり。そのクセを魅力に変えて、観るものを引き込む静と動のメリハリは、どうやって生まれるのか。これら安田さんの魅力がぎゅっと詰まった最新主演ドラマ『連続ドラマW 怪物』(WOWOW/7月6日〜)の話を軸に、ひもときます。

安田 顕さん
俳優
やすだ・けん/1973年生まれ、北海道室蘭市出身。演劇ユニット「TEAM NACS」。近年の出演作は、NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』、ドラマ『日本一の最低男※私の家族はニセモノだった』『ダメマネ!-ダメなタレント、マネジメントします-』など。最新主演作『連続ドラマW 怪物』(全10話)は、安田 顕・水上恒司のW主演でWOWOWにて7月6日より放送・配信。警察官・富樫浩之を演じる。

怒りに震え、悲しみに突き落とされたとき、人は笑うのか(安田さん)

俳優の安田顕さん
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――『連続ドラマW 怪物』の撮影が始まる前、「与し難く、やり甲斐に満ちた役柄」だと語っていらっしゃいました。振り返って、「難しさ」「やり甲斐」は、どんなところにあったのでしょうか。

「まず、韓国で放送されたオリジナルドラマ『怪物』(2021年)が、とにかく面白く大ヒットしたということ。韓国の権威ある『百想芸術大賞』で3部門を受賞し、主演のシン・ハギュンさんの演技も凄まじく、男性の最優秀演技賞を受賞しました。そんなレベルの高い作品に、私がキャスティングされたことに感謝すると同時に、これは(オリジナルと)比較されるだろうなと。責任は重たいけれど、だからこそやり甲斐があるし、挑み甲斐があると感じていました。

脚本を読んでみれば、“息もつかせぬ”展開で、特に前半から中盤にかけての構成力が素晴らしい。もう夢中で読み進めました。いざ撮影が始まってみれば、不思議なもので重圧も忘れ、ひたすら物語に没頭できたのは、よかったなと思います。

俳優の安田顕さん
「責任は重たいけれど、だからこそやり甲斐があるし、挑み甲斐があると感じていました」(安田さん)

心がけていたのは、ドラマで起きる事柄を時系列に並べ直し、シーンごとの富樫の心情を丁寧にひもとくこと。3か月という長い撮影期間、順調な日もそうでない日もあったけれど、緊張感が途切れることもなく、“演(や)れることは演った”というのが率直な思いです」

――そのような集中していた期間、実はNHK大河ドラマ『べらぼう』も同時に撮影が進行していたとか。

「切り替えることは特に難しいことではありませんでしたね。『怪物』はもちろんですが、平賀源内役を演じた『べらぼう』も、私にとって転機ともいえる作品になりました。

と同時に、どちらにも不思議な経験がありました。(平賀)源内さんは、まさにこれまで積み重ねてきたことのなかに芝居が生まれた瞬間があって。計算ではなく、『死にたくない』という感情が内から湧き出て、演技になって。『観ました』、『よかった』という声を聞くと、多くの方に届いたということを実感し、感謝の気持ちでいっぱいになるものです」

俳優は、感情を押し殺したりコントロールする『怪物』といえるのかもしれません(安田さん)

「平賀源内役を演じた『べらぼう』も、私にとって転機ともいえる作品になりました」(安田さん)

――そうした経験を経て、俳優の仕事の醍醐味はどんなところに感じていますか?

「今まさにお話ししたように、思いもよらない“何か”が起こるとき。そして、観る方に喜んでもらえたとき。SNSなどでみなさんの声はしっかり拝見します。すべてを受け止めていたら気になることもありますが、いろんな方がいらっしゃるなと思いながら、見るようにしています。

本当に賢い人は“神輿の上に乗らない”といいますが、いったん“神輿に担がれた”ら、どんな評価も受け入れるしかありません。それに、こうして人前に出続けているということは、“祭り上げられる”のが好きで、見られるのが好きだという証拠なのではとも思うんです。ある意味、『怪物』なのかもしれないですね」

「SNSなどでみなさんの声はしっかり拝見します」(安田さん)
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――WOWOW『連続ドラマW 怪物』では、残酷で狂気をはらんだ人、理解されない人のことを「怪物」と称しています。では、安田さんにとって「怪物」とは?

「なんでしょうね。わかりやすい狂気とは反対に、感情を押し殺したり、コントロールできるのも、ある意味『怪物』といえるかもしれません。でも、必要なときには怒りの熱量を持つことができて、喜びを爆発させることができる喜怒哀楽は大事です。そんな人、ちょっとつきあいにくいと思われるかもしれないけれど(笑)、だとしたら僕も『怪物』といえるのかな」

怪物はあいつなのか、それとも自分自身か――。そんな謎解きがラストまで続くWOWOW『連続ドラマW 怪物』。安田さんの押し殺した感情と、爆発する喜怒哀楽を、たっぷり堪能できる作品です。

WOWOW『連続ドラマW 怪物』放送・配信中!

羽多野町に住む女子大生の富樫琴音(糸瀬七葉)が、自宅の庭に指の第1関節だけ残して失踪するという事件が発生。その事件は未解決のまま25年が過ぎる。琴音の双子の兄である富樫浩之(安田顕)は警察官になり、羽多野署生活安全課に勤務している。そこにキャリア警察官の八代真人(水上恒司)が異動してくる。気の合わない2人だが、課長の森平(光石研)の命令でペアを組むことに。そしてパトロール中に通報を受け認知症の老人の捜索へ行くのだが…。怪物のような男たちが織りなす、背筋が凍る傑作心理スリラー。

WOWOWにて7月6日(日)午後10時から、放送・配信中!(第1話・第2話無料放送)

出演:安田 顕 水上恒司
剛力彩芽 藤森慎吾 真飛 聖 早乙女太一 久保史緒里(乃木坂46)
小手伸也 橋本じゅん 光石 研 高畑淳子 / 渡部篤郎 ほか
原作:「怪物」(制作・著作:SLL JOONGANG Co.,Ltd 脚本:キム・スジン作家)
製作著作:WOWOW

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