円滑な人付き合いは、豊かな人生を送るために不可欠なもの。営業職をはじめ、人付き合いの良し悪しが業績に直結する、という人も多いでしょう。「人付き合いがもっと上手にできれば……」という悩みは、働く私たちにとって大問題です。

さらに、人付き合いのしかたをもう少し工夫することで、周囲の人から頼りにされ、自分の価値を高めることもできます。実は、そんな人付き合いを実践しているのが、数十億円から数百億円の資産を有し、大富豪と呼ばれる人たちです。

現役執事が語る、大富豪が行なっている人付き合いの習慣とは?

自ら執事として大富豪に仕える傍ら、企業向けの富裕層ビジネスや講演、研修などを行う日本バトラー&コンシェルジュ株式会社社長・新井直之さんは、「周囲の方から好かれ、信頼されるので、結果的にお金が集まり、仕事でもうまくいく。それが積み重なって大富豪になられた、という方が多くいらっしゃいます」と明かします。

今回、そんな新井さんから多くの大富豪が行う自分の価値を高めてくれる人付き合いの習慣を5つ、教えていただきました。そこには、取り入れることで人付き合いが楽しくなる――そんなエッセンスが詰まっていました。

■1:知り合ったばかりでも「ファーストネーム」で名前を呼ぶ

私たちの感覚からすれば、ファーストネーム(下の名前)で呼び合うのは、仲のよい友人などごく親しい間柄の場合のみですが、大富豪の場合はちょっと違います。パーティー会場などでついさっき知り合ったばかりの相手にも、ファーストネームで呼びかけるというのです。

想像してみてください。自分よりも立場が上で尊敬を集める人物から、気さくにファーストネームで呼びかけられたら……。自分も特別な存在になったように感じるのではないでしょうか。大富豪との距離がぐっと縮まり、信頼に似た気持ちが芽生えるでしょう。大富豪は、名前の呼び方ひとつで相手の心をつかんでしまうのです。

新井さんによると、ビジネスパートナーはもちろん自社の社員に対しても、ファーストネームで呼びかける富豪が少なくないのだそう。ある社長さんは、社員をファーストネームで呼ぶ理由を「経営者ともなれば、相手が役員だろうが、新入社員だろうが、同じようにいつでもちゃんと見ているんだよ」と語ったのだとか。

“いつでもちゃんと見ている”――このメッセージは、職場の上司・部下の間柄にも応用できそうです。

■2:高額なプレゼントよりも「思い入れある品や手料理」でもてなす

高級料理よりも心のこもった手料理の方が相手に思いが伝わります

お世話になっている相手や、感謝を伝えたい相手に贈り物や接待をする場面は、仕事でもプライベートでも少なくありませんよね? お金持ちの場合、「高額なプレゼントをポンと渡してしまうのでは?」などと思わず想像してしまいますが、新井さんは「気持ちの大きさを金額で表すことは、お金さえあれば誰でもできてしまいます。それよりも、大富豪の方は“その方でなければできないことをする、それが相手を一番喜ばせる”ということをよくご存じです」といいます。

たとえば、自分自身が使っていたものをそのままプレゼントする、というスタイル。自宅に招いた後輩に新品同様のスーツをポンと手渡したり、約束の時間に遅れた部下に「これをやるから、次からは遅れるなよ」と自分が着けていた高級腕時計をプレゼントしたり……。買ったばかりの家具を指して「この家具、うちには合わないんだ。君、新婚だろう? 家具も入り用だろうから、引き取ってくれないか」、といった具合です。

「いいものを贈ればもちろん喜ばれますが、あまりにいいもの過ぎると、お相手に引け目を感じさせてしまうこともあります。ですので、相手の方が受け取りやすくするために、ご自身の身の回りの物を使われることは多いです」と新井さんはいいます。

おもてなしの場面でも、大富豪は“自分でなければできないこと”をサラッと実践します。たとえばある経営者は、部下たちが仕事の用事で訪ねてきたときに「君たち、メシでも食っていくか」と、自らキッチンに立って野菜炒めとご飯、お味噌汁の手料理をご馳走したのだそう。部下たちも、尊敬する社長からの、まるで家族や親戚に対するような心のこもった素朴なもてなしに、かえって感激したといいます。

「受け取る側の気持ちを考え、手づくりの品やご自身のゆかりの品に思いを込めて差し上げたり、手料理をふるまわれたり。そういうお心遣いをされる大富豪は多いです」(新井さん)

手土産や贈答の場面でも、自分自身に縁のある品物やお気に入りのお菓子をちょっとしたエピソードとともに手渡すと、相手にひと味違った印象を与え、距離がぐっと縮まります。ぜひ取り入れたい人付き合い習慣です。

■3:カバンの中にちょっとした「信頼構築グッズ」を忍ばせる

バッグの中にアメやミントタブレットを……。ちょっとした心遣いで印象はグッと変わります

大富豪が贈り物に心を砕くのは、「相手を喜ばせたい」という気持ちからです。そのことを端的に表しているのが、日々持ち歩くカバンにちょっとした“信頼構築グッズ”を忍ばせる、という習慣です。アメやリフレッシュミント、自社のノベルティグッズといったミニギフトや、とっさのときに使える絆創膏や爪切り、靴磨きグッズなど。

「こういったものをお持ちの方は多いですね。普段から周囲の方に感謝し、お役に立ちたい、楽しませてあげたい、そういうお気持ちなんですね」と新井さん。新井さん自身も、こうしたアイテムを持ち歩くことを習慣にされているそう。

「相手の方が咳き込まれたら『アメでも……』と取り出したり、長時間の会議の後にリフレッシュミントを箱ごとお渡ししたり。最近では、モバイルバッテリーを入れておいて『充電がなくなりそう』という方に『どうぞ』と使っていただいたり……。相手が何に困っているかを想像する、その発想はビジネスに通じますし、仕事や人間関係で成功する人をつくります。このこと自体は小さな話ですが、ビジネスもそういうことの積み重ねですし、そういう発想を常にお持ちの方が、成功を手にしていくのではないでしょうか」(新井さん)

カバンの中に、より深い人間関係をもたらす“ちょっとした気遣い”を持ち歩く。素敵な習慣ですね。

■4:友達づくりにも「長期的な視点」を忘れない

新井さんによると、大富豪と呼ばれる人々が普段お付き合いしている相手は本当に限られていて、だいたい20人ほどなのだそう。幅広い人脈を持っていそうな大富豪だけに、意外な数字です。そもそも、大富豪は「人脈」「ビジネスパートナー」といった言葉より「友達」「ファミリー」という表現を好むのだそう。

一般的に人脈づくりというと、“この人と親しくなれば仕事が増える”“ほかの人に自慢できる”といった、損得勘定がどうしても働きがちです。対して大富豪は、すでに社会的地位を築いた人よりも、これから伸びていく若手を大切にするといいます。その根底にあるのは、数十年先を見据えた長期的な視点です。

「株式投資において、みんなが認知している優良企業や大企業ではなく、誰も知らない株を見つけて投資するのと似ています。まだ誰にもその存在を知られてない若い人を発掘する方が、将来的に大きな人脈に育っていきます。その方が20代なら、その後30年以上その人脈は生きるのですから。大富豪は、相手の方が花開くのが10年後、20年後でいいとお考えなのです」(新井さん)

一方、若い頃から大富豪に引き立てられることで、目を掛けられた相手には「この人のためなら」という忠誠心が芽生えます。

「結果として、いざというときに無理を聞いてくれる“友達”や“ファミリー”が20人いる。この方がプライベートもビジネスもうまくいくことを、大富豪の方はよくご存じです」(新井さん)

長期的な視点で結ぶ人間関係には、信頼が不可欠です。本当に信頼のおける友達を持つことが将来の自分を助けるという発想は、私たちの人付き合いにとっても忘れてはいけない考え方ですね。

■5:自分よりワンランク上の人に「会う勇気」を持つ

地位を向上させたいと思うなら、自分よりもランクが上の人に引き上げてもらうことが重要です

会社で社長から飲みに誘われたら、あなたならどう感じますか? 気おくれして、できれば断りたいと考えるでしょうか。新井さんによると、多くの大富豪は「若い頃から、自分よりもワンランク上の方と積極に会うことを意識していた」と話すのだそうです。

「普段の仲間同士の飲み会、あるいは異業種交流会や起業家交流会などの場で、自分と同じポジションの方とお会いになるのは、多くの方が実践されていることだろうと思います。ですが、自分が1ランク、2ランクと地位を向上させたい、より大きなビジネスに取り組んでいきたいと思ったら、自分よりもランクの上の方に引き上げてもらうことが重要です。たとえば、自分より2ランク上の経営者が集まるパーティーに分不相応ながら行く、会社員であれば役員が行くゴルフの集まりに世話役で行かせてもらう、そうした勇気が必要なのだと思います」(新井さん)

2008年に株式会社を立ち上げ、“大富豪”と呼ばれる人々に執事サービスを提供してきた新井さん自身も、大富豪のそうした姿勢に影響を受けたといいます。

「どんな方でも、自分ひとりで大富豪になることはできません。ビジネスを大きくしよう、ステップアップしようとするときには、誰かに引き上げてもらわなくてはいけないのです。多くの方から尊敬される大富豪の方々は、そのことをよくご存じです」(新井さん)

人付き合いのしかたによって、自分自身を高めていくことは可能です。成功者である大富豪の言葉が、それを証明しています。大富豪の考え方を心に留めて周囲と接することで、自分自身の価値も高める人付き合いの習慣がきっと身につくはずです。

新井直之さん
日本バトラー&コンシェルジュ株式会社代表取締役社長
(あらい なおゆき)フォーブス誌世界大富豪ランキングトップ10に入る大富豪や日本国内外の超富裕層を顧客に持つ同社の代表を務める傍ら、企業向けに富裕層ビジネス、顧客満足度向上、ホスピタリティに関する講演、研修、コンサルティング業務を行う。『執事だけが知っている世界の大富豪58の習慣』(幻冬舎)など著書多数。著書は海外でも翻訳出版され、累計発行部数は30万部を超える。近著『大富豪がお金を生み出す時間術』(青春出版社)では、大富豪のお金を生み出す習慣を「見極める技術」「好印象を生み出す技術」「投資の技術」「遊びの技術」など七つに分けて紹介。実践できる“時間錬金術”を明かしている。
日本バトラー&コンシェルジュ株式会社
この記事の執筆者
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WRITING :
よりみちこ
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