自ら“中途半端な旅人”と称して国内外を歩いた彼女が語る、60年生きてきた現在のこと、そして未来のこと——「鈴木保奈美」という、瑞々しい生き方

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その力強くも澄んだ瞳は、どこか遠くに必ずやある理想郷を見据えているかのよう。メモリアルな年を迎え、自分の現在地をどう考えているのか、今の心模様をうかがいます。

「成熟も青臭さも、どちらも備えている人間でいたいなって」──Honami Suzuki

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仕事において充実した日々を送る一方で、保奈美さんの人生に欠かせない、今やライフワークになっているものがあります。それこそが “旅”。「Precious」連載「Carnet de petite voyageuse 中途半端な旅人は語る」では “ものかき” としての才能をいかんなく発揮し、旅の詳細を綴ってきました。非日常の冒険心や好奇心に加えて、大人のビターな人間関係やご家族のエピソードも。旅を通して豊かな人生観が伝わると共に、ライカでとらえた写真がいきいきとしていて、旅好きの心を刺激するのです。

「これまでいろんな経験を重ねてきたけれど、いや重ねたからこそ、感性はより敏感になって、旅に深みを与えてくれる気がします。あそこにはもう行った、これも見たことある、ではなくて、例えば美術館を訪れて同じ絵画を鑑賞したとしても、若い頃と今とでは知識が違う。その一枚が美術史でどんな位置付けなのか、この画家は何に影響を受けて描いたのか、ここまで完成させるのにどれだけの苦労があったのか…。マルタ島の大聖堂で観たカラバッジョ然り、MoMAで足を止めたワイエス然り、より具体的なイメージが物語として立ち上がるから、ああ、大人っていいものだと思うのです」 

さらに “旅の醍醐味” として愛してやまないのが、訪れた先での不思議なご縁やちょっとしたハプニング。

「友人と佐賀県で器探しの旅をしていたときのこと。『鰻が食べたいね』なんて話していたら、器屋さんの店主がいい店があると電話までしてくれて。『旅はこうでなくちゃ』とルンルン気分で到着すると、現金しか使えないとのこと。のんびりした町を散々駆け回った末、人生初のキャッシングをしたわけですよ。美味なる鰻を味わいながらもドキドキが止まらなくて、旅のご縁に感謝するやらアクシデントに戸惑うやら(笑)。年齢を重ねて偶然を楽しめる余裕が生まれたと思いきや、いくつになってもドギマギあたふた。これだから旅って最高なんですよね」

社会に対する自分の考えを言葉にする年代に入った 

今、世界を見渡すと、旅人として無邪気に語るにはあまりに国際情勢が複雑化しています。保奈美さん自身、家族や知人が海外で暮らしていることもあり、激変する現状に目を凝らしてきました。心の揺らぎを見事に書き切った文章からは、そのもどかしさが十分に伝わってきます。

「ここまで長く人生を歩いてきた今、論点をどこに定めるのかはさておき、自分の考えをしっかり言葉にするべき年代に入ったのではないかと思ったんですよね。ふわふわとした当たり触りのない内容ではなく、一本筋を通した自分なりの何か。それでもちょっと日和っちゃいましたね。いや〜、まだまだだな、自分(笑)」 

葛藤を隠すかのように笑ったのち、真剣な眼差しで「だからこそ、もっともっと人として成熟したい」と語ります。

「どっしりと構えて、物事に堂々と対峙できる “ぶっとさ” が備わるといいな。自分の考えの軸がしっかりとあるからこそ、ときに毒を吐いたりもして。一方、『いくつになっても青臭いね』みたいな部分を残しておきたい気持ちもあります。あぁ、私ってやっぱりどっちつかずで “中途半端”。でも今はそれでいい。それこそが私かなって思うのです」

保奈美さんの “今” がわかる10のQ&A

朝の過ごし方から健康のこと、さらに終の住処のイメージまで。10の質問を投げかけてみると、知性とユーモア溢れる名アンサーが出揃いました。

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Q1:最近の朝のお気に入りのBGMは?

A1:ニュースを流しています。日本の民放局、NHK BSの『ワールドニュース』、『BBCワールドニュース』、テレビ東京の『ワールドポリティクス』など。

Q2:手に入れたいものに対して、猪突猛進型? 戦略家型?

A2:戦略を練って猪突猛進。意識しているわけではないけれど、結果的にそうしているかもしれません。特に舞台に関しては、誰にアプローチすればいいのか、何を準備しておけばいいのかをリサーチして、一気に動きだした記憶があります。

Q3.マイベストムービーは?

A3:『ラブ・アクチュアリー』と『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』。リチャード・カーティス監督が好きなんですね。あと『ビッグ・ウェンズデー』。この監督は構成や俳優の使い方が本当に上手。作品全体に温かいムードが満ちていて、観ているだけで幸せな気持ちに。10代の頃に観たのが『ビッグ・ウェンズデー』。そのかっこよさにしびれました。

Q4:イメージする終の住処は?

A4:好きなものだけが見える場所。美しくないものが見えない場所。
東京の混沌とした街を愛しているという前提で、煩わしい看板や貼り紙が目に入らない場所にいたい。自然溢れる場所でもいいし、それが海外か日本かはまったくわからないけど、きれいな景色だけを見ていたい。

Q5:生成AIは使っている? 直近でどんなことに使った?

A5:ぜ~んぜん使っていません。

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Q6:10年前と今を比べていちばん変わったことは? 変わらないことは?

A6:サプリをとるようになった。サプリの類を苦手としていたのですが、ドラマ共演者の方に教えていただいて、プロテインをとるようになりました。栄養素が体内に足りていなかったようで、その後なんとなく調子がいい気が?します(笑)。

Q7:メンターはいる? どんな人? どんな理由で?

A7:数人の友人に分担してもらっている感じ。ある特定のひとりをメンターにしているわけではなくて、よく考えると「政治経済ならこの人」「読書ならこの人」「トレンドならこの人」などなど、ジャンルごとに信頼できる人がいるかもしれません。

Q8:最近ふと気がついた、自分の意外な特技は?

A8:特技ではなくて不特技ならあります。目薬をさすのが、とてもへた。何滴垂らしても、うまくさせない(笑)。病院が苦手で、薬を飲んだり塗ったりさしたりすることに慣れていないんですね…。

Q9:さて10年後、70歳の自分は何に夢中になっている?

A9:予測できないところがおもしろさかと。

Q10:最後の晩餐は何にする?

A10:お寿司!「今のところ」という条件つきですが、やっぱりお寿司は常に上位。今年の5月に富山でいただいたお寿司も絶品でした。知人に勧められて行ってみたら、その日がべにずわい蟹の最終日だったようで。その季節にその土地でしか食べられないネタを、一期一会のようにいただく贅沢といったら。風土を堪能するとでもいうのでしょうか。いつも「ああ、日本人に生まれてよかった」と思うのです。


観て、感じて、旅をする…「Precious」連載中のフォトエッセイが単行本に!『中途半端な旅人は語る』 鈴木保奈美 著

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『中途半端な旅人は語る』 鈴木保奈美 著 ¥2,420(小学館)

旅をテーマに執筆、撮影を行ってきた連載「Carnet de petite voyageuse 中途半端な旅人は語る」。その20回分を一冊にまとめたフォトエッセイが好評発売中。新たな書き下ろしコラムもあり、本誌未掲載のカットも大充実。帯コメントはプライベートで親交のある小説家・原田マハさん。同時期発売の『わたし、そんなにとんがってましたかね。 獅子座、A型、丙午はめぐる』(中央公論新社)も併せて読めば、保奈美さんを身近に感じられるはず。

 

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

 

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PHOTO :
浅井佳代子
STYLIST :
犬走比佐乃
HAIR MAKE :
福沢京子
MODEL :
鈴木保奈美
EDIT&WRITING :
本庄真穂、喜多容子(Precious)