取引先や飲食店の訪問時、誰かのお宅にお招きされた際など、出先で「この荷物、どこに置いたらいい!?」と戸惑ってしまうことありませんか?

実は置き場所だけでなく、持ち方・運び方など手荷物にはさまざまなマナーがあります。知らずにマナー違反をして、「あの人、常識ないな」と白い目で見られたり、周囲に迷惑をかけてしまったりするのは避けたいですよね。

そこで、マナー講師の金森たかこさんから出先でやりがちだけど実はNGな手荷物のマナーについてお話をうかがいました。

迷惑がかかるので出先でやってはいけない荷物マナー10選

■1:取引先でビジネスバッグを真っ直ぐ立てずに置く

取引先への訪問時、自分の荷物はテーブルや椅子には置かず、足元に置く……というのはビジネスマナーの「基本のキ」として押さえている人が多いかと思います。

ただ、鞄は床に置きさえすればいいというわけではありません。素材や形状によっては、鞄が真っ直ぐ立てられないことがありますが、横置きにしたり、商談や打ち合わせ中に鞄が倒れたりするのはNG! ビジネスバッグは床に直立するものを選びましょう。

■2:飲食店でバッグをテーブルに置いたり背もたれにかけたりする

テーブル上の荷物
テーブル上の荷物

たとえ小さなものでも、飲食店のテーブルにバッグを置くのはマナー違反です。また、バッグを背もたれにかけると、お店の人の邪魔になるおそれがあるので、これもNG。

小さなバッグは、椅子の背もたれと自分の背中の間に置くようにしましょう。大きめのバッグは、左足元に置くのが正解です。もちろん、お店の人が鞄を入れるカゴを持ってきてくれたら、それを使わせてもらいましょう。

■3:大きめの荷物をクロークに預けない

フォーマルなお店でクロークがある場合、小さなバッグ以外は基本的にクロークに預けましょう。手荷物をなるべく自分で管理したいからといって大きいものを店内に持ち込むと、お店の雰囲気にそぐわずマナー違反にあたるおそれがあります。また、クロークに荷物を預けた際、番号札の扱いにも要注意です。

「荷物と引き換えに番号札を受け取った際、席につくことに気をとられてしまい、番号札を無造作にハンドバッグに収納してしまうことがあります。そうすると、後で荷物を受け取る時点で、“あれ、番号札はどこに入れたっけ?”となるおそれが……。焦りながらバッグの中を漁る姿はお世辞にもエレガントとはいえません。常にバッグの内ポケットに入れるなど、番号札の保管ルールを決めておくと安心です」(金森さん)

品格ある大人の女性たるもの、クロークをスマートに利用したいものですよね。

■4:かさばる荷物をどこにでも持ち込む

かさばる荷物
かさばる荷物

フォーマルな飲食店において小さなハンドバッグ以外はクロークに預けるのがマナーだとお伝えしましたが、それ以外にも、かさばる荷物を持ち込んではいけない場所はたくさんあります。

「美術館、博物館、水族館などでは、自分自身も周りの方も鑑賞に集中できるように、クロークやロッカーに預けるのが望ましいです。あとは、これからの季節に気をつけたい場所として、花火大会が挙げられますね。浴衣に着替える場合など荷物がかさばりがちですが、人が大勢集まる場で大きな鞄は迷惑になりかねません。それに、花火大会ではみなさん上を向いているので、荷物をうっかりぶつけてしまうおそれもあり危険です」(金森さん)

レジャーを存分に楽しむためにも、かさばる荷物は必ずロッカー等に預けましょう。

■5:和室で床の間に荷物を置く

床の間
床の間

飲食店や旅館、誰かのお宅で和室に通された際、荷物を床の間に置くのは絶対にやっちゃダメ! 床の間は荷物を置くのにおあつらえむきのようにも見えますが、本来はお花や掛け軸を飾る神聖な場所。ここに荷物を置くと恥をかいてしまいます。

「外国のかたで床の間の意味を知らず、掛け軸用のフックに上着をかけてしまった、なんてお話もあります。さすがに日本人でこれはないと思いますが、知らないとついマナー違反をやってしまうことってあるんですね」(金森さん)

海外の方を接待で和室のお店にご案内する機会もありますから、まずは私たちがお手本になれるように正しいマナーを身につけましょう。

■6:畳の上に荷物を直接置く

畳

和室で荷物を畳の上に直接置くのは、畳を傷つけたり、汚したりするおそれがあるのでNGです。風呂敷などを広げてその上に置くようにしましょう。

■7:自分の荷物と相手に渡す手土産を一緒に置く

和室での荷物の置き方で注意すべき点がもうひとつ。相手に渡す手土産がある場合、自分の荷物と一緒に置かないようにしましょう。

「自分の荷物は下座側、つまり自分が座っている位置よりも出入り口に近い側に置きましょう。手土産はその反対側の上座側に置くのが正解です」(金森さん)

なんとなく荷物をひとまとめにするのではなく、上座・下座をしっかり意識しましょう。

■8:満員電車でバッグを肩や肘にかけたままにする

満員電車
満員電車

電車内での迷惑行為として「リュックの背中持ち」はよく槍玉に挙げられますが、リュックはあまり使わない……というキャリア女性も他人事ではありません。

満員電車でバックを肩や肘にかけたままにすると、ふとした瞬間に鞄を他人にぶつけたり、ラッシュ時で詰め詰めの状態では鞄を押し付けたりするおそれがあります。電車が混んでいるときは、バッグを自分のからだの正面で持ち、できるだけ周囲に迷惑がかからないようにしましょう。

■9:雨に濡れた荷物をそのまま車内に持ち込む

雨の日
雨の日

梅雨の季節にありがちなマナー違反として、雨に濡れた荷物をそのまま車内に持ち込むという点が挙げられます。

「濡れた折りたたみ傘や荷物を手元に提げた状態で座席の前に立つと、座っている人に水がかかるおそれがありますし、実際にかからなくても不快感を与えてしまいます。折りたたみ傘を素早くたたんで傘袋に収めるのが難しい場合は、ビニール袋などに入れて鞄に収めるようにしましょう。また、鞄などは乗車前にタオルでひと拭きすると、周りの乗客だけでなく、自分にとっても快適ですよね」(金森さん)

梅雨時には濡れた荷物を拭く用のタオルを常に携帯するようにしましょう。

■10:エスカレーターでキャリーバッグから手を離す

キャリーバッグ
キャリーバッグ

出張やプライベートの旅行でキャリーバッグを持ち運ぶ際、エスカレーターでの扱いに要注意です。

「キャリーバッグが滑り落ちると事故につながるおそれがありますので、エスカレーターではキャリーバッグから絶対に手を離さないこと。そして、上りでは自分の前方、下りでは自分の後方に置くようにしましょう。このポジションであれば、万が一、キャリーバッグが倒れそうになっても自分で支えることができます」(金森さん)

重さもあるキャリーバッグは、ともすれば凶器に。平地移動でも人にぶつけないように気をつける必要がありますが、エスカレーターでは特に慎重に扱いましょう。

日ごろ何気なく持ち歩いている荷物で、うっかりマナー違反をしていた……という人も少なくないのでは? マナーの基本はまわりの人への気配り、心配りです。自分の荷物がまわりの人にどのような影響を及ぼしているのか振り返って、マナー向上を目指しましょう。

金森たかこさん
マナー講師、話し方マナーコミュニケーション講師
(かなもり たかこ)一般社団法人マナー教育推進協会代表理事副会長。ウイズ株式会社社長。officeT代表。大阪府出身、京都市在住。大手食品メーカー人事部にて人材育成・秘書業務などに携わった後、フリーアナウンサーとして独立。その後、マナーコンサルタント西出ひろ子氏に師事し、ビジネスマナー講師として、企業、行政機関、教育機関、病院・歯科医院などの医療機関にて、講演・研修・コンサルティングを行う。著書に『入社1年目ビジネスマナーの教科書』『入社1年目 人前であがらずに話す教科書』(2冊とも西出ひろ子監修)がある。
ウイズ株式会社
この記事の執筆者
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WRITING :
中田綾美