【目次】

仕事には真面目に取り組んでいるのに、作業が遅く残業ばかりになっていませんか? 一生懸命働いていても結果がついてこないと、苛立ちを感じたり自分の能力のなさに落ち込んだりしてしまいがちですよね。人事・戦略コンサルタントの松本利明さんによると、作業が遅くて残業してしまうような真面目な頑張り屋タイプの人は、作業の段取りが悪い傾向があるそうです。

問題なのは、それでも本人は深夜まで残業して努力をしているつもりなので、心の中では褒めてもらいたがっていること。しかしこの場合、上司は余計な仕事が増えたり足を引っ張られたりするので、あまり評価しないのです。それでは、一体どうすれば改善できるのでしょうか? 以下から松本さんに教えていただいた、効率の悪い人が無意識でやってしまっているNG習慣を紹介します。心当たりのあるポイントから日々の習慣を見直して、仕事の効率アップを目指しましょう。

仕事ができる人は絶対にやらない効率の悪いNG習慣9選

■1:1回で完璧に仕上げようとするのはNG

細かい確認を怠らないように!
細かい確認を怠らないように!

企画の提案や納品物などは、クオリティーを上げればやり直しになる可能性が下がるので、できる限りベストな状態まで仕上げたいところ。しかし、松本さんは「仕事ができない人こそ、完璧に仕上げて1回で通そうとする傾向がある」と言います。

「仕事で大事なことは完璧に仕上げることより、通すことです。より確実に通すには、小まめな確認をすることが大事。5分の確認を積み重ねることで、せっかくの成果物をミーティングでひっくり返される心配がなくなります。このとき、1回の確認事項は最大3つまでにしましょう。それ以上多いと確認のためにまとまった時間が必要になるので、後回しにされてしまうことがあるからです」(松本さん)

仮に苦手な上司が相手だと、なるべく接触頻度を減らしたいと思うもの。それでも「分からないまま進めるやつだ」と思われたり、大幅なやり直しになったりしないよう、細かい確認を怠らないのが無難ですね。

■2:メールやSNSなどのプッシュ通知をつけっぱなし&即レスするのはNG

仕事中でも、メールやSNSの更新といった外部からの連絡は気になりますよね。早めに確認してすぐ返信したいと考えるあまり、これらの通知機能をONにしておく人は多いはず。しかし「連絡が来るたびに確認・対応すると集中力が削がれます」と松本さん。

「メールは即レス、メールソフトやSNSなどの更新時の連絡機能をONにしている人は仕事が遅い傾向があります。人は集中しているときに作業を中断すると、その効率が良い状態がほぼゼロに。一旦集中力が切れると、再び効率が良い状態になるまで時間がかかります。さらに、ちら見をするとミスが増えるという統計データもあるそうです。

仕事の速い人は、メールやSNS、メッセンジャーなどの通知はすべてOFFにしています。1日2~3回程度、まとめてメール処理する時間を取れば周りは困りません。おまけに、メール処理に集中できるので効率があがります」(松本さん)

スマホの着信音やバイブレーター機能も、集中力を欠く要因のひとつ。スマホには急ぎの電話がかかってくることもありますが、メールやスマホゲーム、SNSなどのアプリのバイブ機能は切ってしまいましょう。

■3:机周りやデスクトップのアイコンを片付けないのはNG

汚い机で仕事するとタイムロスが発生する
汚い机で仕事するとタイムロスが発生する

いつか使うかもしれないと思うと物が捨てられない。という考えは、片付けられない人の典型的なパターン。デスク周りや鞄の中、PCのデスクトップ画面などが散らかっていると、いちいち探し物に時間を割く羽目になり、その都度タイムロスが生じてしまいます。

「仕事の遅い人は片付けるとき、“残す基準”で考えますが、これが危険なのです。たとえば、ビジネスの資料で残す必要があるものは、法律・契約関連、クライアントへ納品した資料や備品、言質を含んだメールや議事録、納期・量・価格といった仕事の発注・受注に関する書類など。それ以外の資料は、9割捨てる気持ちで処分しましょう。鞄やロッカーなどは、容量の半分から多くても7割までをキープすれば、必要な物をスムーズに取り出せるはずです」(松本さん)

仕事が速い人は、他人が見ても書類やデータの場所が問題なくわかるくらいシンプルに整理しています。机周りやPCのデスクトップ画面が散らかってしまいがちな人は、「言った・言わない」に関わるような重要な書類以外は捨てる、といった気持ちで資料を捨ててみてはいかがでしょうか。案外なくても困らない物がたくさんあったことに気が付くでしょう。

■4:内省の論点が不明確で自己嫌悪に陥りがちになるのはNG

仕事でよりよい成果を出すための「PDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)」という言葉を聞いたことがあるでしょう。PDCAの4段階を循環的に繰り返して、仕事の改善や効率化を図るというものです。この考えに倣い、自分の仕事ぶりを振り返るのはよいことですが、扱いを誤ると逆効果になることも……。

「PDCAを行うときのカギは“C”と言われますが、実はここに盲点があります。仕事の遅い人はしっかり内省をするものの、“自分はいつも同じ失敗を繰り返していてダメだ”と落ち込み、自己嫌悪に陥ってしまいがち。セルフイメージが低くなると、仕事に対するモチベーションも下がります。

仕事の速い人は内省するとき、論点を明確にしてから行います。“いつも仕事のある局面でミスが出る”“誰と仕事をすると必ず同じ過ちが起きる”など、論点に沿って内省することで共通項が見え、モチベーションを落とさず行動の修正が可能になるのです」(松本さん)

内省の論点として、以下の手順を参考にするとよいでしょう。

1.どの局面のときに時間がとられやすいか?(When:いつ)
2.どんな場面でプランとのズレが発生するか?(Where:どこで)
3.誰がトラブルを発生しやすいか?(Who:誰が)
4.何をしているときに想定外が起こるか?(What:何を)
5.どの方法が一番効果的だったのか?(How:どうする)

ポイントはWhy(なぜ?)から考え始めないこと。「なぜ?」から入ると、反省に繋がりやすくなります。上記の1~5で共通項を見つけてから理由を探るのが、仕事の速い人の内省方法のコツです。

■5:洞察を上司に確認しないのはNG

事実、洞察、打ち手を確認すること
事実、洞察、打ち手を確認すること

上司から報連相(報告・連絡・相談)の徹底を叩き込まれた人は多いはず。自分ではきちんと報連相をしたつもりなのに、上司からは「ちゃんと報連相できていない」と叱られたという経験はありませんか?

「報連相はマネジメントの基本であり、部下に報連相を行うように指導する上司は多いですが、ここに罠があります。仕事が速い人は、報連相ではなく“ソラ・アメ・カサ”で上司と確認し、相手や部下に指示をしているのです。

ソラ・アメ・カサとは、事実、洞察、打ち手の3つを簡単に表現したもの。すなわち、事実を伝えるとき(ソラ)に、どうなりそうか(アメ)、ゆえにどんな行動をすればよいか(カサ)。この3つをセットにして1行で伝えれば、認識のズレがなく、正しく上司に判断してもらえるでしょう。報連相はすべて事実(ソラ)なので、上司は“こうなりそうだ”と洞察(アメ)して、打ち手(カサ)を指示します。

このとき、洞察は上司の頭の中だけにあり、打ち手を言われても上司と部下の間で洞察のズレが生じてしまい、結果失敗してしまう。そこで、仕事の速い人は洞察を上司に確認して、一発で成果をおさめるのです」(松本さん)

上司と部下では物事を見る視点の高さ・広さが異なるため、アメ(洞察)はズレるもの。仕事が速い人は、アメを確認することで、ひとつ上の視点を手に入れているのですね。

■6:ひとりで仕事を抱え込むのはNG

自分が入院しても回る状態をつくっておく
自分が入院しても回る状態をつくっておく

どんなに忙しくても、自分の仕事を誰かに仕事を頼むのは申し訳ない、任せると逆に手間がかかる……という職場の悩みは、業界を問わずよく聞きますよね。しかし、自分ひとりで仕事を抱え込むあまり、残業が当たり前になっていませんか?

「仕事が遅い人は仕事を溜め込む傾向があります。得意な仕事も苦手な仕事も、誰かに振るのは悪いことと思っていて、ついつい抱え込んでしまうのです。一方、仕事が速い人の場合、本当にその人でなければいけない仕事以外はすべて振り先を用意しています。

仕事の振り方にはコツがあります。例えば、細かい事務処理が苦手なら、それが得意な人を探して振る。得意な作業ならラクして速く結果が出るので、振られた方も成果があがり、お互い得なのです。さらに仕事が速い人は、得意な仕事も振ります。ノウハウをツールやマニュアルにまとめ、他の誰でもできるように可視化することで、自分の代わりに作業をこなしてくれる分身をつくるのです」(松本さん)

このやり方なら仕事を振られた方にもメリットがあるので、遠慮する必要はありません。目安は、自分が明日入院しても周りで引き継げるような状態です。

■7:頼まれ事を断ると嫌われると思うのはNG

相手に気を遣うあまり、頼まれるとNOと言えない人は少なからずいるものです。このタイプの人は「誰かに仕事を振るのも苦手」と松本さんは言います。

「仕事を抱え込んでしまう人は、誰かに仕事を振るのが苦手なだけでなく、伝え方も下手。“私のことは嫌いにならないでください”というのが日本人にありがちなメンタリティーなので、頼まれ事を断ると嫌われると思っているからです。仕事の依頼を上手に断るコツは、まず“わかりました”と受け止めること。いきなり断ると相手は気分を悪くするので、依頼事項はわかったと受け止めて“Yes、But”で対応しましょう。次にいつならできそうか、という納期を確認します。

このとき、もしほかの人を紹介する場合はひと手間加えます。“●●さんが適任ですよ”と人名を伝えるだけだと、相手はたらい回しにされたと怒りを覚えます。“●●さんが適任なので私からも一報しておきますね”など一言添えれば、逆によくしてもらえたと感謝してくれるはずです」(松本さん)

上司からの依頼を断るときは、現在の仕事の込み具合を伝えましょう。その上で別の仕事と優先度を入れ替えたり、誰かに手伝ってもらったり、といった判断をしてもらうのがベター。部下の仕事が立て込んでいると上司がわかれば、振り先が変わることもあります。

■8:自分に小さなご褒美を用意するのはNG

ご褒美は集中力を下げやすい
ご褒美は集中力を下げやすい

この作業が終わったら好きなケーキを食べよう、などと自分への小さなご褒美を用意すると仕事がはかどると聞いたことはありませんか? 松本さんによると、実はこれもパフォーマンスが落ちる要因なのだとか。

「自分への小さなご褒美を用意することは一見正しいようですが、かえって仕事が遅くなります。本当にご褒美と思えるものだと、ふとした瞬間にチラチラ頭に浮かび、集中力が落ちてしまうからです。仕事が速い人は、小さなご褒美を用意しません。

もしケーキを食べたいなら先に食べて“よし、仕事に集中しよう!”と頭を切り替えます。こうして余計なノイズを頭の中から追い出してしまうのです。毎日の小さなご褒美ではなく“マネジャーに昇進したら欲しかったペン”“部長になったら高級ブランドの腕時計”など、大きなタイミングで自分にご褒美を与えています」(松本さん)

要所要所で小さなご褒美を用意しておくことは、先述したスマホのバイブ機能やメール通知のように集中力を欠く原因になってしまいます。どうしても小さなご褒美が欲しいときは、作業の前に済ませるのがよいでしょう。

■9:作業をこなすばかりで仕事を行わないのはNG

まず、会社にとっての「作業」と「仕事」の違いを説明します。「作業」とは、日々のマニュアル化された業務を指します。すでに作業のゴールは設定されており、それに沿って行うものとなります。一方、「仕事」とは、会社の利益のために考えて答えを導き出し行うことを言います。例えば、今までの業務内容をまとめることは「作業」であり、プレゼンを勝ち抜くために資料を用意することは「仕事」となります。

会社で働いていく中では、作業を行なう時間も、仕事に取り組む時間もどちらも必要です。どちらが欠けても会社はまわりません。しかし、与えられた作業をいくら丁寧に行っていたとしても、いつまで経っても自身の成長は望めないのです。今任されている業務が上司から頼まれたもの、つまりすでに作業のゴールが設定されたものであっても、「作業」を「仕事」に変えることは可能です。今の作業を「もっと効率良くできないか」「同じ業務に取り組む仲間のためにこの資料を共有したほうがいいのでは」など、「自分の考え」をプラスすることで「作業」は「仕事」に変えることができます。効率や会社への貢献などを「作業」にプラスして、「仕事」に取り組むことをぜひ習慣化してみてください。

最後に、努力してもなかなか結果がついてこない人へのアドバイスを、松本さんからいただきました。

「自分なりに努力しているのに結果がついてこない人は、力の入れ所を間違えています。オセロに勝つためには四隅をおさえる、というのと同じで、その仕事でうまくいくポイントがわかれば結果は出ます。対策として、その仕事をうまくやっている人に“うまくやる人と普通の人の違いはなんですか?”と聞いてみましょう。優秀な人は、他人と差がつくポイントをよく知っているからです」(松本さん)

もし、知らず知らずのうちにやってしまっているNG習慣に心当たりがあったら、本記事を参考に改善してみましょう。少しずつでも変化すれば、きっと上手に仕事をこなせる人になれるはずです。

松本利明さん
人事・戦略コンサルタント
(まつもと としあき)複数の大手外資系コンサルティングファームのプリンシパル(部長級)を経て現職。事業開発や人材開発の課題といったコンサルティングに24年以上従事し、外資系・日系大手企業から中堅企業まで600社以上を支援してきた。近著に“5秒で伝えるための頭の整理術”(宝島社)などがある。
公式サイト
この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
2022.11.4 更新
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
上原純
TAGS: