人生の後半戦を見据えて──40代からの決断と「キャリアの舵取り」

かの有名な中国の思想家・孔子は『論語』にて「四十にして惑はず」と述べたそうですが…、いやいや現代の40代は「不惑」どころか、迷うことばかり。そんな迷える私たちに、ひと筋の光を与えてくれる先輩たちの言葉には、これからを生きるヒントがぎゅっと詰まっています。

無我夢中で走り抜けてきた一周目が一段落した今、これから先の二周目、三周目はどんな未来を描きたいか? 今回はプレシャスキャリア5人の皆さんに、40代で立ち止まり、悩み、考え、動いたリアルリポートをお聞きしました。

【「プレシャスキャリア」5人のリアルレポート】私たちの決断と舵取り

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40代で決断し、大きく舵を切った5人のキャリア女性にきっかけや葛藤、その決断がもたらしたものを聞いてみました。少し先を歩く先輩たちのリアルトークは、私たちに、一歩踏みだす勇気を与えてくれるはずです。

【異動】知識をもっと深めたい、新たな能力を身につけたい。40歳でまったく新しい環境に飛び込んだことで度胸がついた(Aさん・マスコミ国際事業部長・49歳)

29歳で転職し、広告部に配属。39歳で大学院へ。40歳で希望していた国際事業部へ異動。41歳で大学院を卒業した。

「現在の会社に転職して10年が経ち、年々仕事が回しやすくなる一方で、自分のおかれた環境や自分の成長に閉塞感を感じるようになり、会社を離れたところでも通用する学びを得たくて、大学院進学を考えるように。40歳という節目を迎える前に動きだしたかったという思いもありました。純粋に自分の知識の幅を広げるためだったのですが、海外ビジネスの修士号を取り、英語も使ったので、結果的に異動後の仕事に生きることになりました。直感を信じて選んだ結果、点と点が線になったような感覚でした。ただ、仕事後18時から21時まで大学院、帰宅後も深夜まで課題をこなす日々は想像以上にハード。受験前にTOEICを900点まで上げて臨んだのですが、まったく歯が立たず、泣きながら勉強しました」

2年後、MBA-IB を獲得。

「大学院生活のいちばんの恩恵は度胸がついたこと。人前で話すことが苦手なのに、つたない英語でプレゼンし、手を挙げて発言する度胸。資料が完璧でなくても、いい意味でなんとかなると思える度胸。自分を変えるにはコンフォートゾーンから踏みだすことといいますが、あまりにもアンコンフォートゾーンすぎて後悔することも…。でも、この歳で恥ずかしい思いをすることは貴重な経験でした。また、クラスには外国人も在籍、日本人もさまざまな企業から集まっていたので、多様性をリアルに肌で感じる日々。人種はもちろん、どの会社や業界で社会人経験を積むかによって、考え方がこれほど異なってくるのかとカルチャーショックも受けました。これらすべての経験が今の自分に生きていると感じます」

【趣味】40代に入ってピアノを再開。人生がカラフルに、豊かになった。目標は、真っ赤なドレスを着て還暦コンサートを開催すること!(Sさん・編集プロダクション副社長・49歳)

友人に「音楽会をやらない?」と誘われたのを機に、ピアノのレッスンを本格的に再開したのが42歳のとき。

「昔習っていた先生に再び習い始め、お互いの友人・知人を集めて音楽会を主催しました。今思うと、再開して間もないのに欲張ったと思いますが、人と音楽をつくることや人前で弾くことの楽しさを思い出して、すごく興奮したんです。また、“#インスタピアノ同好会” というハッシュタグを見つけて、練習動画を上げてインスタ上で交流したり、オフ会の発表会に参加したりと、ピアノ友達が全国に劇的に増えました。先輩たちが次々と難曲に挑戦していて、歳を重ねるのも楽しい、まだまだチャレンジできると、未来を見せてくれるのもうれしかった。

30代前半は仕事と育児に精一杯で、それはそれで充実していたけれど、どこかで自分が自分でいられる場所、“サードプレイス” を欲していたのかもしれません。30代後半にはパワフルなワーママコミュニティに出入りして刺激を受け、もっと人生を謳歌していい、と思い始めたときに出合ったのがピアノ。同時期に仕事では思いがけず経営側に回ることになったり、コロナ禍を機にパンを焼き始めてインスタにアップしたりと、振り返れば40代はスタートの時期。インスタを見ている仕事関係の方には “ピアノとパンの副社長” と認識され(笑)、アイスブレイクになったりするのもおもしろい。家庭や家族は大事だし、仕事も拠りどころであることは確かですが、趣味があって友人がいて、いくつも軸足があることが、私には精神の安定剤になっている気がします。いろいろな場所をもつことで、仕事も家庭も穏やかな気持ちでハンドリングできる。ベタですが、赤いドレスを着て還暦コンサートをやるのが今の目標です」

【社内起業】新たな道を切り開くことの難しさとおもしろさを経験した激動の40代。定年後のチャレンジも楽しみ!(Kさん・メーカー新規事業部・49歳)

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39歳で社内ベンチャー企業を立ち上げ、紆余曲折ありながらも今年で10年。

「マーケティング部や広告部を経て、33歳のとき新規事業部へ異動。新規事業って聞こえはいいですが、仕事を自分で見つけ、ゼロから立ち上げる茨の道。上層部の要望とはいえ、新規事業が今ほどフューチャーされていない頃で、担当は私ひとり。当時育休明けで子供は1歳になったばかり。周囲の “かわいそう…” という空気も辛く、途方に暮れました。ただ、もともと考えるより先に動くタイプ。起業家の知人に話を聞きまくり、気になったイベントや場所には積極的に顔を出す。動き続けることで、やりたいこと、やるべきこと、できることが見えてきました。

当時の上司の “戦略を立てなくていい。とにかく山を登れ” という言葉も背中を押してくれました。悪戦苦闘しながら、会社の中にいるだけでは見えなかった世界を見て、真の起業家とはどういうものかを知りました。ようやく社内ベンチャーを立ち上げ、事業転換しながらも、今年で10年。“何をやっているかわからない人” から、少しずつ結果を残してきました。社内起業は、社長とはいえあくまで会社員。大企業ゆえに各部署が仕組み化されているなかで、そこからこぼれ落ちる仕事がある、それをすくうことが役割だと気付きました。ファーストペンギンとして企業の枠を広げた自負はある。定年が見えてきた今、次に枠を広げてくれる後輩を育成したい。宝物は、40代に助言と応援をくれた社外の好奇心旺盛&挑戦大好き “わくわくおじさん” たち(笑)。恩返しすべく、定年後の新たな事業を企画中です」

【挑戦】キャリアを捨ててまったく違う世界へ。人生は一度きり。悔いなく生きて楽しみたい。(Mさん・陶芸家・59歳)

30代は、シングルマザーをしながら、ヘア&メイクアップアーティストとして、実母の協力のもと雑誌や広告、ショーなど第一線で活躍。海外ロケほか、ハードな仕事も多くこなした。

「40歳で会社を立ち上げ、軌道にのせたあと、都内に一軒家を購入しました。ところがそのタイミングで東日本大震災が起き、仕事が激減。会社をたたみ、フリーランスとなったと同時に、時間ができたこともあって、ステンドグラスや陶芸の教室に通い始めました。その後、44歳で再婚、出産。海が見える環境で子供を育てたくて葉山に移住しました。仕事を徐々に減らしながら、潮風を感じる海辺の暮らしで、やっと人間に戻れた気がしたんです。それまでの私は時間に追われ、仕事柄常に周囲に気を遣い、いつも体の芯に深い疲れが残っている状態。ママ友をはじめ、ここで暮らす人たちはゆったりと、季節の移ろいや豊かな自然を愛でながら、自分らしく、人生を思いきり楽しんでいるんです。そんな姿に影響を受け、50歳を機に、思いきってヘア&メイクを卒業しました。

そして、趣味でずっと続けていた陶芸の道へ。人生はあっという間です。残りの人生を考えたら、挑戦するなら今しかない、と。もちろん、最初はお金にならなかったけれど、土に触れ、大地を感じながら無心で手を動かす日々が愛おしくて…。人生まだまだ学ぶことだらけです。ひとつドアを閉じたら、別のドアが開く。開かなければ別のドアをつくればいいと感じる毎日です」

【婚活】婚活、結婚、独立、移住。40代は怒涛の転換期!でも40代で「動いて」よかった。40代だからこそ、できたこと。(Tさん・フリーライター・52歳)

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40歳、体調を崩したのを機に、本気で結婚しようと一念発起。結婚相談所に登録し、半年と期間を決めてお見合いを重ね、見事、現在の夫と出会い結婚。翌年には会社を辞めてフリーに、その翌年には海辺の街へ移住した。

「振り返れば、40歳での婚活から始まって、1年ごとに結婚、独立、移住と大きな決断の連続。移住後は土地を買って家を建て、大きな犬も飼って…と家族も増え、天と地がひっくり返ったような転換期でした。それまでは家と会社の往復で、365日24時間仕事漬けの日々。そんな生活も嫌いではなかったけれど、40歳を目前にふっとその先を考えたとき、これでいいのかな…と。そんなとき、大きく体調を崩して “孤独死” が脳裏に浮かび、本気で婚活をしました。やると決めたら短期決戦、即行動。勢いづいた私を誰も止めることができず(笑)、あの頃は、頭で考えるよりも先に動いていた気がします。

結婚も独立も移住も勢い、完全に流れです。体力も気力もギリ、頑張れる40代前半だからこそできたことだと思う。結果として、あのとき一気に動いて本当によかった。今も仕事は忙しいけれど、(愛犬散歩のおかげで)超朝派になり、日々季節を感じ、休日は海に癒やされ、生活にメリハリが出ました。50代の今、毎日が楽しい。歳をとるのも悪くないと思います。ふだんはわりとうじうじと、腰が重い私があれだけ決断しながら前に進めたのは、間髪入れず行動することで “決断スイッチ” がオンになったままだったから…? でもそれくらいのほうがいいのかも。勢いって大事です」

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Getty Images
ILLUSTRATION :
三井ちかこ
EDIT&WRITING :
田中美保、木村 晶(Precious)
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