住宅の購入の際に親や祖父母から贈与をしてもらうと、最大2500万円まで非課税に!
住宅購入にかかる費用は、子どもの教育費、老後資金と並ぶ「人生の3大支出」のひとつ。マイホームの価格は数千万円以上になるのが一般的なので、多くの人が住宅ローンを組んで購入します。
住宅ローンを無理なく返済していくためには、自己資金を十分に用意し、計画的な返済プランを立てることに加えて、税制優遇や補助金を上手に使うことも大切です。
前回はチヅさん(38歳)とサクタロウさん(40歳)夫婦のケースで、「住宅取得等資金の贈与税の非課税」を利用することで、住宅購入にかかる負担を抑える方法をファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さんにアドバイスしていただきました。
【前編】2500万円まで贈与税がタダになる!家を買うときの新制度を知っていますか?
「住宅取得等資金の贈与税の非課税」は、マイホームを購入したり、リフォームしたりするために、両親や祖父母から資金の贈与を受けた場合は、一定額まで贈与税が非課税になる制度です。
非課税限度額は購入時期によって異なりますが、たとえば、消費税が8%の物件は、2016年1月1日~2020年3月31日までは、700万円まで非課税になります。
ただし、2019年10月以降、消費税率は10%に引き上げられることが決められています。予定通りに消費税が10%に引き上げられた場合は、この特例の非課税枠も拡大されることになっており、2019年4月1日~2020年3月31日までは、最大2500万円まで非課税になるのです(一般住宅の場合)。
消費税率が8%の間に契約したほうが、購入価格自体はお得ですが、両親などから贈与を受けられる人は、2019年4月以降にマイホーム購入するのも一案です。
チヅさん夫婦の場合、長男のリョウタくん(4歳)が小学校に入学するのが、2020年4月。それまでにマイホームを購入すればよいので、契約時期はサクタロウさんの仕事が一段落する、2019年秋を予定しています。予定通りに消費税率が10%に引き上げられれば、サクタロウさんは最大2500万円まで非課税で贈与を受けられます。
購入予定の一戸建ては物件価格7000万円で、夫婦で貯めた自己資金は1000万円です。これに加えて、サクタロウさんの両親からいただいた2500万円を上乗せすると、頭金を3500万円、用意できることになります。
住宅ローンの借入額は、夫婦の自己資金だけだと6000万円借りなければいけませんが、2500万円の贈与を受けられれば3500万円に圧縮できるので、返済総額は3044万円も安くなるのです(※みずほ銀行の「フラット35」、返済期間25年、借入金利1.14%[全期間固定・元利均等返済]、2018年7月2日現在)。
無理なく住宅ローンを返済していくためには、できるだけたくさん頭金を用意したいもの。経済的に余裕のある両親や祖父母がいるなら、相続対策も兼ねて、マイホーム資金の贈与の相談をしてみるのも一案です。
とはいえ、贈与を受けられる人ばかりではありません。頭金も、住宅ローンも、すべて自分たちの力で支払わなければいけない人もいます。『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)の著者、ファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さんは、「住宅を購入したり、リフォームしたりする人に対する税制優遇や補助金は、まだまだあります」といいます。
そこで、本記事では、贈与税の特例以外に住宅購入時にもらえるお金について、引き続き、井戸さんにアドバイスしてもらいます。
「すまい給付金」「住宅ローン控除」…家を買うときに「国や自治体からもらえるお金」を総チェック!
長年、日本では「個人の住宅購入を国が後押し」する政策が取られてきました。新たに住宅を購入すると、同時に家具や家電製品を新調したりするので、建築業界だけではなく、産業界全体への経済波及効果がある、といわれているからです。
そのため、マイホームを購入したり、リフォームしたりする人に対しては、「住宅取得等資金の贈与税の非課税」のほかにも、「住宅借入金等特別控除」「すまい給付金」「認定住宅新築等特別税額控除」「生垣緑化助成」など、さまざまな優遇制度や給付金が設けられています。この、住宅購入時に使えるお得な制度を、ひとつひとつ見ていきましょう。
■1:住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
住宅ローン控除は、住宅ローンを組んでマイホームの新築や購入、増改築(リフォーム)をした人に対する税制優遇で、年末の住宅ローン残高の1%が所得税から払い戻されます。一般住宅の場合、1年間の控除額の上限は40万円。控除を受けられる期間は最長10年間で、最大400万円の控除が受けられます。
「控除を受けている期間は、所得税がゼロになるケースも多くみられます。確定申告すると、すでに納めた所得税から、住宅ローン控除による軽減分が払い戻される仕組みになっているので、対象になる人は、忘れずに申告してくださいね。1年目に自分で申告すると、2年目以降は、勤務先の年末調整で手続きが完了します」(井戸さん)
控除の内容は、マイホームの購入、増改築などをした時期によって異なります。以下は、2014年1月1日~2021年12月31日までに購入、増改築した人の住宅ローン控除の内容です。
○控除を受けるための要件
・新築または取得の日から6か月以内に居住し、住宅ローン控除の適用を受ける各年の12月31日までは引き続き住んでいること
・合計所得金額が3000万円以下
・購入した物件の床面積が50㎡以上で、床面積の2分の1以上の部分が自分の居住のためのもの
・住宅ローンの返済期間が10年以上
・2021年12月31日までに居住すること
○控除の内容
・控除期間は最長10年間
・1年間の控除額の上限は、一般住宅の場合は40万円(構造の優れた認定住宅は50万円)
耐震性があったり、省エネ性能に優れていたりする「認定住宅」は控除枠が大きく設定されており、年間50万円まで控除を受けられます。
このように控除枠は年間40万円(認定住宅は50万円)となっていますが、控除によって戻ってくるお金は、自分が納めた所得税が上限です。たとえ住宅ローンの年末残高が3000万円あっても、所得税を20万円しか納めていないと、戻ってくるのは20万円です。
ただし、このように所得税から控除しきれなかった場合は、翌年の住民税から差し引かれます(最高13万6500円)。
■2:すまい給付金
すまい給付金は、消費税率の引き上げによる住宅購入の負担を緩和するために、2014年4月からスタートした制度です。
「住宅ローン減税は、すでに納めた所得税などからお金を還付する仕組みです。収入が低く、納税額が少ないと、住宅ローン残高が高くても軽減効果は限定的になります。そこで、所得が一定額以下の人に対してお金を給付することで、消費税の増税後も、住宅の買い控えを起こさせないために導入されたのが『すまい給付金』です。収入の少ない人ほど、もらえる給付金が多くなります」(井戸さん)
○給付金をもらうための要件
・自ら暮らすためのマイホームを新築したり、購入したりする人
・購入した物件の床面積が50㎡以上
・返済期間5年以上の住宅ローンを組んだか、ローンを組まずに購入した50歳以上の人
・収入が一定額以下の人。収入の目安は、消費税率8%時は510万円以下、10%時は775万円以下(妻が専業主婦、中学生以下の子どもが2人の場合の夫の収入。10%時には、収入額の目安が650万円以下(都道府県民税の所得割額が13.3万円以下)の要件が追加されます)。
・2021年12月31日までに居住すること
○給付金の内容
・消費税8%時は、収入に応じて10万~30万円
・消費税10%時は、収入に応じて10万~50万円
消費税10%時は最大50万円の給付金を受け取れるので、要件に当てはまる人は、新しい家に入居後、「すまい給付金事務局」に申請しましょう。郵送でも受け付けてもらえます。ただし、中古住宅を個人から購入したりして、消費税がかかっていない場合は適用されないので、注意を。
■3:認定住宅新築等特別税額控除(投資型減税)
認定住宅新築等特別税額控除は、耐久性のある「認定長期優良住宅」や省エネ性能に優れた「認定低炭素住宅」を、自己資金のみで取得した場合に受けられる税制優遇です。
住宅ローンを組んでマイホームを購入した人は、「住宅ローン控除」を受けられますが、こちらはローンを組まずに、自己資金だけで住宅取得をした人向けの制度です。
確定申告すると、認定基準をクリアするためにかかった割り増し費用の10%が、住宅購入した年の所得税額から控除されます。
○控除を受けるための要件
・認定長期優良住宅または認定低炭素住宅を新築するか、建築後使用されたことのない新築住宅を購入
・新築、または取得の日から、6カ月以内に居住すること
・税額控除を受ける年の合計所得金額が3000万円以下
・床面積50㎡以上で、床面積の2分の1以上の部分が自分の居住のためのもの
・居住した年とその前後2年ずつの合計5年間に、マイホームを譲渡した場合の「居住用財産の譲渡所得の特別控除」などを利用していないこと
○控除の内容
・控除期間は、居住した年のみ。ただし、その年の所得税から控除しきれなかった場合は、翌年の所得税から控除可能。
・控除額は、認定住宅の基準に適合するためにかかった割り増し費用の10%(100円未満は切り捨て)。
・2014年4月1日~2021年12月31日までに居住した場合、割り増し費用の限度額は650万円。控除額は、その10%なので、最大65万円の税額控除が受けられます。
「住宅ローン控除と同様に、還付を受けられるのは、納めた所得税の範囲内です。控除額の方が、すでに納めた所得税額よりも多く、控除しきれなかった場合は、翌年の所得税からも控除できます。ただし、繰越できるのは1年のみです。また、住宅ローン控除とは異なり、住民税からの減税はありません」(井戸さん)
■4:生垣緑化助成
コンクリートやアスファルトに囲まれている地域は、エアコンの室外機などの熱がこもって、ヒートアイランド現象が起こりがちです。また、ブロック塀は、大地震が起こると倒壊して、人が下敷きなるなどの被害も想定されます。
そこで、一戸建てなどに住んでいる人が、道路に面しているブロック塀を取り除いて生垣や植栽帯をつくったり、シンボルツリーを植えたりする場合に、その一部を助成してくれる市区町村があります。
「チヅさんのように、一戸建て購入予定で植物が好きという人は、ぜひとも利用してほしい制度です。助成内容は市区町村によって異なるので、ホームページなどで確認してみてください」(井戸さん)
東京都世田谷区の生垣緑化助成(生垣・花壇・シンボルツリー、屋上・壁面緑化助成の場合)を例として、見ていきましょう。
○東京都世田谷区の生垣緑化助成の利用要件
・これから新しい生垣等をつくるか、既存のブロック塀を取り壊して生垣等をつくる
・造成する生垣等が、幅4m以上の道路に接している。または道路の中心線から2mセットバックした場所に生垣等を造成する
・生垣の高さが、0.6m以上あり、葉の触れ合う程度に列植されること
など。
○東京都世田谷区の生垣緑化助成の給付内容
・生垣助成:低木(樹高0.6m以上1.0m未満)1mあたり、6000円まで
・花壇助成:植ます縁石1mあたり、2500円まで
・シンボルツリー助成:中木(樹高1.5m以上2.5m未満)1本あたり、1万2000円まで
生垣緑化助成は、事前に申請しないと給付を受けられません。利用要件をよく調べて、資材の購入や工事の発注前に市区町村に問い合わせるようにしましょう。
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今回、ご紹介した4つの制度のほかにも、「相続時精算課税制度」「住宅リフォーム助成」「耐震診断費用助成・耐震補強工事費助成」「特定増改築等住宅借入金等特別控除」「住宅特定改修特別税額控除」「住宅耐震改修特別控除」など、住宅購入時やリフォーム時に、国や自治体からもらえるお金はけっこうあります。
ここ数年は、耐震性に優れている住宅、省エネ性能に優れている住宅には、より多くの税制優遇や給付金が用意されています。ただし、いずれも自分で申請しないと、利用することはできません。でも、ちょっとの手間で、住宅購入にかかる費用はかなり抑えられるのです。
自分が購入する住宅に利用できる制度があったら、使わない手はありません。「そろそろマイホームを」と思ったら、国や自治体の制度を調べて、上手に活用してください。
- TEXT :
- 早川幸子さん フリーランスライター