花火大会や縁日など、ワクワクするイベントが多く楽しい夏の夜。一方で、熱帯夜の寝苦しさは体力低下にも響く困りものです。過度な暑さはエアコンに頼らざるを得ませんが、それ以外にも心地よい眠りにつくためにできることはあるはず。
そこで今回は、快眠プランナーの塚島早紀子さんに、寝苦しい残暑の夜を快適に過ごすための9つのコツと、おすすめの快眠グッズ3選を伺いました。
なぜ、夏場は寝苦しい?ポイントは部屋の温度と眠りの仕組み
そもそも、なぜ夏場は寝つきが悪かったり熟睡感が得られなかったりと睡眠の質が下がりがちなのでしょうか? 塚島さんによると、暑さの影響で室温調整と体温調整が難しいことが原因なのだそうです。
外気温が高く、心地よい室温を保つのが難しい
睡眠に適した気温は26~28℃、湿度は50%前後なのだそう。しかし、夏場は夜になっても30℃に達することが多く、快適な温度を保つのが難しいのが実際のところ。そのため、暑くなったときや窓からの風や空調で急に冷えたときなどに途中で目が覚めてしまい、睡眠の質も下がってしまいやすくなります。
眠気の条件は「深部体温の低下」
人間の体温は1日のうち、約1℃の幅で上下します。活発に活動しているときは体温が高く、休息状態になると低くなります。実は、この体温の変動が心地よく眠りにつき睡眠の質を高めるポイント。身体の内部の体温(深部体温)が下がると人は眠気を感じるのです。
「赤ちゃんは眠くなると手が温かくなりますよね。それは、血液を循環させることで身体の内部の熱を皮膚の表面から逃がしているからなんです」(塚島さん)
夏場は室温も湿度も高いため、手足から熱が放出されにくくなります。そのため深部体温が下がらず、なかなか眠りにつけなくなるそう。
また塚島さんは、1日の体温の上下には生活リズムも関係しているといいます。
「健康な人の体温は通常21時くらいから下がって、24時から6時くらいまでの間が低くなります。でも体内時計がくるってしまうと、このリズムではなくなってしまいます」(塚島さん)
熱帯夜でもぐっすり眠れる9つのコツ
では、夏場でも自然で健康的なリズムに沿って、質の高い睡眠を得るにはどうしたらいいのでしょうか? 快眠のコツを伺いました。
■1:夕食は就寝3時間前までに!なるべく消化にいいメニューを
食べ物を消化するには食べてから3時間はかかるといわれています。消化しきる前に眠りにつくと、翌朝胃もたれしてしまうことも。夕食は就寝3時間前には食べ終わるようにしましょう。
また、夕食のメニューは消化にいいものがベター。例えば、うどんや卵を使ったお料理、煮込み料理などがおすすめだそうです。食べ過ぎてしまわないように、ゆっくりよく噛んで食べましょう。
■2:就寝前のアルコールとカフェインは控える
食事中に会話が弾み心地よくなるお酒。なかには、お酒を飲むとウトウトするので眠れない夜には一杯という方もいるのでは? しかし、アルコールは深い眠りを妨げてしまうので、寝る前は控えたいところ。また、もしお酒を飲む場合は傍らにチェイサーを用意し、水分もしっかり摂るように心がけましょう。
さらに、コーヒー、紅茶、緑茶、ココアなどのカフェインを含む飲み物は就寝4~5時間前までに。それ以降に水分を摂る場合はルイボスティーや麦茶などカフェインが含まれずリラックスできる飲み物がおすすめです。
■3:軽い運動を就寝の1時間半前にする
塚島さんによると、就寝に向けて体温をスムーズに下げるには、ベッドに入る約1時間半前に軽い運動をして一旦体温を上げるといいそう。例えば、21時にベッドに入り22時には眠っていたいと思ったら、19時から19時半の間に運動をして体温を上げます。仕事帰りの軽いランニングやヨガなどもおすすめだそうです。
■4:就寝1時間前にぬるめのお風呂でしっかりリラックス
お風呂は身体を温めるだけでなく精神的なリラックスをもたらしてくれるので、質の高い眠りには必須事項ともいえます。お風呂に入るタイミングは食後30分から就寝前の1時間前がベストです。お湯の温度は38℃ぐらいと低めに設定し、ゆっくりと湯舟に浸かりましょう。そうすることで、リラックスして自律神経が整えられます。
お好きな香りの入浴剤を使うも、よりリラックスできるのでおすすめです。夏場はスッキリとする柑橘系やミントなどのクールタイプもサッパリして気持ちいいですね。
「お風呂に入れないときや一度入ったけれど湯冷めしてしまったときは、シャワーや足湯でくるぶしを温めましょう。あるいはレッグウォーマーなどで足首を温めるのも、体温が上がるのでいいですよ」(塚島さん)
■5:入浴後のスマートフォンやテレビは避ける
お風呂上がりのゆったりした時間には、ついついスマートフォンやテレビを見てしまいがち。けれど、それらの電子画面からはブルーライトが発せられているので要注意です。ブルーライトの光で刺激を受けると、脳はその時間を「朝」と判断し、睡眠を司るホルモンの分泌が抑制され目が冴えてきてしまいます。リラックスして副交感神経を優位にした後は、スマートフォンやテレビなどのブルーライトの光は見ないようにしましょう。
また、激しい運動も同様に交感神経を刺激してしまいます。就寝前の運動は軽いストレッチ程度までにしましょう。
「よく『スマホもダメ、運動も避けてとなると、入浴後は何をやればいいですか?』と聞かれることがあります。人によって何がリラックスできるかは異なりますが、睡眠前にはリラックスする音楽を聴く、あるいは読書をするなどをおすすめしています。例えば『18時から夕食、19時から軽く運動。20時に入浴し、21時すぎにはリラックスできるマッサージなどをしてベッドへ』なんてメニューはいかがでしょうか? また、いつもは夜にしているスマートフォンの確認も、目が覚めるので朝に変えてみましょう。『朝スマホ』の方がおすすめです」(塚島さん)
■6:エアコンは27℃〜28℃、タイマーでオフする場合は起床1時間前にセット
熱帯夜には欠かせないエアコン。エアコンをつけて寝る場合は温度設定に気をつけましょう。冷やしすぎると血管が収縮してしまい、朝起きたときだるくなってしまいます。
眠るのに快適な温度は26℃~28℃、湿度は40%~50%。ただし、感じ方は人によっても異なります。寝室の広さに合わせて、日中の冷房の設定温度に+1℃~2℃を目安にしましょう。
「エアコンをつけっぱなしで寝るのは抵抗があると3時ごろタイマーで切れるようにしている方も多いようですが、それだと夜中に目が覚めてその後寝られなくなってしまうのでおすすめしません。タイマーをセットするなら、起きる1時間前に切れるようにすると、スッキリ起きられますよ」(塚島さん)
また、エアコンとサーキュレーターや扇風機を組み合わせて使うと、室温が下がり過ぎず、体感は涼しく感じるそう。ただし、風を直接身体に当ててしまうと冷やしすぎてしまい、むくみの原因にもなります。エアコンや扇風機の風は壁に当てることで、部屋全体に空気が循環しやすくなり、身体の冷やしすぎを防げます。
■7:ひんやり涼しい寝具を活用する
エアコンの使用はできるだけ控えたいという方におすすめなのが、夏場でも眠りやすくしてくれる寝具です。ベッドや布団の上に敷くと身体と布団の間に空気の流れが生まれサラサラひんやりとするクールパッドを使えば、気持ちよく眠れます。
クールパッドにはさまざまな素材やダニ防止といった機能を持つものもあるので、好みのものを探してみましょう。また、塚島さんによると枕に保冷剤を置いて後頭部の上の方を冷やすと効果的なのだそうです。
■8:睡眠時の明かりは脂肪代謝低下のもと!電気は消灯する
夜帰宅したとき、部屋の電気をすべてつけることはありませんか? 実は、この際の光も目が冴えてしまう原因になるそう。
明るい光を浴びると自然な眠りを誘うホルモン「メラトニン」の分泌が抑制されてしまいます。そのため、夜に明るい光を浴びてしまうと眠りにつくのが難しくなり、翌朝の目覚めの質にも影響します。
一般的なリビングの照明は500ルクス以上という家庭が多く、睡眠物質のメラトニンの分泌を妨げるといわれています。リビングの照明は、200~300ルクス程度のほのぐらい光に抑えたいところ。深く眠りたい時は、寝室を真っ暗にするのが一番だそうです。真っ暗だと心細いという方は、寝室のドアやカーテンを2cmほど開けて光を調節するか、うっすら人の顔が見える暖色系のフットライトにしましょう。
「ちなみに豆電球は10ルクスあります。そのくらいの明かりでも深い眠りにつけず脂肪代謝が低下し、肥満リスクを増やすという研究結果もあるんですよ。美容・健康のためにも、電気は消して眠りましょう」(塚島さん)
■9:お昼寝をする場合は、14時前後に15分程度
昼寝をすると夜眠れなくなると思っていませんか? 実は、計画的な昼寝は夜の快眠につながるのだそうです。
「先ほどの体温のグラフをみていただくと13時ごろから15時の間に少し体温が下がっていますよね。そのあたり、つまり14時前後に15分~20分くらいお昼寝するのがおすすめです。そうすると、大脳を休めて夕方の眠気を軽減する効果があるんです」(塚島さん)
日中の疲れを昼寝で少し回復させることで、夕方から夜までの間にスッキリと集中して活動できるようになります。靴を脱ぎベルトなど締め付けているものも緩め、仰向けになり目を閉じて休むだけでもOK。適度に疲労が解消されるので、夜の睡眠もより深く快適なものになります。
ただし寝すぎてしまうと逆に夜眠れなくなってしまうので、目覚ましタイマーをかけて寝るといいそう。塚島さんによると慣れてくると15分くらいでスッキリと目覚められるそうです。特に夕方だるくて眠くなってしまう方には昼寝の習慣がおすすめです。
【 熱帯夜でもぐっすり眠れる9つのコツ 】
■1:夕食は就寝3時間前!なるべく消化にいいメニューを
■2:就寝前のアルコールとカフェインは控える
■3:軽い運動を就寝の1時間半前にする
■4:就寝1時間前にぬるめのお風呂でしっかりリラックス
■5:入浴後のスマートフォンやテレビは避ける
■6:エアコンは27℃〜28℃、タイマーでオフする場合は起床1時間前にセット
■7:ひんやり涼しい寝具を活用する
■8:睡眠時の明かりは脂肪代謝低下のもと!電気は消灯する
■9:お昼寝をする場合は、14時前後に15分程度
少しリッチなひと工夫で心地よさをアップする!おすすめの快眠グッズ3選
9つのコツを押さえて行動や環境を整えたら、あとは寝るだけ! そこでさらに少しリッチな気分にしたら、より心地よい眠りにつけそうですよね。例えば、ヒーリングミュージックを流して気持ちを整え、アロマスプレーやアロマディフューザーなどの香りでリラックスするのも心地よい入眠に効果的です。また、パジャマは肌触りが良く身体を締め付けないもので、通気性の良いガーゼ素材などがおすすめ。
「眠りにつくための自分なりの儀式のような感覚で、ちょっとした工夫を毎日の習慣にすると良いですね」(塚島さん)
そこで、塚島さんにおすすめの快眠グッズを伺いました。
■1:Cuore(クオーレ)LEDキャンドル
就寝前のやわらかな灯りとしておすすめなのが、息を吹きかけて、点灯・消灯ができるLEDキャンドル。細かく不規則に点滅するLEDライトが本物のキャンドルのようです。火を使わないので、万一倒してしまっても安心です。
問い合わせ先
- DI CLASSE
- TEL:03-3876-6610
- 営業時間/平日10:00〜18:00(12:00〜13:00を除く)
- 直営店 lux di calsse
- 営業時間/13:00~18:00 (火~金 )、11:00~19:00(土)
- 定休日/日曜、月曜、祝日
TEL:03-3876-6634 - 住所/東京都台東区入谷1-10-11
■2:スリープシープ エアー&ピローミスト
快眠セラピスト監修の心地よい眠りをもたらす香りがするミスト。枕やシーツなどの寝具に直接吹きかけるだけでなく、室内の空間用エアミストとしてもて使えます。香りは、幸福感に包まれるフローラルの「スイートドリーム」、清々しい木々の香りで深呼吸ができる「ディープブレス」、ラベンダーベースの落ち着いた香りで思考がスッキリする「クールダウン」の3種。好きな香りを選べるのも楽しいですね。
問い合わせ先
- アットアロマ
- TEL:03-6453-4231
- 営業時間/平日9:00〜18:00
■3:マシュマロガーゼ(R) 快眠パジャマ
軽くやわらかな肌触りと優れた保温性、通気性、吸湿・吸水性で就寝中の衣服内の環境を快適な状態に保てる「マシュマロガーゼ(R)」のパジャマです。マシュマロガーゼ(R)は、信州大学繊維学部との共同研究により着心地を検証した綿100%の素材。さらに、デザインも締め付けの少ないゆったりとしたスタイルに仕上げるなど、快適な眠りに必要な性能をバランスよく備えています。
問い合わせ先
- UCHINO
- TEL:03-3661-7501(代表)
- 営業時間/平日9:30〜17:00
寝苦しい夜を過ごすと次の日が辛い……と、そこで初めて睡眠の大切さを実感することも多いもの。けれど、対策は辛さを実感する前から行いたいですよね。
日中の疲れやダメージから回復するためにとても大切な睡眠時間と睡眠の質。「こうしなければいけない」ではなく、「眠りにつくのが楽しい、心地よい!」と思えるような生活習慣にすることで、身体も心も健康が保てます。そして、質の高い眠りは美容にもいいはず。
今晩から身の回りを気持ちよく整えて、素敵な夢を見られますように……。
Webサイト
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 加藤良子
- EDIT :
- 廣瀬 翼(東京通信社)