ビジネス、スポーツ、芸術など、すべての分野で「一流」と呼ばれる人たちがいますよね。そうした人たちは、男女年齢を問わず、みなキラキラと輝いています。彼らと普通の人には一体、どんな差があるのでしょうか? どこが違うのでしょうか? 気になりますよね。
一流になりたいと思ったとき、「自分には才能がない」とあきらめる必要はありません。スポーツ心理学者の専門家で、トップアスリートのメンタルトレーナーとして活躍し、ご自身も大学生時代にテニスのトッププレーヤーだった児玉光雄さんは「人は誰もが、あらゆる分野で一流になれる可能性を持って生まれてくるのです」と言います。
「ただ多くの人は、一流の人たちがやっている、いくつかのことをやらないだけ。それが一流の人と他の人との違いなんです」とのこと。一体どうすれば、一流の人達のようにずば抜けた成果が出せるようになるのでしょうか? 児玉さんから、脳の使い方を教えていただきました。
ぜひ、これからご紹介する6つの習慣を意識して、一流の仲間入りを果たし、人生を輝かせましょう!
■1:制限時間を定めて「短時間で」何かを生み出す
何かを選択する際などにピピッと教えてくれる、直感的なひらめきは、誰もが持つ能力です。ただ、多くの人はあまりひらめきを信用しません。ですが、児玉さんによれば「ひらめきを活用することこそ、一流になるための第一歩」なのだそう。
「理化学研究所が長年かけて、囲碁や将棋の棋士たちを対象に、ひらめきの研究をしているんです。その結果、一流な人ほど、次の一手をどう打つか、素早くひらめきを使って選択していることがわかっています。もちろん局面によって、時間をかけることもありますが、一流の人たちは多くの場合、1~2秒くらいの速さでひらめいた次の一手を判断しています。
このひらめきの活用は、ビジネスなどでも応用できます。例えば、企画やアイディアを発案したいときですね。発案したいときはなるべくひとりになり、5~10分とか、時間を決めて、集中するようにします。その時に直感的にひらめいたアイデアを、どんどんノートにメモしましょう。そうして発案したアイデアを、会議で発表するというやり方がオススメです」(児玉さん)
ひらめきは考えるというより、感じるのがコツで「常識にとらわれないように」とも語る児玉さん。せっかく未来のヒット企画をひらめいたのに、「こんなアイデアは常識はずれだろう」などと決めつけず、ぜひ、ひらめきを信用してあげましょう。
■2:異常なほど「自分の好きなこと」に人生の時間を費やす
「好きこそものの上手なれ」という言葉には、一流に共通する真実が言い表されているそうです。
「人は好きなものに対しては、熱心に努力します。好きであることは、才能を開花させるまさに王道で、一流の人とはいわば、異常なほど、自分の好きなことに時間を費やした人です。ですからみなさんも、好きなことをどんどんやれば、一流になれるのです。
誰もが子どもの頃から、好きなことを感じています。勉強が好き、絵をかくのが好き、スポーツが好き、話すのが好きなど、さまざまです。これらはそれぞれ、運動系、言語系、感覚系など、使う脳の部位(番地)が違っています。
大人はつい『勉強ができるのが頭のいい子』と思いがちですが、勉強でなくても、どの分野が得意でも”頭がいい子”なのです。ですから、その子が『好き』ということはどんどん伸ばしてあげることで、一流になっていきます」(児玉さん)
好きなことが仕事になるとは限りませんが、仕事の中に自分の得意分野を見つけ出すことで、キャリアアップのきっかけになるでしょう。また、転職などを考えている人は、「好き」を仕事にすることで、一流になれる可能性も高まるかもしれません。
■3:迂回脳を駆使して、ひとつのテーマを「狭く突き詰める」
一流の人が好きなひとつのことに時間を費やす際に、自然と活用しているのが「迂回脳」という脳の働きだそうです。いったいどのようなものなのでしょう?
「迂回脳とは、何かをする際に、脳の複数の機能を連係プレー的に活用する方法です。脳のいろんな部位を、信号が迂回して通るので、迂回脳と呼びます。わかりやすい例が記憶術ですね。何か英単語を記憶しようとするとき、多くの人は、記憶力だけを使って頭で記憶しようとします。この場合、信号は最短距離の経路が使われます。これが直線脳です。
そのいいところは、手っ取り早く覚えられること。でも、大きなデメリットは、記憶が安定しない、すぐ忘れるということです。一方で、迂回脳で暗記する場合は、五感に関連づけて覚えるのです。例えば、『simultaneously』(発音:サイマルテイニアスリー、意味:同時に)という言葉を覚えるとします。
迂回脳で覚えるなら、視覚を使って、あるひとつの商品を他の人と同時につかんだシーンなどをイメージして『同時に』と暗記します。聴覚を使うなら、他の人と同時に改札を通過した際に発生する、ピピという音をイメージする。同様に、嗅覚、味覚、触覚などでも『同時に』と関連したイメージをつくって『simultaneously』という言葉を覚えます。
このように、五感を駆使することで、脳のいろんな部位を使うのが迂回脳の活用です。迂回脳を使うことのメリットは、記憶が安定して深化することです。一流の人たちはこうして迂回脳を使いながら、記憶力に限らず、ひとつのテーマに対して、狭く、深く突き詰め、誰にも真似できないような、高度なスキルを身につけているのです」(児玉さん)
何かを覚えたり、スキルアップを図る際は、少々手間がかかっても五感を動員しながら迂回脳を活用する。ぜひ、そんな習慣を取り入れてみてください。
■4:「洗練された情報」を小脳にきっちり記憶させる
一流の人は「小脳が進化した人」ばかりなのだそうです。どうしたら小脳は進化するのでしょうか?
「小脳は特に、運動学習と深く関わっています。”体で覚える”という言葉がありますよね。その意味する本質は、練習で試行錯誤を繰り返した結果、習得に成功した洗練した情報が、きっちりと小脳に記憶されました、ということなんです。
ですから、小脳を進化させる唯一の方法は、トライ&エラーをひたすら繰り返すことです。成果がつかめるまであきらめずに、何度でも失敗を重ね、改善策を試し続けること。
小脳というのは、直感・ひらめきの源である可能性も指摘されています。ですから、ひらめきを活用するためにも、トライ&エラーを繰り返し、小脳を進化させることは、一流につながる道なのです」(児玉さん)
やってみてダメだったら、別のやり方を試してみる。これを続けましょう。トライ&エラーで、小脳が進化するはずです。
■5:普段から「ひらめきに敏感」になり、活用してみる
一流の人は、普段から直感やひらめきに敏感になる習慣を持つそうです。では、どんなやり方があるのでしょうか?
「直感やひらめきを使うチャンスは、毎日の中にいろいろとあります。例えば、朝なら、『いつもと違う道を通ってみよう』とひらめいたりすることもあるはずです。このように、いつもと違うことをひらめいた場合は、ぜひやってみることをオススメします。
というのも、脳は新鮮なことを与えてあげると、すごく活性化します。ですから、ひらめきの実践と脳の活性化が同時に行えるんですね。今日はいつもと違うランチにしてみよう、いつも選ばない色の服を買ってみよう、いつも読まない分野の本を読もうなど、ひらめきを『いつもと違うこと』というキーワードとセットで使ってみてください。
ひらめきをどんどん活用すると、何か目的を達成したときと同様に、ドーパミンやβエンドルフィンなどの快感物質が分泌されるようになります。ですから、ひらめきを使うことがすごく心地よくなっていきます」(児玉さん)
もし使えないひらめきがあったとしても、気にすることはないそうです。ぜひ、積極的にひらめきを活用してみましょう。
■6:テストステロンで「空間認識能力」と「やる気」を高める
一流の人が有効活用するホルモン、それが勝者のホルモンとも呼ばれるテストステロンなのだそうです。
「テストステロンは、勝者のホルモン、攻撃ホルモンなどと呼ばれます。勝利する、成功させるという気力を充実させるとともに、空間認識能力を高めてくれるホルモンです。男性に比べると、残念ながら、遺伝的に女性にはやや少ないのです。
テストステロンは、F1レーサー、飛行機パイロット、内視鏡を使う外科医などに必須のホルモンです。そのため、この分野ではまだあまり女性が活躍していません。でももちろん、女性にもテストステロンを増強させることはできます。
そのためにするといいことは、適度な運動です。やや激しい運動がベターです。そして適正体重の維持、質の良い睡眠もテストステロンに効果的です。
栄養素としては、亜鉛、アミノ酸、ビタミンC、D、E、アスパラギン酸などをサプリで補充しましょう。避けるべきことは、ストレス、砂糖、炭水化物、アルコールの過剰摂取などです。
空間認識力の強化の仕方は、各種の球技スポーツ、けん玉・お手玉、車の車庫入れ、ダーツ、地図に頼らずに街を散策する、などがあります」(児玉さん)
テストステロンは、仕事・プライベートの双方を充実させようとする活力にもなってくれるそう。ぜひ、運動やサプリを活用してみましょう。
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直感・ひらめき、五感、トライ&エラー、ホルモンなど、誰にでも備わっている能力に少し磨きをかけ、有効活用することで、誰にでも一流の仲間入りができるのです。これはもう、実践あるのみ。ぜひ、これらの習慣でステップアップしていってくださいね!
『一流の本質』児玉光雄・著 SBクリエイティブ刊
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 町田光