美術館は、気軽に出かけられる上に、感性が刺激され、知性や教養も身につけられる恰好の場といえそうです。

そんな中でも美術館のマナーは、ぜひしっかりと守りたいもの。もちろん、一般的なマナーは心得ているでしょうが、意外と知らないマナーや、あえて聞きにくいこともあるものです。

そこで今回は、美術館におけるお作法や楽しみ方を、岐阜県美術館で監視員として働き、Twitterで話題になった猫の監視員が主役の漫画『ミュージアムの女』の作者である、宇佐江みつこさんに教わります。

美術館での「超基本的な」NG行動3つ

まずは美術館の基本マナーをおさらい!

まずは美術館の基本マナーから、おさらいしておきましょう。

■1:展示物には触らない

展示物には触らないのが基本

展示物に触れてはいけないのは基本中の基本。それは、作品保護のため。たとえ見た目には変化のない程度のかるい接触でも、皮脂が付着することで、将来的に変色などの可能性があります。帽子のつばや洋服の裾、パンフレットが触れると作品表面を傷つけるので、危険に感じた場合は監視員から声をかけられることも。また、額や壁面も触らないようにしましょう。

■2:写真撮影不可

著作権保護の問題やフラッシュによる作品へのダメージやほかの鑑賞者への配慮から、写真撮影は基本NGな美術館が多いです。スマートフォンのスクリーンショットなども、シャッター音が写真撮影と誤解されるもとなので、展示室内では控えるのがマナーです。

(ただ、SNS全盛時代になり、部分的に「ここだけは撮影していいですよ」という撮影スポットを、入り口や展覧会の途中、出口などに設けている展覧会も多くなっています。これについては後でご紹介します)。

■3:声のボリュームに配慮する

素敵な作品は同行者と共感しながら観たいときもありますし、案内パンフレットの内容を確認し合いたいこともありますが、「集中して観たい」という、ほかの鑑賞者のことも考えた声のボリュームにするのがいいことは、言うまでもありません。


「意外と知らない」美術館でのNG行動7つ

意外と知らない美術館でのNG行動7つ

基本的なことは押さえていても、ついつい知らずにマナー違反になってしまっていることも。そこで宇佐江さんに、美術館での意外と知られていないNG行動を7つ、挙げていただきました。

■1:シャープペンシル、ボールペンを使う

メモは普通の鉛筆でとるのがベター

メモをとること自体を禁止している施設は少ないですが、使用する筆記具に関しては制限がある場合がほとんど。特に、シャープペンシルやボールペンは基本NG。理由は芯が折れて飛びやすい、金属の先端が当たって表面を傷つけたり、インクが付着して汚したりするということ。安全なのは普通の鉛筆。受付で貸し出してくれる場合もあります。

■2:飴やガムを「口の中に入れたまま」鑑賞する

美術館内では飴やガムもNG

飲食はもちろん禁止されていますが、実は飴やガムもダメなんです。万が一、くしゃみやせきをしたときに飴やガムの成分を含んだ唾液が作品につく可能性があるためです。のど飴をなめる必要のある人は、受付で相談しましょう。

■3:携帯をマナーモードにしない

映画館と同じで、美術館も鑑賞の途中で携帯の音が鳴ると周りの人の迷惑に。電源を落とす必要はありませんが、マナーモードにしましょう。

■4:大きい荷物を持ちながら鑑賞する

スーツケースや旅行用のショルダーバッグなどの大きい荷物や、傘などの尖ったものは、作品に誤ってぶつかる可能性があります。前もってコインロッカーに入れておくと、鑑賞時に自分自身も身軽に過ごせます。ベビーカーの場合は、展示室内でも使用できる場合もあるので、一度施設に確認するのがベターです。

■5:「靴やアクセサリーの音が響くファッション」で鑑賞する

女性の場合、特に注意したいのが、ヒールの音が鳴る靴。特に展示室内は静かなので思った以上に響きます。同様に、ジャラジャラと音の鳴るアクセサリーにも気をつけたいですね。

■6:強い香水をつけて鑑賞する

自分では良い香りだと思っていても、鑑賞者が作品周辺に集い、人口密度が一時的に高くなる美術館では、しばしば他人にとって迷惑になってしまうものです。理想は何もつけないことです。

■7:お花の持ち込み

植物の持ち込みは、外部からの虫の侵入にも繋がりますのでNGです。よく、お知り合いの方が出品される美術展にお祝いのお花を贈られる方も多いですが、植物持ち込みが可能かどうか?を事前に美術館に問い合わせておくと、お渡しの際もスムーズにいくでしょう。


美術館での鑑賞をよりいっそう楽しむため3つのポイント

美術鑑賞をよりいっそう楽しむため3つのポイント

美術館のマナーを守ることのできる人は素敵ですが、NGマナーばかりでは息が詰まってしまいますよね。そこで、本来の目的である、美術館での鑑賞をよりいっそう楽しむためのポイントを、宇佐江さんにアドバイスいただきました。

■1:触ってOK・写真撮影OKの作品や場所も。案内表示を常にチェックしよう

触ってOK・写真撮影OKの作品もある

先ほど、基本的に美術館は作品の接触、および写真撮影はNGというお話をしましたが、近年の、特に現代アート展に関してはそうばかりとは限りません。触って楽しむ作品があったり、最新のAR技術が用いられていたり、写真を撮って自身のSNSにアップして美術展を盛り上げる、などという企画展も増えてきています。せっかく来たのだから…という「撮影欲」を満たすためにも、会場内外の壁や作品に添えられた「OK」の表示は見逃さずに、思う存分、展覧会を楽しみましょう。

■2:作品について係員に「スマートに小声で」質問してみる!

「鑑賞中、作品について気になったことがある場合は、近くにいる監視員や係員に気軽に尋ねてOK。ただし、質問の内容によっては調べるのに多少時間がかかってしまう場合も。監視員に質問する際のコツは、近くに寄って小声で話しかけることと、会話を長く続けないこと。監視員は鑑賞者が作品に興味を持ってもらえることが単純にうれしいので、話しかけられるのは歓迎。しかし、周りの人のことも考えてサッと尋ねて、用件が済んだらサッと鑑賞に戻るのが、見た目にもスマートです」(宇佐江さん)

■3:子連れでもOK!楽しいワークショップや子ども向けイベントもある

美術館は子どもと一緒に行くところではない、と思っているかもしれません。でも、美術館の規則として「年齢制限」を設けているところは、実はほとんどありません。

「ただ、保護者として気になるのは、静かにしていてくれるか、飽きずに一緒に観て周れるかどうか…ですよね。例えば大人ふたり体制で行けば、子どもが飽きてしまった場合、交代で鑑賞することもできます。施設によっては『ベビーカー鑑賞会』などの、子ども向けプログラムや楽しいワークショップもあるので、こまめにチェックすることをおすすめします。

また、子連れで美術館に行くと、監視員に警戒されるイメージがあるかもしれませんが、それは誤解。注意するためではなく、鑑賞を楽しんでいる保護者の方の目が離れる瞬間、とっさに子供のフォローができるように、そばで見守っているだけなのです。美術館スタッフはみな『美術館が好き』という子供がひとりでも増えてくれたら…と願っています」(宇佐江さん)

美術館は、マナーを守ることで、さらに充実した時間を過ごすことができる素晴らしい空間。作品についてうまく尋ねるなどして、作品への理解度を深め、知見や感性を深めるのもよいことなのだとわかりました。ぜひ次回、美術館に行くときの参考にしてみてくださいね。

宇佐江みつこさん
岐阜県美術館監視員
(うさえ みつこ)2017年、美術館の何気ない日常を猫主人公の目線で描いた4コマ漫画『ミュージアムの女』(KADOKAWA)を出版。現在も勤務のかたわら、同美術館公式SNSにて新作を定期配信中。
岐阜県美術館公式Twitter
岐阜県美術館公式Facebook

問い合わせ先

  • 県民文化の森 岐阜県美術館

    川合玉堂、前田青邨、山本芳翠、熊谷守一など、郷土にゆかりのある作家の作品をはじめ、国内外の美術を収集し、特にフランス象徴主義の作家オディロン・ルドンの作品は世界有数のコレクションとなっている。
    開館時間/10:00~18:00(展示室の入場は17:30まで)
    休館日/月曜日(月曜日が祝日の場合はその翌平日)、年末年始、臨時休館日は休館
    TEL:058-271-1313
    住所/岐阜県岐阜市宇佐4-1-22
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
石原亜香利