懐かしのおもちゃ「リカちゃん人形」の 「今」
一度卒業した子供のころの遊びでも、大人になると違った魅力を知って、はまってしまった。そんな経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、Precius.jp読者にとって懐かしいおもちゃ、リカちゃん人形を取り上げます。伺ったのは、東京・日本橋にある「リカちゃんキャッスルのちいさなおみせ」。このお店は「大人のためのドールショップ」をコンセプトに30〜40代のリカちゃんファンの女性が、多く来店しているそう。大人の女性を魅了するリカちゃん人形の魅力とはなんなのでしょうか? その理由を探りました。
リカちゃん愛好歴26年の男性スタッフが勤める「ちいさなおみせ」
「リカちゃんキャッスルのちいさなおみせ」は、タカラトミーとのライセンス契約のもと、福島にある「リカちゃんキャッスル」で製造・販売しているオリジナルのリカちゃんを都内で買える店舗として2014年8月にオープン。他店舗では販売されていない、オリジナルのリカちゃんや洋服などを求めてファンが来店しています。
「取り扱っているリカちゃんとジェニーの人形は、歴代のものを合わせてこれまでに1万種類以上発売しています」とにこやかに応えるのは、スタッフでありデザイナーの広瀬和哉さん。幼いころからリカちゃんの洋服をつくっていたほどの「マニア」で、現在は、リカちゃん人形やリカちゃんの洋服のデザインを手掛けています。
店内には色とりどりの洋服や小物が並び、平日の午後14時過ぎだったこの日も、旅行用のスーツケースを持った女性や、30代ほどの女性がふたりで来店していました。
似ているようで似ていない…?顔立ちに性格がでるのは人形も同じ?
さて、広瀬さんによるとリカちゃんには、髪色や唇の色にバリエーションがあり、さまざまな種類があるそう。リカちゃんフレンドもたくさん登場していて、見分けるのは難しそうですが……。
「リカちゃんの瞳、眉毛、唇には特徴があり、頭の形も違います。そこでリカちゃんフレンドかを見極められるんです。例えばこちらの『あきちゃん』は、リカちゃんと髪型が同じですが、眉の形は全く違います。視線についても、リカちゃんは右を向いているように見えますが、『あきちゃん』は違う方向を向いています」
たしかに、瞳に注目してみると少し違うデザインだとわかります。広瀬さんは、リカちゃんやリカちゃんフレンドには細かい設定があり、性格が想像できるような顔立ちをしているとも言います。
「例えば、あきちゃんは『おっとり』、リボンちゃんは『いたずらっ子』に見えます。人形の顔の特徴によってコーディネートを変えるお客様も多いです。そのなかでリカちゃんは“オールラウンダー”タイプ。今っぽいカジュアルなファッションから、ドレッシーなファッションまでなんでも合わせられるんです」
人の心を映すリカちゃんの不思議な表情
この店で売っているリカちゃんは、一体一体手作業で仕上げられています。そのため、チークの位置や濃さ、瞳の星の大きさなど微妙な違いで個性がでるのだとか。
「同じ仕様のお人形ですが、手作業でつくっているぶん、微妙な表情の変化が生まれます。お客様のなかにはその違いを見比べて、ピンときた子を選ぶ方もいますね」
こういった表情の違いは、「リカちゃんだからこそ」と広瀬さん。
「リカちゃんの表情はとても奥深いんです。悲しいことがあるとリカちゃんの表情も悲しくみえたり、楽しいときやうれしいときは、リカちゃんも幸せそうな顔をしている。これは僕だけではなく、お客様もそうおっしゃいます。そういった不思議な魅力がリカちゃんにはあると思うんです」
リカちゃんも人と同じで「今」を生きている
「リカちゃんキャッスルのちいさなおみせ」の最大の魅力は、豊富な商品。オリジナルの服や小物は、約600点あり、それらを自由に組み合わせられることがファンを虜にしているよう。
「子供のお客様は、『ピンクが好きだから靴も、服も小物も全部ピンク』というようにそろえる方が多いように思うんですが、大人のお客様はバランスを見ながらトータルコーディネートを組むんです。季節感やトータルを大切にした組み合わせは、大人の方ならではの楽しみ方。お正月だったら着物を着せたり、クリスマスだったらファーのついたコートを着せたり。リカちゃんも人と同じで「今」に存在しています。だから、季節を通した人形のコーディネートも楽しめるんです」
リカちゃんのファッションのラインナップのカテゴリーは、多岐に渡ります。そのなかで代表的なカテゴリーは、王道のお姫様、バレリーナのような女の子が憧れる職業、街の歩いている女性が着ているようなリアルクローズです。
「個人的に好きなのは、重ね着タイプのトップスにデニムを合わせるといったシンプルなコーディネートです」と広瀬さん。こういったリアルクローズのラインは、広瀬さんが表参道などを歩いているときに、目に入った女性のファッションを参考にしてデザインへ落としているそう。私たちのファッションと同じで、お人形のファッションにもトレンド感を取り入れることがファンの心を掴むには欠かせないのかもしれません。
手に残る記憶が蘇ってくる
このお店にくる大人のお客様はリカちゃんに触れて子供のころの記憶が一気に呼び戻されたという方が多いそう。遊んだときの記憶は手に残り、その記憶は大人になっても忘れないと広瀬さんは言います。最後に、リカちゃん愛好歴26年になる広瀬さんは、どうして飽きることがなかったのか。率直な疑問を伺いました。
「人形の服をつくり始めたきっかけは、縫い物が好きな母に『お人形が好きなら、何かつくってみたら?』と言われたこと。それがすごく楽しくて。小中高と、学年が上がっても人形の洋服を作り続け、服飾の専門学校に進学しました。
成長と共に友達がおもちゃから卒業しても、僕は洋服づくりを始めたことで、卒業することなくずっとリカちゃんが身近にいて、おもちゃ遊びの枠を超えた感覚が自分にはあったんです。
今は専門学校で人間の服を勉強してきたことを生かし、手の込んだディテールもデザインに取り入れています。細かいデザインは、工場の方から『大変だ』と言われるんですが、やはり細かいところまでこだわったほうがいいものができます。人形のような小さいサイズのものをそこまでつくり込まなくていいとも言われるんですが、僕にとってはむしろ、人の洋服サイズのほうが“でかい”と思っちゃうんです」
さまざまなファッションコーディネートを楽しめ、大人も虜にするリカちゃん。久しぶりに手に取ってみると、年齢を重ねるとともに自分さえ忘れていた子供の頃の記憶が戻ってくるかもしれません。気になった方はお店を訪れ、実際に触れてみてはいかがでしょうか。広瀬さんが笑顔で大人こそはまるリカちゃん人形の魅力を教えてくれますよ。
問い合わせ先
- リカちゃんキャッスルのちいさなおみせ
- 営業時間/12:00〜19:00
- 定休日/月曜
- TEL:03-5614-0959
- 住所/東京都中央区日本橋小網町18-10 SQUAREビルB1
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- PHOTO :
- 河野豊
- WRITING :
- 石水典子
- EDIT :
- 高橋優海(東京通信社)