美しきプリンセス、レティシア王妃のシンデレラストーリー

英国のキャサリン妃を始め、ヨルダンのラーニア王妃、モナコのシャルレーヌ妃、ギリシャのタチアナ妃など、美貌と魅力的な佇いで、常にメディアの関心を誘うプリンセスたち。彼女たちのような平民出身のプリンセスは今や珍しくはなく、「シンデレラストーリー」は、いつの時代にも共感と憧れを持って迎えられる普遍的なロマンスである。

パリでのセレモニーに出席するレティシア王妃

労働者階級から富裕層まで出身はさまざまだが、結婚するまでは素晴らしくスペックの高い仕事に就いて能力を発揮していたキャリアウーマンが大半である。恋愛も仕事も、目指すものを手に入れるために全力を尽くす。

今回取り上げるスペインのレティシア王妃は立ちふさがる数々の障害を乗り越えて愛する人と結ばれた。5メートルのトレーンを引くドレスを纏い、ため息の出るような中世風のウエディングにいたるまで、どれほど目に見えない努力と忍耐を持ってしたか。現代版シンデレラストーリーをあらゆる意味で象徴する存在といえよう。

以前に比べ、ハードルが低くなった時代とはいえ、民間から王室への輿入れが困難であるには違いない。とりわけ、レティシアが離婚経験者であることがカトリックのスペイン王室では大きな障害になった。

スペイン・レティシア王妃

レティシア王妃の生い立ちは?結婚までのキャリアとフェリペ公との出会い

レティシア・オルティス・ロカソラーノ。1972年9月生まれ。今年46歳になる。早くからジャーナリズムの道を目指し、大学ではジャーナリズムの学士号を取得。卒業後はオーディオ・ビジュアル・ジャーナリスト学院で修士号を履修する。その後メキシコに渡り、卒業はしていないがドクターコースを受講している。

スペインに帰国後、まずニュースチャンネルのCNNやブルームズバーグテレビジョンで働き、2000年からスペインの国営放送TVE (テレビション・エスパニョーラ)に転身、ニュースショーの花形であるアンカーに抜擢された実力派である。現場取材も多く、アメリカ同時多発テロやイラク戦争などを取材。その功績で、30歳以下の優れたジャーナリストに贈られる、LARRA(ラーラ)賞を2001年に受賞。実力で若手ジャーナリストの頂点に登りつめ、努力の上に自らの地位を築いた女性である。

夫であるアストゥリアス公フェリペ(当時)は2メートルに近い長身で、ヨット選手としてオリンピックにも出場経験のあるスポーツマン。ハンサムな適齢期のプリンスの常として、貴族令嬢をはじめ、グウィネス・パルトローなど、ハリウッド女優との噂が華やかに囁かれていた。

知人宅の夕食会で初めて出会い、意気投合したものの、フェリペ公が特別な感情を抱くことはなかったという。だが、恋は突然にやってくる。2か月後、レティシアが原油の流失事故の現場でレポーターをしていたとき、偶然にフェリペ皇太子が現地を視察し、予期せぬ再会。環境問題に関心を持つふたりの会話は弾み、それがきっかけで交際が深まっていくには時間がかからなかった。

翌年の秋、フェリペ皇太子は国王とソフィア王妃にレティシアを紹介。だが、困難はそこからであった。ハプスブルグからブルボン家と名門によって継承されてきたスペイン王室は、系譜を継ぐ国王と皇太子の母親であるソフィア王妃もギリシャ王室から嫁いできた生粋の王家の血筋。しかも皇太子は将来の国王の身だ。王室純血主義の後継者たる皇太子と民間出身、しかも離婚経験者との恋はすべての規律に反し、「あってはならないもの」で周囲を困惑に陥れた。

ソフィア王妃の伝記の著者によると、そのとき皇太子は「彼女と結婚できないのであれば王冠を捨ててもいい」と最後通牒を突きつけたという。それほどの覚悟で望んだ結婚である。皇太子も、恋人と別れざるを得なかったなどの苦い経験もあり、宗教と王族ゆえの強い縛りに精一杯の反抗を見せたのではないだろうか? 国王夫妻の理解もあって、挙式前には国民の90%が好意を示したというドラマティックな展開であった。

挙式の直前にマドリードで列車爆破事件が起き、急遽パーティーを中止、その費用をテロ被害者のために当て、国民の共感を呼んだ。また政変の多かった20世紀のスペインでは、スペイン女性が王妃になるのは、19世紀のマリア妃以来の出来事で、それも国民を熱狂させた。

そして2014年6月フェリペ6世の戴冠式。ふたりのプリンセスにも恵まれ、レティシアはスペインブルボン家が初めて受け入れた、民間出身で離婚歴のある王妃となった。

「モノトーン」「フェミニン」がキーワード!上品なファッションが人気に

王妃となってからは彼女のファッションがさらに注目の的だ。内面の強さを押し出すように「赤」や「白黒」というコントラストのある装いに、平均10センチはあるピンヒールを合わせるのがレティシア流。いわゆるロイヤルファッションとは一線を画すシャープで個性的な印象だ。

ラーニア王妃スペイン訪問時、赤いドレスを着るレティシア王妃
赤のブラウス、タイトスカートのコーディネート
レティシア王妃のモノトーンコーディネート
「Luis Carandell ジャーナリズム アワード」の式典に向かうレティシア王妃

スペインの国民的ブランドである「ZARA」や「MANGO」もよく着ていて、同じ服があっという間に売り切れてしまうほど、イメージモデルとしては、最高の存在だ。

公務にニュートラルカラーを選ぶときも、キーワードは「無難」ではなく「フェミニン」。ベージュでもピンク系でレースの縁取りがされていたりと高感度と優しさをアピールする服が選ばれる。知性の勝った美貌には万人受けのする優しい女らしさが何よりと理解しているのだろう。

セルバンテス賞 授賞式のレティシア王妃
スペイン国王とレティシア王妃

スタイルもモデルのようにほっそりと美しく、どんな場所に出ても大輪の花のように目を惹く。あまりにも完璧すぎておとぎ話のように思えてしまうレティシアだが、ニュースキャスターとして360度の視線を浴びていた彼女にとって、「美しき王妃」というロイヤルスターこそ最適のキャリアではないだろうか。培った経験を国民や外交に生かす豊かな知性も備えている。まさに天職に巡り合ったプリンセスと言えよう。

この記事の執筆者
1987年、国際羊毛事務局婦人服ディレクターとしてジャパンウールコレクションをプロデュース。退任後パリ、ミラノ、ロンドン、マドリードなど世界のコレクションを取材開始。朝日、毎日、日経など新聞でコレクション情報を掲載。女性誌にもソーシャライツやブランドストーリーなどを連載。2000年より情報用語辞典『イミダス』でファッション分野を執筆。毎シーズン2回開催するコレクショントレンドセミナーは、日本最大の来場者数を誇る。好きなもの:ワンピースドレス、タイトスカート、映画『男と女』のアナーク・エーメ、映画『ワイルドバンチ』のウォーレン・オーツ、村上春樹、須賀敦子、山田詠美、トム・フォード、沢木耕太郎の映画評論、アーネスト・ヘミングウエイの『エデンの園』、フランソワーズ ・サガン、キース・リチャーズ、ミウッチャ・プラダ、シャンパン、ワインは“ジンファンデル”、福島屋、自転車、海沿いの家、犬、パリ、ロンドンのウェイトローズ(スーパー)
PHOTO :
アフロ
EDIT :
渋谷香菜子