「あの人は誰?」と注目を浴びたチャールズ国王参加のガラパーティ
英国初の、アフリカ系侯爵夫人。第8代バース侯爵夫人エマ・シン(以降エマ)。正確にはナイジェリア人の父親と英国人の母親の間に生まれたミックスレイスです。
エマが世界的に、特にファッション界で注目されたのは、今年4月にニューヨークで開催された、英国チャールズ国王の慈善団体「キングス・トラスト」の設立50周年を讃えるガラパーティでした。チャールズ国王、カミラ王妃、アナ・ウィンターなどと親しく談笑する様子がメディアに流れ、ミニマルで品のよいラベンダーのドレスに身を包んだエマの姿が、「この人はいったい誰?」と一般の人々からも興味を引いたのです。
貴族としての品格を備えながら、ファッション、ロイヤル、セレブカルチャーをクロスさせる存在として認識されるきっかけでした。
続いて5月にはメットガラに登場。ファッション界での最高峰イベントにゲストとして初出席し、セリーナ・ウィリアムズ(男女通して史上最高とされる元世界ランキング1位の女子テニス選手。今年4年ぶりに復帰)との親密なレッドカーペットの様子も報じられ、肌の色もあってか「エマこそ、メーガン妃の最大のライバル」とさえ言われ始めたのです。
ちなみにロイヤル繋がりでは、ダイアナ元妃の姪であるレディ・キティ・スペンサーとも大の仲よしと言われています。
父はナイジェリアの石油王!富と美貌を兼ね備えた生まれながらのセレブ
突然に注目の的となったように受けとられがちなエマですが、決してこれまで無名の存在だったわけではありません。ナイジェリアの石油王で大富豪の父親をもち、母親は英国のソーシャライトという裕福な出自で、2歳の頃に着ていたファッションが話題になるほどでした。
1986年にロンドンで誕生し、現在40歳。ロンドン大学を卒業後、ロンドン音楽演劇アカデミーで古典劇を学び、2013年にウェイマス子爵であるシーオリン・シンと結婚。2020年に夫がバース侯爵を継承すると共に、イギリス貴族初の黒人系侯爵夫人となりました。現在夫妻の間にはジョンとヘンリーの2人の息子がいます。
結婚前からロンドンの社交界では名を馳せていましたが、結婚後はさらに活動の範囲が広がり、英国版『ヴォーグ』や『ハフポスト』などに寄稿したり、テレビのダンスコンテスト番組や『レディース・オブ・ロンドン』というロイヤル関係の女性達を揃えたリアリティ番組にメインキャストで出演、「ドルチェ&ガッバーナ」のシークレットショーにモデルとして登場したりと、華やかな話題に事欠かないアイコン的存在に育っていったのです。
最近では、ジュエラーの「ポメラート」、ランジェリーブランド「ヴィクトリアズ・シークレット」の香水のアンバサダーにも起用され、エマのセレブリティとしての名声は、煌びやかさが増すばかり。
表面的な華やかさだけではなく実業家としての資質も父親譲りでしょうか、嫁ぎ先のバース家代々のカントリーハウス「ロングリート」の女主人としても、手腕をふるっています。英国で初めて貴族の館を観光施設として公開した「ロングリート」は、1966年にサファリパークまで併設され、先代バース侯爵の趣味的要素が色濃く反映されたものでした。
結婚後は食品とライフスタイルブランド「エマズ・キッチン」を設立し、「ロングリート」でアフタヌーンティー事業を立ち上げ、式典で訪れたエディンバラ公エドワード王子をもてなすなど、自分の知名度を生かした新しい価値を館に加えたのです。結果、2025年に『タトラー誌』が選ぶ「カントリーハウス・アワード」にてエマは「ベストホステス」に選出され、まさに英国最高のおもてなしがここで味わえるとの、お墨付きまで得たのです。
その意味では、ライフスタイルブランドで売り込もうとするメーガン妃がエマを意識しているという噂が立つのも、あながち無理はないなと納得させられます。
親しみやすい普段着も大胆なドレスアップも上品に着こなす
エマのカジュアルな日常着のスタイルは多く見ることはできませんが、花柄や、水玉といった定番や、ストライプやアクティブスポーツウエアをさりげなく着こなす、いかにも英国のスローンレンジャー(※)特有の安定したクラシックが好み。フェミニンでさりげないドレスや動きやすいスタイルが多く、派手な感じがないのも好感度が高い要素ではないでしょうか?
またフォーマルな席では、黒のモノトーン使いや、肌の色が引き立つカラフルで華やかなドレス、大胆な肌見せデザインなど、幅広いチョイスを見せ、観客を魅了しています。それでもハリウッド的な過剰さを感じないのは、エマの侯爵夫人としての品のよさがそうさせるのでしょう。
最近ではさらに洗練に磨きがかかり、クチュール素材をミニマルにデザインしたドレスを好む傾向にあるようです。
筆者はエマを見ながら、1990年代のナオミ・キャンベルを思い出しました。スーパーモデルとしてもてはやされながら、実は人種差別に悩んでいたという事実を知ったときは驚きました。エマも、結婚式にはとうとう夫の両親が出席せず、エマの母親が相手方に対してSNSで激しい抗議をしたことが話題になったほどです。
現代の多様性を象徴するようなアフリカ系初の英国貴族と一身に注目を集めていますが、順風満帆に見えるエマの眩いライフスタイルの芯には、「逆境をそうとは見せない」しなやかな強さが秘められているのでしょう。
穏やかに微笑みながら、水面下ではスワンのように常に水をかき、たゆまぬ努力を重ねたからこそ、エマのゴージャスな明るさが周りの共感を呼ぶのではないのでしょうか。
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- TEXT :
- 藤岡篤子さん ファッションジャーナリスト
- PHOTO :
- Getty Images
- EDIT :
- 谷 花生(Precious.jp)

















