連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、地域の生産者と購入者をつなぐプラットフォーム「やさいバス」を立ち上げた加藤百合子さんにインタビュー!

東大農学部にて農業システムの研究に携わり、米国でNASAのプロジェクトに参画した研究者の顔ももつ加藤さん。結婚を機に移住した静岡で創業した、ITの力で地産地消を実践する「やさいバス」は、今や13都道府県で活用されています。「やさいバス」にかける次なる目標とは? 詳しくお話しをうかがいました。

加藤百合子さん
「エムスクエア・ラボ」代表取締役
(かとう ゆりこ)東京大学農学部卒業。英国で修士号を取得後、’00年米国でNASAのプロジェクトに参画。’12年青果流通を変える「ベジプロバイダー事業」で注目を集める。’17年、地域の生産者と購入者をつなぐプラットフォーム「やさいバス」を立ち上げる。’25年6月、食を通じて地域とつながる「やさいバス食堂 1号店」も静岡県の掛川駅前にオープン。

【Shizuoka】ITの力で地産地消を実践「やさいバス」が、地域の食を豊かに

「エムスクエア・ラボ」代表取締役の加藤百合子さん
「エムスクエア・ラボ」代表取締役の加藤百合子さん

オンラインで注文が入ると農家は商品を近くのバス停まで持って行く。野菜をのせたバスは巡回し、買い手は近くのバス停まで取りに行く。この共同配送によって、高騰する物流コストを圧倒的に抑え、農業流通に革命を起こしたといわれるのが「やさいバス」だ。

創業者の加藤さんは、東大農学部にて農業システムの研究に携わり、米国でNASAのプロジェクトに参画した研究者の顔ももつ。「昔から数学が好きで、問題に気がつくと解かずにはいられない性分なんです」と笑う。

結婚を機に静岡に移住し、農業の現場に足を踏み入れ感じたのは、「つくり手も買い手も大変そうに見える」ということ。互いに価格にも満足しやりがいも感じるためには、信頼関係を分断しないことが大切だと加藤さん。生産者と購入者が直接つながれば評価も返ってきやすく、その範囲での取り引きを行えば物流費も削減できる。こうして地域を循環する「やさいバス」は’17年に誕生した。

「『注文はファックスがいい』という方も多く、300近い登録農家がアプリを使いこなすまでに3年かかりました。やっと運用に乗ったと思ったらコロナ禍に突入。外食業からの注文は激減したため、スーパーなど小売業へ猛アプローチしました。規模を拡大しては縮小し見直す、その連続でしたね(笑)」

静岡で始まった1本のバスは、今や13都道府県で活用され、それぞれのエリアで地産地消を実践している。

「やさいバス」が順調に伸びてきた現在、次はインドでの農業課題を解決するため、現地と日本を往復する毎日だ。大手自動車メーカーと開発した農業ロボットや日本の農業技術をインドに広める活動を行っている。

「ITを駆使して、世界中どこでも食糧が十分に生産できたら国同士の争いは減るのではないでしょうか。食糧生産は、武器よりも強いチカラになると信じて、今後も問題に向き合っていきたいです」

◇加藤さんに質問

Q.朝起きていちばんにやることは?
まず水を1杯。そのあと犬と散歩に行くこと。
Q.人から言われてうれしいほめ言葉は?
「加藤さんに感化されて○○を始めたよ」という言葉。仲間が増えたようでとてもうれしい。
Q.急にお休みがとれたらどう過ごす?
愛犬と海に行って、たまっている読みたかった本を読む。
Q.仕事以外で新しく始めたいことは?
音楽が大好きなので、歌を習ってうまく歌えるようになりたい。
Q.10年後の自分は何をやっている?
今行っている会社のことは全部任せて、私はときどきサポート。あとは、絵を描いて過ごせていたら…理想ですね。
Q.自分を動物に例えると?
ミツバチ。ちょこちょこ動き続けて、コミュニティに貢献したい小さな生き物、という感じに親近感を覚えます(笑)。

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PHOTO :
望月みちか
取材・文 :
大庭典子