格式あるフレンチレストランで食事する機会も多々あるもの。そんなときに恥をかかないマナーの知識、身についていますか?

「そもそも、マナーとは相手に対して敬意を表するものであり、自分も気持ちよく過ごせるもの、その双方をかなえるためのものだと思うんです」と話すのは、ホテル インターコンチネンタル東京ベイの研修担当支配人で、ホテルレストラン協会テーブルマナーマスター講師でもある浅井真紀子さん。

今回は浅井さんに、格式あるレストラン利用の初心者が陥りがちなNGマナーを伺いました。中には、何気ない行動がお店の方へのクレームになってしまっているケースも……。以下の8つはしないように気をつけてください!

知らないと恥をかく!フレンチレストランでの「NGマナー」8選

■1:必要以上に早くお店に到着する

レストラン側にもタイミングがあります
レストラン側にもタイミングがあります

初めてのお店だった場合、ついつい早めに着いてしまいがち。ですが、そのお店にウェイティングルームがあるとは限りません。

浅井さんは、「あまりにも早く到着された場合、客をお待たせしてしまうことになって店側も気を遣ってしまいます。テーブルの準備やお料理の準備などレストラン側のタイミングもありますので、予約の時間ちょうどにご来店いただくのが一番いいですね。誤差は前後5分くらいかなぁと思います」と言います。

ビジネス利用などでホスト側になる場合は、5分前程度。逆に招かれるゲスト側だった場合は、オンタイムでの到着が理想です。

■2:料理を注文する前に中座する

意外に多いのが、一度席に着いてから注文する前に化粧室などに行くため席を立つケース。

「お食事を頼む前に席を立たれるというのは、やはりマナーとしてはNGですね。例えばホテルであればロビーがありますから、お化粧室のご利用も含めてロビーなどで少し時間を過ごして、余裕をもってその空間に馴染んでからレストランに入ってこられるのがいいかなと思いますね」(浅井さん)

離席するなら注文してからにしましょう!

■3:お互いの料理の皿を交換する

料理をシェアしたい場合はぜひスタッフに声掛けを!
料理をシェアしたい場合はぜひスタッフに声掛けを!

続いてのNGは、お皿の交換。「正式なフレンチレストランのマナーとしては、お皿の交換はしないということになっています」と浅井さん。確かに、お皿を落としてしまうと危ない上、見た目にもスマートな行為ではありません。

「ただ、これは絶対にNGということではありません。お料理を気に入っていただいて、それぐらいおいしいと思っていただいている証拠でもありますので、交換されたい場合はお連れの方にもこのおいしさをおすそわけしたい等、サービススタッフにひと言お声がけいただくのもよいと思います。それがスタッフとの会話のきっかけにもなりますし。スタッフとしてもお料理を気に入ってもらえることはとてもうれしいことなんです」(浅井さん)

そのひと言をきっかけにお料理の素材や料理法などに会話が広がれば、お食事の時間もより楽しくなりますよね。

■4:自分のハンカチで口を拭く

知らなければ、マナー違反とは思いもしないのがこの行為。実は、食事中に手持ちのハンカチを使うのは「お店で用意されているナプキンやお手拭きが汚くて使えない」というメッセージになってしまうのだそう。

「女性の場合、小さいハンドバッグなどをお持ちの方も多くて、ご自身のハンカチを使われることもあるかと思うんですが、レストランの決まりとしてはマナー違反なんです。レストランではぜひ、用意されたナプキンをお使いください」(浅井さん)

食事中、口を拭うために自前のハンカチは使わないようにしましょう。

■5:飲みものを注いでもらうときにグラスに手を添える

グラスはテーブルに置いたまま!
グラスはテーブルに置いたまま!

格式あるレストランでは、サービススタッフがドリンクを注いでくれますが、このときワイングラスなど脚のついているグラスを持ったり、手を添えるのはNGマナー。

「ビールを注いだり、日本酒のお酌をする感覚でついグラスを持ってしまう方も多いんですが、フランス料理に限らず西洋料理の場合はテーブルに置いたままにしておいてください」(浅井さん)

ソフトドリンクやお水を入れるゴブレットの場合も同じです。注いでもらうときに手を添えないようにしましょう。

■6:声を出してスタッフを呼ぶ

カトラリーを落としてしまった、パンやドリンクのおかわりが欲しい……など、サービススタッフを呼ぶときについ「すみません!」と声を張り上げてしまった経験がある方も多いのでは?

ですが、きちんとしたフレンチレストランではスタッフがすべてのテーブルの状況を常にチェックしていて、声をかけなくても察してくれる場合がほとんどです。声を出して呼ぶと場の雰囲気を乱すことにもつながるので、気づいてほしいときには目で合図を送りましょう。

とはいえ、浅井さんは「レストランの状況によるところもありますね。ずっと待っていても気づいてもらえないというケースでは、声を出して呼ぶことは著しいマナー違反ではありません。あくまでも、お店の雰囲気を壊さないようにということです。ただし、指を鳴らして呼ぶのはマナー違反です」とも話します。

まずは店員を見つけて、それからアイコンタクトで対応してもらうようにしましょう。

■7:食後にナプキンをきれいに畳んでおく

あまりにも元通りにするのはNG!
あまりにも元通りにするのはNG!

これも西洋料理ならではのテーブルマナーのひとつ。知らないと思わずやってしまいそうですが……。

「あまりにもキレイに元どおりに畳むと『おいしくなかった』という表現になってしまいます。テーブルマナー講習でも『キレイに畳むとマナー違反なんですか?』とよく聞かれます。ただ、マナーだからといってしわくちゃのままにした方がいいかというと、それもあまり印象がよくないですよね。使ったことが分かる程度に軽く四つ折りで置いておくのがよいでしょう」(浅井さん)

使用感がわかる程度に整えて、置いておくのがよさそうですね。

■8:割り勘会計をお願いする

会計でモタモタしてしまうこと、意外と多いですよね。このとき、マナーに反する行動はあるんでしょうか?

この質問に対して、「お会計は全員分をまとめていただくのが正しいマナーです。崩してくださいとか、一人ひとり別々でとおっしゃる方もいらっしゃいますが、正式なレストランではそれはマナー違反です。第一、スマートじゃないですよね」と浅井さん。

ちなみに、現金会計とクレジット会計は、どちらでもマナーに反することはないのだそう。ただテーブル会計の場合などには、相席者に気を遣わせないという意味でクレジット会計を選ぶのがスマートではあるようです。

最後に、浅井さんは「特にテーブルマナーの場合、3つの側面があります」と言います。それは、自分が自信を持って食事することができる“自分のため”という側面、一緒に食事する方が嫌な気持ちにならない“相手のため”という側面。そして、サービスマンとのコミュニケーションという側面です。必要以上に気を遣う必要はないですが、やはりサービスマンも人間ですから、人と人との気持ちのよいコミュニケーションを取る、というのが大前提ではないでしょうか。

マナーはコミュニケーション。うっかりやってしまいがちなNGマナー知識を身につけて、おいしいお料理と行き届いたサービス、ラグジュアリーな空間を十分に楽しみましょう!

浅井真紀子さん
人材育成トレーナー
(あさい まきこ)日本航空株式会社 客室乗務員、各研修会社における講師を歴任。自らの研修プログラムを確立すべく、株式会社スパークスの設立に参画。現在、ホテルインターコンチネンタル東京ベイ研修担当支配人兼 ホスピタリティ・アカデミー主催。一般社団法人 日本ホテル・レストランサービス技能協会テーブルマナーマスター講師、一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会認定シニアアンガーマネジメントファシリテーター等も務める。著書『仕事がデキると言われている人が必ずおさえている謝罪・クレーム対応の鉄則』小川 貴之・浅井 真紀子共著(クロスメディア・パブリッシング)他。
一般社団法人トラストコーチングスクール
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
よりみちこ