「サフラン」という言葉を聞くと、パエリアやサフランライスを思い出す方が多いのではないでしょうか? 黄色く色づいたご飯はとても美しく、食欲を刺激します。しかし、自宅でサフランを利用することは、それほど多くはないかもしれません。
そんなサフランを使いこなすことができれば、食卓にきっと華を添えてくれるはず。ぜひサフランの特徴や入手方法、料理への使い方などの基本事項を学んでおきましょう。
今回は、スペイン・ラテン料理研究家の丸山久美さんにサフランの特徴や選び方、料理への使い方と共に、上級料理も教えていただきました。
料理上級者になれる!香辛料「サフラン」の使い方をマスターしよう
そもそもサフランとは?
サフランは、アヤメ科の植物で、学名を「Crocus sativus」といいます。クロッカスの一種で、秋に咲く花です。料理に使われているサフランは、その花の3本の花柱を抜き取って乾燥させたものです。
サフランは細いひも状で、長さは1.5~3.5cmほど。暗黄赤色~赤褐色をしています。
料理では、色付けや香り付けとして、パエリア、リゾット、ブイヤベースのほか、サフランライスなどに使われています。
サフランの成分と特徴は?
またサフランは薬効があるとされており、世界各国で古くから活用されています。
公益社団法人東京生薬協会の「新常用和漢薬集」の解説によると、「ヨーロッパでは健胃・鎮静・通経薬。中国では生理を誘発し、生理痛や慢性の子宮の出血を軽減し、消化不良や腹痛に用いられる。日本の民間では生理痛・生理不順に単味で使用される」とあり、古くから細くて小さい植物ながら、非常に優れた効果・効能を持つことが分かります。
また同資料で、サフランの成分は、「カルチノイド系黄色色素(crocin/クロシン)」「苦味配糖体(picrocrocin/ピクロクロシン)」、「芳香精油成分(safranal/サフラナル)」であり、色素と苦味と香りと油が特徴であるようです。
また強い特異なにおいがあり、味は苦く、唾液を黄色に染める特徴があります。
サフランの産地
サフランは、イラン、スペイン、フランス、イタリアなどのほか、日本国内でも生産されています。現在、日本では主に大分県で生産されているようです。
サフランに詳しいスペイン・ラテン料理研究家の丸山久美さんは、次のように解説します。
「日本では大分県竹田市でつくられているサフランが名高く、素晴らしい品質です。その栽培の歴史は古く115年に渡るそうですが、日本では需要と供給が追いつかないことも加え、生産者の高齢化により生産量が減っているそうです。それを絶やさぬよう、そしてさらに普及するよう継承に立ち上がる方々もいらっしゃいます。国産の良いサフランがもっと知れ渡り、身近になると良いと思います」(丸山さん)
ところで気になるのが、サフランの海外産と国産の価格の差。海外産は他のスパイスと同程度の金額で買えるものの、日本では相当の高額であることが多いようです。どうしてなのでしょうか。
「サフランは、秋に咲く可愛らしいクロッカスの花の“めしべ”です。ひとつの花から3本しかとれない上に、小さな花を摘む作業は手仕事でしかできません。一つひとつ陽が強くなる前に摘んでいき、そこからまた“めしべ”を手で引き抜いていくには大変な労力がかかるものなのです。
収穫量もけっして多いものではなく、例えば10gのサフランをとるのに1,500本以上もの花が必要とされます。このことから国産、海外産に関わらず、サフランはもともと高価ではありますが、特に国産のサフランは近年生産量が激減していること、海外と異なる栽培方法を確立しており、“めしべ”が大きく、色も鮮やかで、香味も優れているといわれます。これが価格差を生んでいるのかもしれません」(丸山さん)
サフランの選び方
実際に料理にサフランを活用していく際に、どのような基準でサフランを選ぶべきか、丸山さんに教えていただきました。
「私たちがスパイスとして使うのは、サフランの花からとっためしべを乾燥させたもの。良いものを見極めるポイントは『色』にあります。黄色やオレンジ、白などが混ざっていない、赤くてきれいなものを選びましょう。できれば長さが違う短いものなどがたくさん混ざっていないものが良いです。
赤以外の色の部分は発色もなく、香りもありません。良いものは香り高く、ほんのり甘く香ります。外国のお土産でいただくとウコンや紅花が入っていることがありますが、色や香り、その違いは明らかです」(丸山さん)
サフランの基本的な料理への使い方
サフランを使った代表的な料理にはどのようなものがあるのでしょうか?
「スペインでは米料理、魚介料理に使われることが多いです。なんといってもパエリアにはサフランは欠かせません。他には魚介のスープ、カタルーニャ風魚介の煮込み、海老の揚げ物など。色合いだけではなくその風味が魚介料理と合うといわれています」(丸山さん)
素敵な料理の名が挙がりましたね。
丸山さんに、基本的な料理への使い方を教えていただきました。
「サフランの黄金色は料理を引き立たせ、またその風味は料理の味をおいしくします。基本的には少量を水につけて色出しして料理に最後に加えるのが一般的です。メーカーによって色の出始める時間も違いますが、水(または湯)に30分以上つけておきましょう。できれば余裕をもって早めにやっておくのがベストです。
ひと手間はかかりますが、より香りをたたせ、色を出しやすくするには水につける前に乾煎りをし、砕くことをおすすめします。温めたトースターやフライパンに火をとめてから入れさっと香りを出す程度に乾煎りします。さらに乾煎りしたものをすりこぎなどで砕く、もしくはアルミ箔などに入れて指で砕くと香りも立ち、発色しやすくなります。ちなみに直接指で砕くと指が黄色くなりますのでご注意を」(丸山さん)
また、サフランを保存する際には、注意が必要だそうです。
「サフランはとてもデリケート。香りが飛びやすく劣化しやすいのでアルミ箔にくるみ、密封容器に入れて日光に当たらない涼しいところで保管すれば長く持ちます。冷凍保存はさらに長く香りを保つことができます」(丸山さん)
サフラン活用の上級テクニック
最後に、サフランを活用するための上級テクニックを丸山さんに教えていただきました。
おもてなしで映えるサフランライス
「色出ししたサフランをご飯に加えて炊くだけで、最もサフランの美しい色とその独特の上品な風味を味わえるのがサフランライスです。おもてなしにも大きな器や鍋のままお出しすれば華やかになりますね。肉料理や魚介料理に合わせて楽しんでください。さらにニンジンや甘くなるまで炒めた玉ねぎなどの野菜を加えてもいいですね。くるみやアーモンドナッツ類、お好みのハーブをトッピングに添えてみてください」(丸山さん)
魚介のサフランライスで上級の腕を披露!
「さらにもう少し手をかけて、魚介のサフランライスはいかがでしょうか。おもてなしにも活躍する一品です。ムール貝やあさりの蒸し汁は別でつくっておきます。海老の頭をつぶしてエキスを出し、そこへ白ワイン少量を加え煮詰め、貝の蒸し汁とサフランの色出しをした水を加えて煮込みます。
そして煮汁とトマトソースを米に加えて炊き上げます。炊き上がったら、貝や海老の身、レモンを添えて、にんにくマヨネーズ・アリオリと一緒にいただきましょう」(丸山さん)
サフランは、希少な食材であり、繊細な見た目をしているのにも関わらず、色付けや香り付など、料理を存分に華やかにしてくれる不思議なもの。普段の料理に取り入れれば、ワンランク上の一品をつくることができそうです。
丸山さんのInstagram
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 石原亜香利