身長156cmのインテリアエディターが、実際に見て・触れて・座ってレポートする連載企画。今回は番外編として、神戸の街に点在する普段は入れない魅力的な建物が一斉公開されるイベント「神戸建築祭」を一足先に訪れ、その見どころをご紹介します。
神戸は、明治の開港により国際貿易港として発展。多様な文化や価値観が交差した異国情緒を色濃く残す建物から、重厚な教育施設、さらには土木遺産までが共存する街です。建築を目的に訪れたくなる、新しい神戸の楽しみ方をお届けします。
「神戸建築祭」を楽しむ神戸の3つの視点と5つの建築
神戸は街のどこからでも北を見れば緑豊かな六甲山、南を見れば青い海が感じられる山と海が融合した港町です。明治の開港以来、居留地が造成されて西洋の産業・文化が融合し、重工業やファッション・食文化などが大きく栄えました。
そんな神戸の魅力を体感できるのが、建物を一斉公開するイベント「神戸建築祭」。2026年は約80件の建築が公開され、街を巡るように神戸の歴史と美に触れることができます。
今回はそのなかから、旅の目的にしたくなる5つの歴史的建造物を、「異国文化が息づく建築」「酒造文化が生んだ“知と都市”の建築」「街を支えた近代土木の美」という3つの視点からご紹介します。
■1:「異国文化が息づく建築」
足元から伝わる荘厳さと美しい祈りの空間!「神戸ムスリムモスク」
日本初のイスラム教寺院として建てられた「神戸ムスリムモスク」は、港町・神戸が受け入れてきた多文化の歴史を象徴する建築です。1935年、神戸在住のトルコ人、タタール人、インド人貿易商らの出資により建設されました。
設計はチェコ出身の建築家ヤン・ヨセフ・スワガー、東京ドームを建てたことでも有名な竹中工務店による施工です。神戸大空襲や阪神・淡路大震災でも被害を免れ、頑強な建築構造をもっています。そして意外なことに、マンションや戸建て住居などが並ぶ住宅街に建っています。
内部に一歩足を踏み入れると、ペルシャ絨毯の柔らかな感触と静謐な空気に包まれ、祈りの空間に来たことを体感できます。そして、シャンデリアや円や星を組み合わせた、無限に続く精密な模様に胸が高鳴ります。
太陽の動きに基づく礼拝の時間は地域ごとに決まるため、世界中で絶えず祈りが神様に捧げられているというお話も興味深く、祈りの時刻を告げるデジタル時計が祭壇の空間で一際目立っていました。
モスクの1階は男性、今回のプレスツアーで特別に入らせていただけた中2階は女性のための礼拝所になっています(パスポート見学可能なのは1階のみ)。毎週金曜の集団礼拝日には関西各地から信者200人以上が参拝に訪れるそうです。見学の際は、半ズボンやミニスカートなど“肌の露出”は慎むことになっています。
「神戸ムスリムモスク」
見学可能時間:5月9日(土)10:00~16:30(12:15~12:45は見学不可)
住所/神戸市中央区中山手通2-25-14
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瀟洒な洋館とシノワズリにときめく!「中華民國(台灣)留日神戸華僑總會」
明治期にドイツ人の邸宅として建てられ、現在は華僑コミュニティの拠点となっている、竣工当時の面影が今も残る貴重な建物「神戸華僑総会」。外観は下見板張りの壁面、1階と2階のベランダ部分は全面ガラス張りにされたサンルームが特徴的な神戸らしい佇まいの異人館です。
こちらのサンルームは、実は外に向かって少し床が傾いています。というのも邸宅ができた当時は外の空間として作られ、雨が降ったときに水捌けをよくするための構造の名残です。日本の高温多湿な夏と冬の寒さを防ぎながらも光を採り入れられるよう、壁が追加されこのような空間になりました。
「神戸華僑総会」
見学可能時間:5月8日(金)・9日(土)・10日(日)10:00~17:00
住所/神戸市中央区北野町4-2-1
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■2:「酒造文化が生んだ“知と都市”の建築」
重厚な歴史と現代的な教育空間の融合!「灘中学校・高等学校」
日本屈指の進学校として知られる中高一貫の男子校「灘中学校・高等学校」の校舎が、「神戸建築祭」で初公開されます。今回ご紹介する本館は、関西建築界の重鎮・宗兵蔵による設計。1928年に建てられ、2001年には国の登録有形文化財に登録されました。
1階部分は石積風の横目地が施されどっしりとした重厚感。2階部分の窓には、ゴシック建築の尖りアーチを思わせる直線的な飾り枠が付けられ、建物の象徴的な意匠となっています。そのほかにも細部にわたり、歴史性とモダンさを兼ね備えた独自の意匠が凝らされています。
「灘中学校・高等学校」の歴史は、灘の酒造家3社(菊正宗酒造の嘉納家、白鶴酒造の嘉納家、櫻正宗の山邑家)の教育への投資によって始まりました。空襲や震災を乗り越え、今も使われ続けるその姿は、文化と教育を支えた地域の力そのものです。
「灘中学校・高等学校」
見学可能時間:5月10日(日)10:00~16:00
住所:神戸市東灘区魚崎北町8-5-1
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映画『火垂の墓』にも登場!昭和初期の神戸モダニズム建築「御影公会堂」
「御影公会堂」は、阪神大水害神戸、大空襲、阪神大震災と3つの災難を越えた昭和初期の神戸モダニズム建築のひとつです。旧御影町が白鶴酒造7代目社長嘉納治兵衛氏より寄付を受け1933年に建設されました。昭和初期の日本の建築技術と芸術的意匠が融合した、極めて価値の高い歴史的建造物です。
アール・デコ調の外観とスクラッチタイルの調和が見どころ。タイル張りの直線的で垂直性を強調した壁面に、緩やかな曲線のアーチ窓や円形の装飾窓が配置されることで、アール・デコ特有の直線と曲線の対比が美しい表情を見せています。
戦災で外壁を残し内部がほぼ全焼しましたが、1950年に旧御影町と神戸市が合併し改修工事を実施。1995年に起きた阪神淡路大震災の際には、避難所として使われました。
その後、耐震改修工事を経て、地下に御影郷土資料室・嘉納治五郎記念コーナーが開設され現在に至ります。映画『火垂の墓』では、主人公の兄弟と母の待ち合わせ場所として登場する歴史的建造物です。
「御影公会堂」
見学可能時間:5月9日(土)・10日(日)10:00~17:00
住所:神戸市東灘区御影石町4-4-1
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■3:「街を支えた近代土木の美」
レンガの美しい土木建築!日本初の河川トンネル「湊川隧道」
明治期の神戸三大土木事業1901年に完成した「湊川隧道」は、度重なる湊川の洪水と神戸港への土砂流入を防ぐため建設された日本初の河川トンネル。当時の最先端技術と職人技が融合した、工芸品のような緻密さと力強さが魅力の土木建築です。
荷重を支える側壁には強固な「イギリス積み」、天井のアーチ部分には「長手積み」など、場所によって積み方を変えています。この規則正しいパターンが、地下空間に独特のリズムと重厚感を与えています。
当時の職人が一つひとつ手作業で積み上げたレンガの列は、100年以上経った今もなお完璧な曲線(アーチ)を描いており、圧倒的な迫力の内部空間。底部を流れるわずかな水が石畳に反射し、レンガの温かみのある色と、硬質な石の質感が地下空間に幽玄な雰囲気を作り出しています。
阪神・淡路大震災で大きな被害を受け、建設百年目となった2000年に「新湊川トンネル」へ役割を譲りました。明治期の神戸を象徴する近代化産業遺産として歴史的価値が評価され、2011年に土木学会選奨土木遺産に、2019年には国登録有形文化財に登録され、地元でも愛されています。
「湊川隧道」
見学可能時間:5月10日(日)10:00~16:00
住所:神戸市東灘区魚崎北町8-5-1
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今回は「神戸建築祭」の見どころについてお伝えしました。新緑の美しい季節に海も山も楽しめる神戸で、歴史に思いを馳せながら建築散策してみませんか?
【イベント詳細】
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「神戸建築祭」
「パスポート公開」の建築を見学するには、パスポートが必要です。参加費の一部は建築の保存に充てられています。
開催期間(パスポート一斉公開日):
2026年5月8日(金)〜5月10日(日)(公開日時は建築により異なります)
開催エリア:
北野・山手/三宮・元町・港湾/湊川・兵庫/灘/東灘
・参加建築:68件(うち24件は新規)
・パスポート公開件数30件(うち14件は新規)
・ガイドツアー 26コース(ガイドツアー抽選受付期間はすでに終了)
パスポート:
・販売期間/~2026年5月10日(日)16:30まで ※早割は4月30日(木)まで
・価格/一般:早割¥3,300、通常¥3,500・U29(29歳以下):早割¥1,800、通常¥2,000
※記事内の価格は、すべて税込みです。
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- TEXT :
- 土橋陽子さん インテリアエディター
公式サイト:YOKODOBASHI.COM

















