プロ野球やサッカーのJリーグ、パンパシ水泳、夏の甲子園など、日本では毎日、多くのスポーツ観戦が行われ、盛り上がりを見せています。熱烈なファンならずとも、競技場に足を運んだ経験のある人、これからぜひ観戦したいと考えている人は多いはず。

現地に行けば生観戦ならではの熱狂や興奮、感動を味わえます。ただ観戦ルールを知らなかったり、気分がのぼせあがったりして、つい周囲への配慮がおろそかになり残念な行為に及んでしまう人も少なくありません。応援に訪れたつもりが、かえって選手の迷惑になったり、周囲の観客から白い目で見られたりするような事態は避けたいですよね。

2019年にはラグビーW杯、2020年には東京オリンピックが日本で開催され、普段行き慣れていなくても、スポーツ観戦する機会がさらに増えることは必至。そこでマナー講師の武冨美惠子さんから、球場などでスポーツ観戦するときの、今さら聞けないNGマナーを教わりました。

観客席でスポーツを生観戦するときに気をつけたいNGマナー11選

■1:持ち物ルールを確認せずに現地入りする

行く前に公式サイトの注意事項を確認しよう
行く前に公式サイトの注意事項を確認しよう

不特定多数の人が集まる野球場やスタジアムにおいては、安全を期するために持ち込める私物のルールが定められています。

代表的な持ち込み禁止物としては、ビン・カン類が挙げられますが、そのほかにも危険物だと見なされるもの、勘違いされそうなものが荷物に紛れ込んでいると、入場時の手荷物チェックで足止めを食らう羽目に……。そうなると、自分が嫌な思いをするだけでなく、後方に長蛇の列ができるなど、入場以前から迷惑をかけてしまうおそれがあります。

そのような事態を防ぐためにも、スポーツ観戦では、必ず現地の持ち物ルールを事前に確認するようにしましょう。初めての人はもちろんのこと、何度も観戦経験のある人でも油断は禁物。昨今は年々セキュリティが厳しくなる傾向にあり、ルール変更の可能性も否めないので、事前チェックは必須です。

■2:荷物で場所取りをする

場所取りのルールを守ろう
場所取りのルールを守ろう

指定席であればほぼ問題ないのですが、自由席の場合には場所取りにおいて、いくつか気をつけたいマナーがあります。

「まず、自分が座る席以外に、荷物を置いて無駄なスペースを取らないこと。また、荷物を通路に置くのは危ないですし、通行の邪魔にもなるのでやめましょう。

また、場所取りだけして、長時間、席に戻ってこないのも大迷惑。たとえば、以前、箱根駅伝を観戦した際、一番前のレースがよく見えるポジションに、無人の新聞紙が敷いたままになっていたことがありました。このような状態は、不要なトラブルを引き起こします。

長時間の離席は、他のお客様の観戦の妨げになってしまうのでやめましょう。お手洗いなどで離席する際は、5~10分以内には戻るのが望ましいです」(武冨さん)

ちなみに、指定席でもまったくトラブルがないわけではなく、ごく稀に番号違いの席に座ってしまう人もいるそうです。自分の番号はよく確認のうえ、着席するようにしましょう。

■3:「初対面の観客」の個人情報を聞き出そうとする

同じスポーツ、同じチームのファンだと思えば、初対面の相手でも親近感がわきますよね。現地でのスポーツ観戦では、周りの観客に話しかけてみたくなることもあるでしょう。

そうした観客同士のコミュニケーションにおいて、何か気をつけるべき点はあるのでしょうか?

「現地の観戦では一体感を味わうのも醍醐味です。お互いにまったく知らん顔するより、適度なコミュニケーションを取るほうがいいのではないでしょうか。

たとえば、自由席に座る際には、隣の方に『こんにちは、こちらよろしいでしょうか?』と自分から一言挨拶するほうが、気持ちよく観戦できると思います。また、一時離席する際にも、『10分ほどで戻ります』と声をかけておくとよいでしょう。

ただ、初対面の相手ですから、むやみに距離を詰めすぎないことも大切です。たとえば、『今日はどちらからいらっしゃったんですか?』くらいの質問はOKですが、相手の回答に対し、『えーっ、●●からいらっしゃったんですか? ●●のどちらへん!?』など、さらに追及するのは避けたほうがいいでしょう」(武冨さん)

現地の観客とはお互いに一期一会の関係として、心地のいい距離感を保ちたいですね。

■4:対戦相手の悪口を言う

現地観戦で悪口は厳禁
現地観戦で悪口は厳禁

スポーツというのは勝負の世界ですから、自分の応援する選手やチームのライバルが憎たらしく感じてしまうことはあるでしょう。ただ、現地において悪口は絶対に控えるべき!

「野球やサッカーのように、応援するチームごとに座る区画がはっきり決まっている場合はまだしも、そういう区別がない場合、悪口はトラブルの元です。

どうせ日本語は通じないから大丈夫だろうと、外国人の観客のすぐそばで選手の悪口をあけすけに話していたら、実は、日本語の堪能な方がいて、悪口の内容が筒抜けだった……なんてケースもあります。

また、たとえ言葉は通じなくても、悪口を言っているとその雰囲気は何となく伝わってしまうもの。互いに敬意を払って気持ちよく観戦するために、選手やチームの悪口は控えましょう」(武冨さん)

たとえ自国の選手ではなくても、すばらしいプレーには拍手や賛辞を送れるような心の余裕をもって観戦したいものですね。

■5:静かにするときと、盛り上がるときのメリハリがない

選手の集中力を乱すのはNG
選手の集中力を乱すのはNG

現地での観戦というと、声援を送って盛り上がる……というイメージもありますが、騒ぐだけが応援ではありません。必要に応じて静寂を保つメリハリが大事だといいます。

「静かにしなければならないのは、たとえば、陸上競技におけるスタートや、卓球のサーブの瞬間などです。

選手たちは誰しもその試合のために、日々、血のにじむような練習を積み重ねてきています。ここ一番の集中力を発揮しなければならないタイミングには、応援する側は音を立てるのを極力控えて、静かに見守ることが大切です。

そのためにも、携帯電話は必ずマナーモードにしておきましょう。万が一、緊迫したシチュエーションで着信音が鳴り響き、選手の集中力を乱すようなことにつながっては大変です」(武冨さん)

現地観戦では、静寂と熱狂のメリハリもぜひ楽しみましょう。

■6:傘をさす

会場によっては、試合中の傘の使用を明確に禁止しているところもあります。また、明文の規定がなくても、傘は観戦の妨害になったり、先端の露先が近くの観客に引っかかったりする危険性が大。突然の雨に見舞われた場合は傘ではなく、雨合羽やポンチョなどで対処しましょう。

■7:なりふりかまわずタオルを振り回す

タオル回しをやるときは周囲に誰もいないところで
タオル回しをやるときは周囲に誰もいないところで

タオル回しは応援パフォーマンスのひとつではありますが、周囲をまったくはばからず、乱暴に振り回すのはNG! また、スポーツ観戦のなかでも、甲子園の高校野球においては、選手の集中を乱すおそれがあるとして、タオル回しは自粛すべしだという声が出ています。

タオル回しは、それが応援パフォーマンスとして許容されている環境限定で、周囲の観客との距離感に配慮しつつ、行うようにしましょう。

■8: 数百円のものを買うのに1万円札を渡す

野球場の観客席といえば、ビールやおつまみの売り子さんも風物詩。売り子のアルバイトでは、売り上げに応じた歩合制を採用していることも多いようなので、選手だけでなく売り子さんも応援すべくたくさん買ってあげたいですね。

売り子さんから商品を買う際は、なるべくお釣りが出ないように支払いをするのが親切です。たとえば、ビール1杯数百円のために1万円札を渡すと、売り子さんに手間をかけてしまうおそれが……。野球場で売り子さんから購入する予定なら、ある程度の小銭を準備しておきましょう。

■9:ドリンクを飲み残したまま放置する

ゴミは必ずゴミ箱に入れるように
ゴミは必ずゴミ箱に入れるように

スポーツ競技場の各席では、ドリンクホルダーが設置されていることがあります。ただ、このドリンクホルダーはあくまで一時置き用。飲みかけをドリンクホルダーに長らく放置しないようにしましょう。ずっと置いたままにしていると、何かの拍子にうっかり荷物や手足をぶつけてしまうおそれがあります。万が一ドリンクを倒してしまうと大惨事です。

■10:フラッシュを使用して写真撮影する

撮影マナーを守ろう
撮影マナーを守ろう

写真撮影に関しては、大会や会場ごとにルールが定められています。事前にチェックしておき、また現地でも“撮影禁止”の表示等がないか、常にアンテナを張っておきましょう。たとえ写真撮影が許可されていても、フラッシュの使用はプレーの妨害になるおそれがあるのでNGです。また、撮影した選手の写真は軽率にネット上にアップしないこと。無断で公開すると、選手の肖像権の問題に発展するおそれがあります。

■11:過度にプレッシャーをかけるような声援を送る

応援がアダになることも?
応援がアダになることも?

応援しているチームや選手が不甲斐ないプレーをしたら、ファンだからこそ厳しい言葉を発したくなることはあるでしょう。もちろん、相手がプロスポーツ選手であれば、ファンからの愛あるダメ出しが発奮材料になることもあるはず。

しかし、アマチュアの未成年者へ、となれば話は別。たとえば、甲子園球児がチャンスで三振した際に「あぁ~何やってんのよ!?」とあからさまに落胆するような声を上げたり、逆に、9回2アウト2ストライクまで追い込んだ際に「あと一球」コールを浴びせたり、過度にプレッシャーをかけるのは禁物です。

優勢であれ劣勢であれ、アマチュアの未成年選手に対しては、大人として温かい声援を送り続けることに徹しましょう。

最後に、武冨さんはスポーツ観戦のマナーについてこう話します。

「現地でのスポーツ観戦では、自分が応援するチームや国の代表だという心構えで臨みましょう。野次を飛ばしたり、自分が出したゴミを放置したり、ファンのマナーが悪いと、応援しているチームや国自体の評価を下げることになってしまいます。

また、現地観戦では、選手とスタッフ、そして観客が一体となって会場を盛り上げるものです。ですから、どうか大差で負けているような場合でも、最後まで選手の可能性を信じて精一杯エールを送りましょう。

球場やスポーツセンターでの応援は、会場の雰囲気や試合の醍醐味を味わうことができます。会場でマナーを守りつつ、大いに楽しみましょう!」

観客がマナーを守って応援してこそ、選手もすばらしいパフォーマンスを発揮でき、その試合や大会がより感動的なものとなるはず。これから現地で観戦、応援する予定のある人は、ぜひ今回ご紹介したマナーを押さえておきましょう。

武冨美惠子さん
マナー講師/姿勢教育アドバイザー
(たけとみ みえこ)姿勢と立ち居振る舞い・マナーを伝える「ライフサポーターDre-am」主宰。シドニーオリンピック等国際大会での応援経験により、プロトコールマナーの必要を感じ学ぶ。2014年金融機関退職後、ビジネスマナー+暮らしのマナーを伝えるため起業。美しい姿勢や立ち居振る舞いを基本にお箸の使い方等の暮らしのマナーレッスンや各種団体でセミナーを実施。接遇研修及び報・連・相研修等を企業で実施。山陽新聞リビングガイド「知っておきたい冠婚葬祭・上手なお付き合いのためのマナー講座」監修。マイベストプロ岡山登録会員。
ライフサポーターDre-am
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
中田綾美