【美しいひとの美しい部屋・夏スペシャル】目の前に広がる青い色と波の音。地球の恵みをダイレクトに感じる家で暮らす彼女たちのライフスタイルとは──「海辺での暮らし」がもたらしたもの

海の近くで暮らしてみたい。一度はそんな思いを抱いた人も多いはず。どこまでも続く豊かなブルーと潮の香り、心地よい波の音。海を身近に感じながら過ごす、おおらかな時間は、仕事や生き方、体や心にどんな影響をもたらしたのでしょうか。二拠点暮らしや移住など、忙しく働く彼女たちのリアルな声を、開放感溢れる部屋と共にお届けします。

今回は、料理研究家・プロデューサーとしてご活躍の土屋由美さんの、神奈川県葉山のご自宅をご紹介します。

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最上階のルーフテラスで。
土屋由美さん
料理研究家・プロデューサー
(Yumi Tsuchiya)神奈川県・葉山生まれ。中学から大学までカナダで過ごす。帰国後、外資系証券会社勤務を経て、2000年、母が営むカフェ「manimani」オープンをきっかけに地元に戻る。2009年、葉山の自宅で不定期のカフェや料理教室を開始。現在はレストランやカフェのプロデュースなども手掛ける。インスタグラム@cafemanimani

「外のような中、中のような外。どこにいても、光と風、海を感じる開放的な家が理想でした」 料理研究家・プロデューサー 土屋由美さんの海と風と光の家

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鮮やかなピンクのヴィンテージクロスがかけられたダイニングテーブルは、知人から譲り受けたアンティーク。このテーブルを気に入った阿部氏は、テーブルの寸法に合わせてダイニングを設計したとか。「実は、クロスをめくると、天板に “人生は軽いタッチ” と名言が彫ってあるんです(笑)」。壁のアートは、土屋さんのお姉様が美大生時代に描いた作品。窓からは江ノ島が見える。


かつて、葉山・森戸海岸に古民家を改装したおしゃれなカフェがありました。2000年にオープンした「cafe manimani」は、古い家具がセンスよく配され、当時では珍しいオーガニックやグルテンフリーの料理やスイーツを提供。葉山在住の外国人をはじめ、感度の高い客が都内からも足を運ぶ、葉山のカフェ文化の元祖ともいうべき名店。惜しまれつつ2014年に閉店しましたが、そのスピリッツを受け継ぐ人が、料理研究家の土屋由美さんです。

「母がカフェを始めるにあたって、私も一から運営に携わりました。中学1年生のとき家族とカナダに渡り、半年後に両親は帰国しましたが、姉と私は残って大学卒業まで現地で過ごしました。カナダは移民が多く、さまざまな国の食やカルチャーに触れた経験がカフェの運営に役立ったと思います。当時のカフェでは見かけなかったチリビーンズやかぼちゃプリン、くるみのタルトなどを考案。日本の古民家で海外にいるようなメニューを味わえると好評でした」

生まれも育ちも葉山。海が見える実家の景色が好きで、いつか自分も葉山で家をもちたいと土地を探し、家族で葉山に移住して16年。海までは徒歩10分、高台のロケーションを生かした開放的なこの家を設計したのは、建築家の阿部勤氏。

「カフェに、先生の設計を取り上げた建築の絵本が置いてあって、素敵だなと思っていました。その絵本を手掛けたプロデューサーのご紹介で、贅沢にも、阿部先生に建てていただくことが叶ったんです」

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緑のトンネルをくぐって玄関へ。大きく育ったカツラの木が涼やかな影をつくる。
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左/庭で採れたハーブを使ったスパークリングウォーター。右/保護猫のくうちゃん(くるみくん♂)。
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特製のキッシュの仕上げには、庭のパセリをたっぷりと刻んで。
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無垢材の床、両面窓と開放感溢れる2階。このスペースを土屋さんはテラスと呼ぶ。手前の古い箪笥は葉山のオシャレリサイクルショップ「桜花園」で購入。奥のガラス付きの棚は家具作家さんにオーダーした、かなりレアなもの。

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テラスから続くバルコニー。窓を開け放てば、室内と外がゆるやかにつながる。ここで夕日を眺めながら一杯、が至福のとき。

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キッチングッズはほとんど、国内外の旅先で見つけたもの。「使った瞬間旅先の想い出が蘇り、同時に旅先で食べたものも一緒に思い出します。料理人として、常に刺激が欲しいのです」

「前へ進むときもリセットするときもどんなときも寄り添って包み込んでくれる、家はパートナーのような存在だと思います」

“外のような中、中のような外”。
土屋さんがまず、建築家の阿部氏に伝えたイメージどおり、パノラマの海を取り込む広く連なる窓、自然光が降り注ぐ天窓、天井を張らずウッディな小屋根を見せたダイニング、テラコッタタイルの床、バルコニーに続く折れ戸のサッシ…。

「どこにいても、光と風、海を感じ、まるで屋外にいるような開放感を味わえる、理想の家が完成しました。とはいえ、当時20代後半だった私は、テラコッタとフローリング、同じ階なのに床材が違う点や、天井や窓に木材を多用している点などがやや気に入らず…(笑)。そんな私に対して、先生はにこやかに “大丈夫。年を重ねるとわかってくるから” と。実際に今、温かみのある素材をミックスしてくださった先生の意図を実感します。子供は大きくなり、自分自身を取り巻く環境も変わるなか、自然と一体化するような温かいデザインに、癒やされています」

1階は庭を楽しむリビングや寝室、2階は海を見渡せるダイニングとキッチン、テラス。3階には江ノ島と富士山も望めるルーフテラスが。

「キッチン・ダイニングスペースは、カフェや料理教室、菓子製造をできるよう考慮して設計していただきました。キッチンにシンクが5つあったり、引き戸で囲える空間をつくったり、業務用の冷蔵庫や食洗機、ガスレンジを導入したりしています」

子供の成長と共に、以前はギャラリーや書斎として使っていた部屋を彼らの個室にしたりなど、用途によって家具のレイアウトもチェンジ。

「年を重ねれば、好みも変わるし使い方も変わります。フレキシブルに対応できるよう設計してくださった阿部先生に感謝しています。“時が家を育ててくれる”と先生はおっしゃっていました。家は、住まう人が前へ進むときも、リセットするときも、どんなときも寄り添って、包み込んでくれるパートナーのような存在だと、今改めて思います」

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左/毎年つくっている新生姜の酢漬け。右/てきぱきと盛り付ける土屋さん。
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左/庭のレモンの木。「長男が産まれた年に記念樹として植えました。今や毎年200個は実るシンボルツリーに。毎年レモンチェッロをつくっています。右/建築を依頼するきっかけとなった阿部勤氏の絵本『中心のある家』。
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左/窓辺のオブジェは、「メキシコ好きな私に阿部先生が紹介してくれたむろまいこさんの作品」。右/保護猫のゆうちゃん(ゆうきくん♂)。
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ルーフテラスからの眺め。江ノ島と、天気がよい日は左手に富士山が見える。初夏は夕日が抜群に美しく、つい見惚れてしまうとか。

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左/陶芸家の姉、つちやまりさんの作品。右/キュートなフォーク&スプーンの壁掛け時計は、15年くらい前「フライングタイガー」で見つけたもの。
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左/土屋さんお手製の「葉山釜揚げひじきと新玉ネギのキッシュ」。しっかりと塩味がきいたおかず系のキッシュ。撮影後いただきましたが、白ワインとの相性抜群でした。

右/ダイニングの水色のハンモックは、新婚旅行で訪れたメキシコで購入。「この中で横になったら最後、うとうとと気持ちよい眠りのなかに…」。後ろのガラス棚は原宿「H.P.DECO」で。「おそらくわが家の家具でいちばん高価です(笑)」


◇土屋さんのHouse DATA
●場所…葉山
●間取り…リビング、ダイニング、キッチン、仕事部屋、ベッドルーム、子供部屋、ゲストルーム、バスルーム
●ここに決めたいちばんの理由…江ノ島と富士山。絶景。

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PHOTO :
長谷川 潤
EDIT :
田中美保