多彩なジャンルや業態の飲食店が無数に存在し、世界的に見てもエキサイティングな東京のフードシーン。そのなかでも、この連載ではニューオープンを中心に「今」行きたい、大切な「人」を連れていきたい、“大人のためのレストラン”にフォーカス。今回は、2018年3月29日にオープンした「サローネ トウキョウ」をご紹介します。

人気グループが東京の中心から踏み出す、新たな一歩

「サローネグループ」と聞くと、イタリア料理好き、ナチュラルワイン好きの読者にはピンとくる方が多いのではないでしょうか。東京、横浜、大阪に個性豊かなイタリアンレストランを展開し、山形県には自社ワイナリーを構える、感度の高い食通たちから熱い注目を集める存在です。創業20周年を迎えた「サローネグループ」が次へ向けて「東京の旗艦店」として今春オープンしたのが「サローネ トウキョウ」。しかも場所は話題の「東京ミッドタウン日比谷」! タイミング、業態、立地、いずれも最高といえるレストラン、ご紹介しないわけにいきません。

ゴールドをキーカラーに、曲線を使わずスクエアなフォルムで構成された店内。品格を漂わせつつ、窓外の緑と光が開放感や心地よさをもたらします。ライトアップが映える夜の眺めも格別。
ゴールドをキーカラーに、曲線を使わずスクエアなフォルムで構成された店内。品格を漂わせつつ、窓外の緑と光が開放感や心地よさをもたらします。ライトアップが映える夜の眺めも格別。

「東京の中心、日比谷という恵まれた立地に加え、グループ初となる大型商業施設への出店ということもあって、オープン以来これまでにないほど幅広い層と用途のお客様にいらしていただき、うれしい驚きを感じています。ここでご提供したいのは、料理はもちろん、どんなに内側は目まぐるしい状況だったとしても、それを一切感じさせないスマートなサービスを含めた『上質な時間』。エグゼクティブな立場の方からお問い合わせをいただくことも多く、大切なひとときを安心してお任せいただけるような場を目指しています」と語るのは、支配人を務める西嶋大明(ひろあき)さん。

使用する器はすべてドイツの「ローゼンタール」、銀製のカトラリーはイタリアの老舗「サンボネ」によるもの。エレガンスが薫るセッティングでありながら、グループ内で初めて100%間接照明を採用し、温かみがあり寛げる雰囲気に。
使用する器はすべてドイツの「ローゼンタール」、銀製のカトラリーはイタリアの老舗「サンボネ」によるもの。エレガンスが薫るセッティングでありながら、グループ内で初めて100%間接照明を採用し、温かみがあり寛げる雰囲気に。

グループのなかでも本店的な位置付けにあり、横浜屈指のイタリアンと賞される「サローネ2007」やカウンター席を小さな劇場に見立てた西麻布の「イル テアトリーノ ダ サローネ」が提供するのは、イタリアの郷土料理に最新の技法や表現を加えてクリエイティブに再構築した「クチーナ・クレアティーバ」。対して、ぐっとイタリア料理の原点に立ち返ろうとするのが「サローネ トウキョウ」。

「既存の『サローネ』では、新しさや驚きのある少量多皿のコースでさまざまな味覚を“掛け算”する楽しさを伝えてきました。その経験をいかしながら、ここでは皿数を控えてポーションを増やし、食材の魅力がストレートに伝わる料理をひと皿ひと皿じっくり味わっていただきます。目指すのはしっかり記憶に残る料理。ふたりのシェフはイタリア修業経験者です。現地を体感したからこそわかる、どっしりイタリアが芯にある料理を日比谷という東京の中心から発信していきたいです」(西嶋さん)。

ダブルシェフが挑む、“おいしさ”の先

「サローネ2007」と同様にダブルシェフ体制を取る「サローネ トウキョウ」。試作や試食の段階で必ず両者が関わり、それぞれの経験と技術、感性をいかして最終的にメニューを決定していくそうです。

左から「サローネ2007」のダブルシェフを経て就任した永島義国さん、「サローネ2007」「ビオディナミコ」のシェフを歴任したのち、現在グループの統括料理長を務める髙見博史さん。
左から「サローネ2007」のダブルシェフを経て就任した永島義国さん、「サローネ2007」「ビオディナミコ」のシェフを歴任したのち、現在グループの統括料理長を務める髙見博史さん。

今回タッグを組むのは、ロンバルディア州、ヴェネト州など北イタリアを中心に5年半ほど修業をされた永島義国さんと、エミリア・ロマーニャ州で修業する傍ら、各地で料理を学んだ髙見博史さん。

「郷土料理から前衛的な料理まで、さまざまなタイプの店を経験しました。星付きレストランなど一流のシェフに共通するのは、イタリア料理そのままではなく、自分の頭で考えたひとひねりを加えている点。オリジナリティーを出しながら、創作料理にならないよう、しっかりイタリアを感じる料理にする……難しいバランスですが、自分も目指したいのはそこ。また、旗艦店ですので『サローネ2007』での経験をさらに深く突き詰めた料理をつくりたいですね」(永島さん)

「修業していたのは、一ツ星レストラン併設のホテル。レストランではクリエイティブな料理、ホテルではトラディショナルな家庭の味と、ひとつのキッチンで異なるスタイルの料理をつくっていたので2軒分勉強したような感覚です(笑)。山間部だったので季節折々の食材に触れ、現地の地産地消を体感できたことも収穫ですね。とはいえ、『イタリアに行ってきた』だけでは通用しません。経験をどう解釈して、昇華させるかが重要。リストランテですのでトラットリアやご家庭にない味をお出ししたいと思っています。自分の経験を昇華させた料理が、結果としてほかでは味わえないものだと感じていただけたら本望です」(髙見さん)

取材時のディナーメニューから、メイン料理の「エトフェ小鳩のアロスト サルーミソースとほろ苦いサラダ添え」。ディナーは前菜、温前菜、1皿めのパスタ、魚料理、2皿めのパスタ、肉料理、ドルチェ、お茶菓子、食後の飲み物。昼・夜ともにメニューは約2か月ごとに変わる予定。

上の写真は高見さんの経験とインスピレーションが活きたメイン料理。「肉の『旨味』とソース、エンダイブの『苦味』を楽しんでいただく料理です。修業した店では肉とパテを一緒にお出ししていたのを、ソースを添える形にアレンジして食べやすく仕上げました。また、肉と付け合わせを別々に提供していたところも、ひと皿で表現してより洗練された形に。濃厚な肉とソースをエンダイブが程よく中和して、軽やかに食べきることができます」(髙見さん)。

付け合わせは鳩のさまざまな部分のコンフィ、エンダイブに胡桃オイルやビネガー、煮詰めた鳩のガラを絡めたもの。ガラも含め、鳩を丸ごと1羽味わえる一品です。

ランチ、ディナーともにドルチェとして登場する「白いティラミス」
ランチ、ディナーともにドルチェとして登場する「白いティラミス」。マスカルポーネのクリームとキャラメルアイスにマルサラ酒に漬けたレーズンや松の実、ポレンタのクッキーを入れ、仕上げにはエスプレッソのパウダーをぱらり。ワゴンとともに登場し、クリームを練るところからシェフがゲストの目の前で仕上げます。「このクリームは出来たてがおいしいんです」(永島シェフ)。こういったライブ感のあるプレゼンテーションも「サローネグループ」ならでは。

「白いティラミス」は、ティラミス発祥の地といわれるヴェネト州で修業した永島シェフのキャリアと発想の賜物。「山の中のレストランで働いていたこと、自分が新潟出身ということから雪をイメージしました。ヴェネトでレシピを得たマスカルポーネのクリームに、同じく北イタリアでよく食べるポレンタをクッキーにして忍ばせました。仕上げのパウダーは、クリスピーな食感を持たせながらエスプレッソの香りをまとわせるにはどうしたらいいだろうと試行錯誤してできあがったものです」。

ぱっと見は斬新なスイーツのようで、口に含めばティラミス。先の永島さんの言葉通り、地方の名物や食材をいかしつつ自身のひらめきと工夫によって仕上がったドルチェというわけです。

さて、ダブルシェフと聞くと意見が衝突することもあるのでは? と勘ぐってしまいますが、お話を聞けば杞憂も杞憂。

「それぞれの料理をお互いが試食して意見し合う形なので、ダメ出しはありますがぶつかることはないです(笑)。ひとりで悶々考えていてもしょうがないことも、すぐに意見を聞くことができるので頼りになります」(永島さん)。

「同じような業態に携わる料理人には皆“おいしいの上をいこう”という感覚があるのではないかと思います。これまでにない新しい表現を探るとき、自分と異なる経験と視点から意見がもらえることにわくわくしています」(髙見さん)。

ゲストに合わせた柔軟なワイン提案

「サローネグループ」が注目を浴びるきっかけのひとつとなったのが、現在ゼネラルマネージャーを務める一方で、山形県で葡萄栽培とワイン醸造も行っている藤巻一臣さんによるサービス。ナチュラルワインやワインペアリングが今ほどポピュラーになる前、2000年代半ばからイタリア産を中心としたナチュラルワインをそろえ、料理やゲストに合わせたワインをバイ・ザ・グラスで提供するスタイルが評判となりました。

創業20年を迎え、グループ最高峰の業態として「サローネ トウキョウ」が目指すのは、バランスのよいワインの品ぞろえとゲストに合わせた柔軟な提案。「イタリア各地のワインに加え、立地に合わせて王道と言われる銘柄や産地のワイン、さらには自分がその時々に気になっているワイン、藤巻と関わりのある世界の造り手のワインなどをそろえています。ペアリングのほか、『料理に合わせたい』、『好みのワインで通したい』、『少し挑戦してみたい』といったお客様の嗜好に合わせたご提案を心がけています。また、ぜひご紹介したいのが、抜栓してから刻々と変化していくナチュラルワインの魅力。ボトル1本をじっくり味わう楽しみも積極的にご提案していきたいです」(西嶋さん)。

200年以上続く由緒あるドメーヌのシャンパーニュから、アンフォラ(素焼きの壺)で発酵・熟成する希少なオレンジワインまで、「王道」も「攻め」も備えたラインナップ。
200年以上続く由緒あるドメーヌのシャンパーニュから、アンフォラ(素焼きの壺)で発酵・熟成する希少なオレンジワインまで、「王道」も「攻め」も備えたラインナップ。グラスワイン約¥1,600〜は赤、白を常時15種類ほど用意するほか、随時リクエストにも応じるとのこと。ボトルは¥7,000台から。ワインペアリングはランチ4皿が¥6,000、5皿が¥8,000、ディナーが¥12,000。もちろん、量も調整可能です。

少量多皿のコース、クリエイティブなイタリア料理、ナチュラルワイン、ワインペアリング……数々の革新的な試みを形にしてきた「サローネグループ」が、「いま」「東京の中心で」「イタリア料理の原点に立ち返って」スタートしたリストランテ。一見オーセンティックで洗練された空間の芯にあるのは、意見を交わし合うふたりのシェフ、多様な客層にきめ細かく対応するサービス陣の情熱。それはまるで、喧騒に満ちた東京の中心で静かに美しく揺らめく炎のよう。かくもエレガントでエキサイティングなサローネ。食いしん坊の紳士淑女の皆さま、ぜひご体感を。

問い合わせ先

  • サローネ トウキョウ
  • 営業時間/12:00〜13:00(LO)、18:00〜20:00(LO)
    定休日/日曜、第1・3月曜
    ランチ¥6,000、¥7,500、ディナー¥15,000のコースのみ。
    全42席。個室(6名まで対応。個室料¥10,000)、テラスあり。
  • TEL:03-6257-3017
  • 住所/東京都千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷 3F 316

この記事の執筆者
早稲田大学卒業後、アシェット(現ハースト)婦人画報社に入社。『エル・ジャポン』、『エル・ガール』、「エル・オンライン」編集部を経て独立。現在はフリーランスのエディター、ライターとして紙/Webの両媒体を中心に、主にファッション、フード、ライフスタイルのジャンルで活動。セレクトショップ「ドローイングナンバーズ」ではワイン&フードのセレクトも担当。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート。
PHOTO :
竹之内祐幸
EDIT&WRITING :
門前直子