どんな業種でも、仕事を上手にこなして上司に認められるには、社内での連携が重要ですよね。上司や部下との関係がうまくいかないと、まずまずの成果を出したとしてもなかなか昇給や昇格に結びつかないもの。

人事・戦略コンサルタントの松本利明さんは、昇給・昇格が遅い人によく見られる傾向として、次のような要素を挙げています。自己評価が極端に高いか低い、他人を落として自分を上げようとする、主語がいつも私、自分の資質が把握できていない……など。

以下から、職場で思うような評価が得られない、なかなか出世できない人が無意識的にやってしまっているダメな習慣を紹介していきます。日ごろの仕事ぶりを振り返り、できるところから改善していけば、職場で今よりも良い評価を得られるはずですよ。

評価が高い人は絶対にやらない昇給を遠ざけるNG習慣6選

■1:納品物を完璧に仕上げようとするのはNG

質より目的に沿ったものを出すように
質より目的に沿ったものを出すように

学校のテストで100点満点を目指すように、仕事で提出する書類や資料は、やり直しにならないようにできる限り品質を上げて一発OKを狙いたいところ。ですが、松本さんによると「仕事で評価されない人は納期ギリギリまで品質を上げることに注力してしまう」のだとか。

「一方、評価される人は納期・品質・用途といった、相手(依頼者)の期待値を最初に確認します。作業の前提を間違えたまま進めると確実にやり直しになるからです。『部長会議で発表する資料を全部つくって欲しいのか』『考えを整理するためのたたき台が欲しいのか』など、まずは仕事の目的やゴールを依頼者に確認するようにしましょう」(松本さん)

評価を上げるためには、相手の期待値をちょっと上回るのがポイント。具体的には、以下の2点を押さえるようにしましょう。

・納期よりちょっと早く出す

・100点満点中60点で出して相手に突っ込ませる

「締め切り直前までアウトプットが出てこないと、依頼者は不安を感じます。そのため納期より少し早く対応するのがベター。そうすれば仮にやり直しが発生しても、納期までにリカバリーできます。

もうひとつのポイントは、60点で出して相手に突っ込ませること。仕事は依頼者が正解を持っています。議論を重ねた結果、方向性が変わることもあるので、たとえば依頼内容が調査・分析なら速報、パワポや書類であればたたき台まで仕上げて提出し、やり直しのリスクを減らしましょう。初めは60点の仕上がりでも70点、80点……とブラッシュアップしていくことで、依頼者はあなたに信頼感と安心感を持ちます。一発ホームランではなく、確実に出塁するほうが評価されるのです」(松本さん)

最初から100点満点を狙うのではなく、60点まで仕上げた段階で確認してもらいましょう。

■2:自分ひとりで作業を完結させるのはNG

最後まで責任を持って仕事に取り組むのは素晴らしいことです。しかし、責任感があることと、仕事を抱え込むことは、まったく別物。たとえば、経費精算の作業は誰かと連携しながら進めるように、自分ひとりで完結する作業は限りなく少ないものです。

「トラブル時こそ、その人の器が試されます。責任感を持って最後まで逃げずに物事にあたる姿勢は称賛されるかもしれませんが、トラブルが発生したとき、自分で抱え込んで処理しようとすると評価されません。ネガティブなことほど、早く上司に連絡しましょう」(松本さん)

トラブル時の状況を関係者と共有する際は、ソラ・アメ・カサで整理し、優先度を決めて伝えることが大事なのだとか。

「評価される人は、まず今起きている状況の全体像を掴みます。ソラ(事実)で状況を把握し、アメ(洞察)で『どうなりそうか?』を予測したら、その上でカサ(打ち手)を一覧にするのです。どんな細かいことでもヌケモレがあっては大変なので全部洗い出すことが重要。関連がある項目を把握すれば、影響範囲もわかります。ここまでくれば優先度も簡単につけられるでしょう。関係者に伝えるのはそれからです。

アメ(洞察)を共有すると周りが安心します。部分最適を積み上げても全体のトラブルが収まるとは限りません。まず全体像を示し、今は何合目まで来ていて、これからの打ち手によって、いつまでにどれくらいリカバリーできそうかが共有できれば、あとは粛々と解決に向かっていくでしょう」(松本さん)

トラブル時は、ひとりで慌てて対処するのではなく、まず状況を整理し、優先度を決めて関係者に共有することで、職場内での信頼を得られます。上記のように丁寧に対応すれば、ピンチもチャンスに変えられるはずです。

■3:相手を論破したがるのはNG

共通の目的を意識しよう
共通の目的を意識しよう

徹底的に理論武装し、何事にも理詰めで対処する人は周りにいませんか? いくら正論とはいえ、ロジックだけの物言いはあまり印象が良くないもの。それはプライベートでもビジネスシーンでも同じことです。

「評価されない人は、自分なりの正論を崩せません。相手が『うん』というまで繰り返し説得にかかります。しかしながら、どんなに論理的・客観的に正しくても、ビジネスでは相手の主観(優先順と判断基準)から見て正しくないと伝わりません」(松本さん)

安い冷蔵庫が欲しいお客様に対して、店員が性能の良さを伝えても買ってもらえないように、こちらの主張を伝える前に、相手の優先順と判断基準を聞くことが大切ですね。また、自分の意見や提案を通すために相手を徹底的に論破することも評価されません。

「組織の中はどちらかが一方的に悪いということはないので、論破しても相手は納得せず、最悪の場合、組織内で敵をつくってしまいます。評価される人は、ひとつ上の視点から共通の敵を探します。たとえば営業と製造の対立なら、お客様に喜んでもらうには、という視点に切り替えるのです。こうすると対立先を味方につけて議論することができます」(松本さん)

それでも議論が白熱しそうになったときは「そもそもなんですが、我々の共通の目的は……」などと、そもそも論を持ち出すのがコツです。

■4:しょっちゅう文句や言い訳を口にするのはNG

物事が自分の思うようにいかなかったとき、「まだ本気を出していないだけ」「誰々のせいで」などと言い訳する人は、案外ビジネスシーンでも少なくありませんよね。文句や言い訳も、やはり評価を下げてしまう要因のひとつ。

「職場で評価されない人は、自己評価が高いか低いかのどちらか。チャンスがないことを、上司を含め周りのせいにします。これでは実際に能力が高く優秀でも評価はされません。逆に評価される人は、自分が何をすれば相手に感謝されるかを心得ています。一言で言うと、どんな『ありがとう』なら相手から楽に引き出せて、喜んでもらえるかを知っているのです。

たとえば、同じ事務の仕事でも『仕事が早い』『正確』『気が利いている』など、ありがとうの声はさまざまです。自分に向いていない仕事は他の人に振り、『この仕事なら●●さん』というように、ありがとうと言われる仕事が自分に集まるようにできればベストです。ちなみに周りの人はウソを見抜くので、無理なキャラ設定はおすすめしません」(松本さん)

文句や言い訳は自分の評価を下げるだけ。職場で周囲の人たちから喜ばれ、感謝されるような言動を心掛けましょう。

■5:コンプレックスを隠すのはNG

短所は長所にもなりえる
短所は長所にもなりえる

誰しも大なり小なりコンプレックスを抱えているものですが、できることなら周りの人に自分のコンプレックスを知られたくないですよね。ところが、松本さんは「実は、評価される人は完璧な存在ではなく、コンプレックスをうまく魅力にしているのです」と言います。

「コンプレックスを隠し、他人を妬む人は評価が低くなる傾向があります。しかし同じ仕事ができるなら、コンプレックスの塊といった卑屈な人より、魅力的な人の方が評価は高くなりがちです。コンプレックスは良い意味で捉え、魅力に変換してしまいましょう」(松本さん)

たとえば、太っているというコンプレックスは「やさしそう」「癒し系」といったポジティブな捉え方もできます。「明確なビジョンがない」というのは、裏を返せば「柔軟性があり、なんでも素直に受け入れられる」ということ。

大人になってから自分の人格を変えるのは至難の業です。コンプレックスと思える要素はひた隠しにするのではなく、ポジティブに置き換えて肯定できれば、より魅力的な人になれるかもしれませんね。

■6:自己流を貫こうとするのはNG

自分ルールに縛られる人は損しやすい
自分ルールに縛られる人は損しやすい

日常生活において、決まった時間に決まった行為をするというルーティンを持っている人は少なくないでしょう。起床時間や朝の行動が決まっている人もいるかもしれません。しかし、職場での仕事の進め方においては、注意が必要なこともあるようです。

「評価されない人は、仕事の進め方を含めて明確なポリシーを持っていて、それを崩そうとしません。『自分の良さがわからないなら、わからないでいい』という態度では、職場で孤立するだけです。

あくまでも評価は相手が下すもの。ですが、実力は絶対値で測りにくいのも事実です。そこで評価される人の場合、周りの人に『仕事ができそう。仕事を頼みたい』と思わせる行動をとります。『実力がありそう』と思われるためには、繰り返し結果を出して評価を堅実なものにしていくことです」(松本さん)

とはいえ「仕事ができそう」と思われるには、どうすればよいのでしょうか。松本さんにそのコツを教えていただきました。できるものから取り入れてみてはいかがでしょうか。

(1)真っ先に発言する

日本人は人前で恥をかくのを嫌うシャイな国民です。これを逆手に取って、会議をはじめとした場で最初に発言するだけで、周りは「できる人だ」と認識するようになるでしょう。

(2)姿勢を正してハッキリとした大きい声を出す

優秀なリーダーで猫背の人はいないものです。背筋を伸ばし、堂々と大きな声で話をすれば、自信があるように見えます。

(3)一番深くて長いお辞儀をする

周りから尊敬される人は誰よりも腰が低く丁寧です。挨拶をするときは深くて長いお辞儀が好ましいでしょう。謝罪をする際も、先方が間違っている、部下がミスをした、など自分に非がなくても素直に頭を下げられるのが、尊敬される人物の特徴です。

(4)リアクションが早い

優秀な人はお礼状のリアクションやメールの返信が早い傾向があります。リアクションが早いと、「仕事が早くて優秀な人」という印象を与えます。

(5)朝に強い

優秀で仕事が早い人ほど朝の時間を有効に使っています。仕事の横槍が入らず、脳が疲れていない朝に、考え事や集中が必要な作業を割り当てましょう。早起きすると昼間に眠くなるという人は、隙を見て15分程度の仮眠をとるのがおすすめです。

職場での評価が思うように上がらない原因は、実は無意識でやってしまっていたNG習慣にあるのかもしれません。ドキッとした人はぜひ本記事の対策を参考に改善して、自分を認めてくれる人を増やしていきましょう。

松本利明さん
人事・戦略コンサルタント
(まつもと としあき)複数の大手外資系コンサルティングファームのプリンシパル(部長級)を経て現職。事業開発や人材開発の課題といったコンサルティングに24年以上従事し、外資系・日系大手企業から中堅企業まで600社以上を支援してきた。近著に『5秒で伝えるための頭の整理術』(宝島社)などがある。
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この記事の執筆者
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WRITING :
上原 純
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