部下や後輩に依頼をするとき、つい上から目線だと思わせるような言葉遣いや、「やっといてね」などと一方的な言い方をしていませんか? 何気ない発言が、思わぬトラブルの火種になることもあります。なるべく快く対応してもらいたいですよね。
そこで今回は、話し方インストラクターの櫻井 弘さんから、急な頼みごとでも相手に気持ちよく「イエス」と言わせる言い換え言葉を教えていただきました。
櫻井さんによると依頼の際は3つの原則があり、「相手に特別感を感じてもらう言葉」「相手の自尊感情を守ってあげる言葉」「承認欲求を満たす言葉」を使うといいそうです。では、ケース別に、NG言葉とその言い換えを見ていきましょう。
相手が快く頼みごとを引き受けてくれる「魔法の言い換え言葉」7選
■1:「今から会議に参加してくれない?」
忙しい時期に緊急会議が招集されることがありますよね。そんな際に「今から会議に参加してくれない?」と、なかば強制的に言ってしまいがちです。
他にもNG例としては、「忙しいのはわかるけど、それはみんな同じだから会議を優先するように!」なども、一方的な言い方で相手に反発されてしまいます。では、どのように言い換えるのが正解なのでしょうか?
【魔法の言い換え言葉】
(1)「あなたのアイディアがどうしても欲しいから、今回は出席してもらえない?」
(2)「みんなあなたの意見に期待しているから、今から会議に参加してくれない?」
櫻井さん曰く、「強制的や一方的な言葉というのは、どうしても反発を買います。そこで、相手に対して、『特別感をアピールする』、『相手の自尊感情を守る』、『承認欲求を満たす』のいずれかに訴える言葉を使うことで、気持ちよく相手のイエスが引き出せるのです」とのこと。
確かに「あなたの意見がぜひ聞きたい」と言われれば、忙しい最中の会議でも「よし、参加するか」という気になりますよね。ぜひ、参考にしてください。
■2:「これ代わりにやっておいてくれない?」
打ち合わせをダブルブッキングしてしまったり、書類の提出期限がいくつも重なったりして、「誰かに仕事の代行を依頼しなければ」ということも起こります。そんなときに「これ代わりにやっておいてくれない?」なんて頼んでも、相手は嫌な顔をするだけ。一体どう頼むと、スムーズに引き受けてもらえるのでしょうか?
【魔法の言い換え言葉】
(1)「●●さんにしか相談できないことなのだけど、~をお願いできませんか?」
(2)「他ならぬ〇〇さんに、この仕事を代わりにやってもらえると助かります」
櫻井さんは、「これらの言葉からは、誰でもいいから頼んでいるのではなく、『あなただからこそ、お願いできる』という、相手への信頼感が伝わります。相手の承認欲求も満たされるため、気持ちよくイエスと言ってくれるのです」と言います。
「頼りにされているんだ」とわかれば、頼まれた方は「よし、力になろう」と思うもの。相手への信頼感をうまく言葉で表現するようにしましょう。
■3:「あとこの仕事もお願いできる?」
仕事量を増やしてもらう依頼は、日常茶飯事ですよね。そんな際に「あと、これもお願い」などと軽々しく一方的に依頼していませんか? こうした際には、どんな言葉が「魔法の言葉」になるのでしょうか?
【魔法の言い換え言葉】
(1)「担当を増やしてもらいたいのですが、A社、B社、C社のどれなら担当してみたいと思う?」
(2)「あと、得意分野だと思うので、これもやってほしいのですが」
「1の言葉の場合は、単に『新たにA社の担当をお願いしますね』と一方的に言っても、『え、もう手一杯ですよ』と反発されます。ですが3択など、相手に仕事の選択権を与えてあげることで、『自分が関心の持てる相手(もしくは仕事)を選べるんだ』という前向きな意欲が引き出せます。
また、2の言葉は、相手の得意分野や専門性など評価点を伝えることで、相手は自分に依頼された理由が明確になり、気持ちよくイエスが言えるようになります」(櫻井さん)
このように、仕事量を増やしてもらう依頼の場合は、「選択式にして選んでもらう」「できれば、相手の得意分野の仕事を振るようにする」というふたつのポイントを使うといいそうです。
■4:「急ぎでこれやっておいてくれない?」
みんなそれぞれに仕事を抱えています。そんな状況でも急ぎの仕事は発生するもの。そんな際、「急ぎでこれやっておいてくれない?」と、ぶっきらぼうに割り込んでいませんか? スピーディーな仕事を依頼する際には、それなりの言い方があります。
【魔法の言い換え言葉】
(1)「不躾なお願いで恐縮ですが、他ならぬ○○さん!●時までにこの仕事をお願いできますか?」
(2)「不躾なお願いで恐縮ですが、〇〇さんのスキルならスピーディーに処理できるだろうから、●時までにこの仕事をお願いできますか?」
「不躾とは、礼を欠くことや無作法を意味します。上司がここまで丁寧にお願いすれば、相手もNOとは言いにくくなります。急ぎの場合は、相手の機嫌を損ねている時間はありませんので、申し訳ないというニュアンスをこのような言葉を使って、冒頭からしっかりと伝えましょう。
また、『何時まで』というリミットも明確に伝え、緊急度を理解してもらい、協力してもらうようにしましょう。もし相手のスキルが生かせる仕事なら、『あなたなら早くやってくれるから』という特別感を指摘してあげればいいでしょうね。
急ぎの仕事を依頼する際、絶対にNGな言葉は『暇なんでしょ』です。いかに相手が暇そうに見えても、仕事の合間に少しリラックスしているだけかもしれません。この言葉を使うとカチンと来てしまいますので、使わないように心がけましょう」(櫻井さん)
急ぎの場合、つい「どうせ暇でしょ?」などと言ってしまいがち。でも、ひとたび相手の自尊感情を傷つけてしまうと、それを修正する時間が必要です。依頼の際の原則のひとつである、「相手の自尊感情を守る」を忘れないようにしましょう。
■5:「今日残ってくれない?」
「急な残業を依頼しなきゃ」ということも管理者ならよくあること。そんな際に使える魔法の言葉なんてあるのでしょうか?
【魔法の言い換え言葉】
(1)「今残業すれば、後で3連休できるから、そっちが得だと思わない?」
(2)「厚かましいお願いで申し訳ないけど、●●さんにやってもらうとスピーディーで助かるから、残業お願いできますか?」
「相手が嫌な顔をしそうな依頼の場合、相手のメリットを強調することで、イエスを引き出せる場合があります。今日残業してしまえば、後でこんなメリットがあるよ、という形でお願いしてみてください。
また、言い出しの最初は『厚かましい』などのへりくだった言葉を使い、『いきなり一方的な依頼だな』という反発を避けるのが得策です。また、あなたがいれば早く終わって助かるという特別感も与えましょう」(櫻井さん)
残業の依頼は相手のプライベートタイムにもかかわりますので、相手の予定の重要度もしっかりと確認してあげてから依頼するのが望ましいそうです。
■6:「忘年会(新年会)の幹事をしてくれない?」
そろそろ忘年会&新年会の季節が近づいてきました。毎年、「誰に頼もうかな?」なんて頭を悩ませていませんか? そんな際に使える魔法の言い換え言葉をお伝えしましょう。
【魔法の言い換え言葉】
(1)「社内きってのグルメである●●さん、楽しい忘年会(新年会)のために、ぜひ、お力添えを!」
(2)「他ならぬあなたの感性で、忘年会(新年会)を盛り上げてくれませんか?」
「依頼の際、『~してくれない?』と否定語での依頼をしがちですが、これだと『いえ、できません』と相手からも断られやすいのです。そこで『お力添えお願いできる?』と肯定表現にすれば、『できない』と言いにくくなります。
また、大勢の中からひとりを選んで何かを依頼する場合、イエスと言ってくれるいちばんの条件は『選ばれた理由の提示』です。加えて『お力添え』のような、丁寧な依頼言葉や、『他ならぬ』などの特別感を与える言葉で、気持ちを前向きにしてもらいます。
いつもグルメ情報をSNSにアップしている人や、宴会を盛り上げる感性をもっている人たちに、上記のような依頼をすれば、きっと笑顔でイエスと答えてくれるでしょう」(櫻井さん)
丁寧に依頼する際は「お力添え」の他にも、「伏して・他ならぬ・無理を承知で・ご尽力」などが魔法の言葉として活躍してくれるそうです。
■7:「パーティーのスピーチお願いできない?」
忘年会&新年会や会社のイベント、パーティーなどでは、スピーチがつきもの。そんな大役の依頼であっても、相手からスムーズなイエスを引き出せる魔法の言い換え言葉があるそうです。
【魔法の言い換え言葉】
(1)「プレゼンでのスピーチ力が素晴らしいので、ぜひ●●さんに、このパーティーでもその実力を発揮して欲しいのですが」
(2)「●●さんの結婚式でのスピーチ、すごく感動したから、今度もぜひ、スピーチをお願いしたいのですが」
櫻井さん曰く、「大役を依頼する場合は、相手にもそれなりの準備や覚悟が必要です。その場合はやはり『スキルや実績を評価する』ことで、相手への信頼を示し、同時に相手の承認欲求を満たしてあげる言葉がベストです」とのこと。
相手に「自分ならできる」と思わせる要素を提示して、信頼を示すこと。ただし、プレッシャーにならないよう「失敗するなよ」などとは冗談でも言ってはいけないそうです。
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以上、オフィスライフで日常的に使える魔法の言い換え言葉でした。繰り返しになりますが、依頼する際に忘れてはいけないのは「相手に特別感を感じてもらう言葉」「相手の自尊感情を守ってあげる言葉」「承認欲求を満たす言葉」。この3つを意識して、相手から気持ちよくイエスを引き出していきましょう。
公式サイト
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 町田 光