日本各地で育まれてきた高度なものづくりの技術と、若き匠たちの美意識や情熱が結びついた「新時代のジャパンラグジュアリー」を体現する逸品を、ギフトという形で提案しているスタイリストの河井真奈さん。今回ご紹介いただくのは、 絶滅の危機に瀕する伝統技術「横振り刺繍」に新たな息吹を注ぎ込んだブランド「yuki onizuka(ユキ オニヅカ)」のアクセサリーです。
「3年ほど前の展示会でこちらのブランドを見かけた際、“身につけられる伝統工芸”というコンセプトに惹かれました。伝統工芸はアートとして鑑賞するか、日常に取り入れるとすれば食器などが主流。もちろんアクセサリーもありますが、今の美的感覚と合致したスタイリッシュなデザインにはなかなか出合えません。
ですが、鬼塚さんの作品は洗練された佇まいが凛とした存在感を放ち、デイリーに楽しめるファッショアイテムとして見事に昇華されているのです。
デザイン、制作、作品の梱包に至るまで全工程を鬼塚さんがおひとりで手掛けているという事情もあり、少し年月はかかってしまいましたが、このたび満を持して7種類のアクセサリーを『futo』で扱えることになりました」(河井さん)
繊細な葉脈や花びらなど自然を写し取った作品群は、揺れ感・透け感・立体感があり、まるで植物の一瞬の美しさを閉じ込めたかのような印象。卓越した技術をもつ刺繍職人である鬼塚さんが、70年以上前の旧式ミシンと対話しながら紡ぎ出す唯一無二の世界観とその魅力について、河井さんに語っていただきました。
全身全霊で一針を紡ぐ!伝統工芸を日常に寄り添うアートへと昇華
刺繍アクセサリーブランド「ユキ オニヅカ」の根幹を支えるのは、「横振り刺繍」という技法。群馬県桐生市で大正時代から受け継がれてきた刺繍技術で、現在では職人の高齢化が進み、ミシン本体の新規製造も行われていないことから絶滅の危機に瀕している希少な伝統工芸のひとつです。そこに現代的な感性が融合したアクセサリーブランドがどのように生み出されたのでしょうか。
「現在は山梨を拠点に活動されている鬼塚さんですが、ご出身は神奈川県横浜市。小さい頃からものづくりが好きで、服飾の専門学校に進みましたが、アパレル業界の大量生産・大量消費の傾向に疑問を抱き、卒業後は京都へ移住。寺院の仏具や袈裟などの修復を行う会社に就職して作業に不可欠な横振りミシンに出合い、その技術を学びます」(河井さん)
「仏具や袈裟は、長い年月に渡り多くの人々の想いと共に受け継がれてきたもの。古びてはいるけれど替えがきかない品々の修復に携わるうちに、鬼塚さんのなかで芽生えたのは、横振り刺繍というすばらしい技術が消滅してしまうことへの危機感でした。また、自分自身の手でも、使い手の想いを乗せられるような特別な一点を生み出したいという志もあり、鬼塚さんは刺繍作品の制作をスタートさせます。
そして2020年。横振り刺繍の技術を習得した鬼塚さんは独立して、自然豊かな山梨に移住。仕事の傍ら趣味として続けていた生け花の感性も掛け合わせて、自らの名を冠した刺繍アクセサリーブランド「ユキ オニヅカ」のローンチに至ったのです」(河井さん)
横振り刺繍で使われる専用のミシンは、その名のとおり針が左右に動くのが特徴。コンピューター制御がないばかりか、布を一定方向に動かす送り歯のパーツもなく、職人が完全フリーハンドで自分の感覚だけを頼りに縫い進めます。
まず、 手で生地を動かし、足踏みでミシンの速度を調整。さらに、膝元にあるバーを操作することで、針の微妙な振れ幅(刺繍の太さや形)をコントロールします。この手足膝の動きが合わないと、糸がダマになったり布が破れたりして台無しになるおそれもあり、制作は1ミリのズレも許されないプレッシャーが常に隣合わせの緻密な作業です。
「まさに、全身全霊をかけた一発勝負の世界で、制作は身も心もクタクタになるような重労働なのだそう。だからこそひとつひとつの作品に職人の魂が宿り、通常のミシン縫いでは絶対に真似のできない奥深い芸術性がもたらされます。それでいて『ユキ オニヅカ』のアクセサリーは、途方もない手間と集中力が注ぎ込まれているという制作背景を鑑みると、実に良心的な価格帯!
しかも見た目は華やかな存在感があるのに、仕上がりはわずか1グラムほどと、つけているのを忘れてしまうほどの軽やかさ。工芸品としての価値を宿しつつ、贈られる側にとって負担にならないという点でもギフトに好適です。大切な人への贈り物にはもちろん、ご自身へのご褒美としても自信をもっておすすめできます」(河井さん)
緻密な手仕事の見事さに心奪われる7つのバリエーション
河井さんが「futo」のためにセレクトしたのは、横振り刺繍の多彩な表現を楽しめる7点のアイテム。それぞれ異なる技法や個性を備えたアイテムが揃います。
■1:ツユクサ ネックレス
万葉集の時代から日本人に親しまれてきた露草。朝に咲き、昼を待たずに萎れてしまうその儚くも美しい瞬間を切り取ったネックレスです。朝露に濡れながらたおやかに花開く様子が、シルバーの糸で緻密に表現されています。
■2:ツユクサ ブローチ
同じく露草をモチーフにした、鮮やかな赤が目を引くブローチ。糸の重なりによって生まれる深みのあるレッドが大人の気品を漂わせます。河井さんは「意外性のある還暦のお祝いにもおすすめです」とのこと。
■3:スケルトン ハイドランジア ピアス
雨風にさらされ、花脈だけを残した紫陽花の花びらを刺繍で表現。極細の糸を繰り返し重ねることでレースのような姿に仕上げています。光を通したときの繊細な陰影は息をのむほどの美しさです。
■4:カワラナデシコ ピアス
日本原産の可憐な花、河原撫子の花弁をモチーフにした耳飾り。注意深くヒートカットすることで実現されたフリンジが、かすかに揺れ動きます。
■5:ラン ピアス
それぞれ個別に縫い上げた花びらのパーツを美しく重ね合わせ、胡蝶蘭の造形をリアルに再現。胡蝶蘭には「幸福が飛んでくる」という花言葉があるので、大切な方の新たな門出や特別な記念日のギフトとして贈るのにもぴったりです。
■6:ツユクサ ピアス
露草の瑞々しい佇まいを、優しいピンクで表現。肌なじみがよく、顔色を柔らかくフェミニンに引き立ててくれます。上品なシアー感と輝きで、ウェディングなど華やかな席でも活躍するアイテムです。
■7:ホワイト レース ピアス
中央の微細な花を大きな花びらがリング状に囲む、独特な咲き方をする「オルレア」をモチーフにしたデザイン。まるでアンティークレースのような可憐さが、日常にさりげない気品を添えてくれます。
「ユキ オニヅカ」の刺繍アクセサリーは、日々の暮らしに彩りと豊かさをもたらすだけでなく、使い手の心に深い満足感と喜びを与えてくれます。身につけるたびに職人の手仕事と自然の美しさを感じられる作品は、記憶に残るギフトとして長く愛されることでしょう。
※掲載商品の価格はすべて税込みで、記事公開時のものです。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 中田綾美
- EDIT :
- 谷 花生(Precious.jp)

















