やらなきゃいけない仕事があるのになんだかやる気が起きないとき、ありますよね。一体どうすれば、モチベーションを維持できるのでしょうか? この悩みをメンタルトレーナーの梯谷幸司さんにぶつけたところ、まずは無意識のメッセージを知ることが大事だと言います。

「やる気が起きないというとき、その原因はさまざま。『単純に疲れているから』など、寝れば問題解決する場合もあります。しかし、『何ごとに対してもやる気が起きない』など、人生全般においてアクションが起こせない場合は、根底にあるのは本当の自分を生きていないことが原因だったりもします。

やる気を起こす、そして、本当の自分を生きるためには、顕在意識、潜在意識、そして無意識について知り、それらをどんどん書き換えて、理想的な現実をつくってしまえばいいのです」(梯谷さん)

もやもやしているとき、私たちの脳は一体どんな状態になっているでしょうか? 梯谷さんから、自覚すべき原因とモチベーションを上げるための具体的なアドバイスを詳しく教えていただいたので、以下からご紹介します。

やる気が起きないときに脳から出ている「無意識のメッセージ」6選

■1:建前と本音がずれているからやる気が起きない

意識の深いところの自分の声を聞いていますか?
意識の深いところの自分の声を聞いていますか?

「やらなきゃ」とは思っているのに、行動に移せない。そんなときは、建前と本音がずれているかもしれません。

「最初に理解していただきたいのは、私たちの意識の構造についてです。私たちの意識でいちばん表面にあるのが顕在意識です。起きているときは、この顕在意識が活発に活動することで、理性が優位となり、物事を判断したり、何かを思い、感じ、認識します。

その下には、潜在意識(=無意識)があります。この潜在意識の領域は、起きているときにはあまり強く認識できません。一方で、寝ているときは、この潜在意識が活発になって夢などにも影響を与えています。

本音と建前で言うならば、より深くにある潜在意識が本音で、現実生活と密着した顕在意識が建前にあたります。ここまでは皆さんもお分かりになるでしょう。

今回お伝えしたいのは、潜在意識のさらに深層にあるメタ無意識についてです。メタ無意識とは『~を超えた』という意味で、潜在意識を超えた意識です。メタ無意識をわかりやすく説明するために、私がよく使うのがお茶碗に入った山盛りのごはんの例えです。

お茶碗から出ている山盛りご飯の部分が顕在意識です。そしてお茶碗に隠れてしまっているご飯が潜在意識です。
さてもうひとつ、顕在意識と潜在意識を入れているお茶碗がメタ無意識なのです。この構造を知っておいてください。

メタ無意識の役割は重要で、人生におけるさまざまな現実を形づくる器でもあります。物事に対する考え方、意識の持ち方を書き換えるということは、顕在意識、潜在意識を書き換え、最終的にはこのメタ無意識を書き換えて、現実が変わることにつながるのです。

話をやる気に戻します。あなたの顕在意識、つまり建前では『この仕事で成功するぞ』と思っているとします。しかし自分の本音(潜在意識)をよく観察してみると、『本当は他にやりたいことがある』と長年、ずっと思っていたりするのです。

このように建前(顕在意識)と本音(潜在意識)にずれをもって生きていると、あなたのメタ無意識はやる気を起こさせないように働きかけて、『建前と本音がずれているよ』とサインを出すのです。

そこで、まず自分の本音(潜在意識)をしっかりと見極め、本音で生きる、本当の自分として生きるにはどうすればいいのかを考えて、そのための道筋を立てるようにしましょう。

そして、いまやらなければいけないことを『これをやれば本音で生きられる』という目標のためのステップとして考えれば、やる気がぐんと起きるはずです」(梯谷さん)

やる気が起きないとき、それを教えてくれるのはメタ無意識という領域だったのです。また、建前がモチベーションを殺していたことが判明しました。自分の本音を日ごろから見つめること。そして、本音を隠さず生きる方法を考えていきましょう。

■2:未来設定が間違っているからやる気が起きない

「幸せになりたい」では幸せはやってこない?
「幸せになりたい」では幸せはやってこない?

「仕事をバリバリこなして昇進したい」と「作業をスピーディーに行って評価を上げたい」と思っているときに限って、いざ仕事に向かおうとしてもやる気が起きないなんてことがありますよね? その場合、未来設定が間違っているかもしれません。

「幸せになりたい、愛されたいなど、だれもが『~たい』という願望系で未来を想います。実はここに大きな間違いがあります。

例えば『幸せになりたい』と未来設定すると、メタ無意識はあなたの現在を『では、今は幸せではないのだな』と認識することになります。そしてメタ無意識は、幸せではない現実を創るための素材を集めて来るのです。つまり、未来への想いが願望形になっていると逆にブレーキがかかるということ。これを覚えておいてほしいのです。

そこでこちらも脳の逆を突いて、『未来、私は幸せだった』と未来設定します。そうするとメタ無意識は、『それならば、今をどんどん幸せにしなければいけない』と認識して、あなたを幸せにする現実を集め始めます。

同じように『仕事をバリバリこなして昇進、評価されたい』と願望系で想っていると、『今は仕事ができない人なのだな』と、やる気を起こさせない現実が集まってしまうのです。

そこで『私は仕事をしっかりとこなした』など、未来設定での自分を『仕事のできる人』にしてしまってください。これによりメタ無意識は、あなたが仕事をサクサクこなせる現実を集め始めるのです」(梯谷さん)

願望系は逆にブレーキがかかることがわかりました。これからは「愛されたい」ではなく、「未来の私は愛されている」と未来設定することで、愛される現実が集まるとのこと。早速、やってみましょう。

■3:そもそも「やらなきゃ」という発想が間違っているからやる気が起きない

「やらなきゃ」は要注意のNGワード!?
「やらなきゃ」は要注意のNGワード!?

やる気が起きないとき、ついだれもが「やらなきゃ」と念じて自身を奮起させようとしがちです。しかし、どうやらこの「やらなきゃ」が、逆効果になってしまうそうです。

「みなさんも経験があると思いますが『やらなきゃ』と思っている間は、行動に移せません。やらなきゃという意識が湧いてきたら、シンプルに『よし、やろう』に書き換えてください。そうすればすぐに行動に移せるのです。

なぜなら、何かをやろうと思ったとき、メタ無意識はすでに脳に指令を出して、あなたがそれをやるための肉体的な準備はすでに整えています。メタ無意識がスゴいのは、あなたの行動をすべて事前に予測して、その準備を脳にさせるということです。このことは脳科学がすでに証明しています。

メタ無意識はいわば、あなたの中の予知能力者です。あとは行動するだけなのに、それに待ったをかけてしまうのが『やらなきゃ』という意識です。これはほとんどの人が勘違いしていることです。身体に奮起させようとして『やらなきゃ』と意識しているつもりが、じつは身体にストップをかけてしまっているのです。

例えば、『ペンを持とう』と思ったとき、だれもがシンプルにペンに手を伸ばし掴みます。ところが『ペンを持たなきゃ』と意識すれば、それはペンを持つという結果ではなく、『ペンが持てずに奮闘している現実を創りたい』ということになり、身体はペンを持たないようにストップするのです。

つまり、『やらなきゃ』でやる気を起こさせようとするのは間違いですと、メタ無意識が教えてくれているわけです。

『やらなきゃ』が出てきてしまう場合、やはりあなたの本音(潜在意識)が、『本当はそれをしたくない』と抵抗していることが多いと思います。『やろう』でそのことを片付けた後で、自分の本音と向き合ってみましょう」(梯谷さん)

「やらなきゃ」は、だれもがしょっちゅう口にする言葉。言われてみれば確かに、そう思っている間、身体はずっと固まっていますよね。その理由がやっと明らかになりました。これからはシンプルに「よし、やろう」と自分に働きかけていきましょう。

■4:目的が明確になっていないからやる気が起きない

脳が欲しがるのは過程ではなく目的・ゴール
脳が欲しがるのは過程ではなく目的・ゴール

「この作業って、つまんないんだよな」と思った瞬間、やる気が失せてしまうこともありますよね。こうした際は最終目的を意識した発想をしなさい、というメッセージなのだそうです。

「何か行動するとき、最終目的を達成することに喜びを感じる目的基準パターンと、楽しさやワクワク感、充実感、安心感などに喜びを得る体験基準パターンがあります。

意識が向いている焦点で比べると、目的基準パターンの場合は、その行動の結果とさらにその先にある最終目的に合っています。一方で体験基準は、行動の過程がいかに楽しいか否かという、目的に到達するよりも前の段階に合っているわけです。

やる気が起きないというとき、多くの場合、あなたの意識が『体験基準パターンになっていますよ』と教えてくれているのです。そこで目的基準に意識を書き換えて、『なんのためにこれをやるのか』という、行動に対しての明確な最終目的をつくるようにします。

もちろん、ワクワクやりたいということ自体が間違いなのではありません。その感覚も重視したければ『この作業をどうすればワクワクしながら、最終目的のために成し遂げられるか』と考えればいいのです。

大切なのは、まず、最終目的をつくり、その次にワクワクする方法を考えるということ。成功者は目的基準の意識の持ち方をします。例えば、浅田真央さんは、かつては『自分の演技がしたいです』と、演技に焦点を当てた体験基準の発想をしていて、なかなかメダルが取れませんでした。

しかしその後、『やりきったと言えるように終わりたいです』と、ゴールとその先を見据えた目的基準の発想になり、メダルが取れるようになりました。目的基準の意識が生まれると、ゴールはただの通過点にもなりますので、ゴール到達が容易になります。

私たちの脳は目的・ゴールを欲しがるのです。何のためにやるのか、という目的意識があると脳は働いてくれます。目的がないと、『無駄なことはしません』とばかりに、やる気を与えてくれないのです」(梯谷さん)

やはり脳にとっても目的は重要な条件です。何事にも目的意識をしっかりと持つようにしていきましょう。

■5: 他者の評価で決めようとしているからやる気が起きない

うまくいっているかどうか、知っているのは自分? 他者?
うまくいっているかどうか、知っているのは自分? 他者?

やる気が起きないという際、そのやろうとしていることに対して、誰かのためだったり、「やらされている」という意識があったりしていませんか?

「私のクライアントさんには客商売の方も多くいらっしゃいます。そうした方々の多くが『お客様に喜んでもらいたい』ということを仕事のモチベーションにしています。これが他者基準という意識の持ち方です。

自分の行動がうまくいっているかどうかを、他者の評価で決めようとします。そして、他者のために何かするという発想が強いのです。もちろん、他者のために何かするのは悪いことではありません。でも、そればかりでは、自信につながる自己決定感が得られないため、長く仕事を続けるのは困難にもなります。

一方で自分基準という意識の持ち方は、自分の行動がうまくいっているか否かを自分で考えて判断します。自己決定感が得られるため、自信にも満ちあふれていきます。やる気が起きないというときは、他者基準の意識になってしまっているときです。なぜなら他者の評価など、見えにくいものだからです。そのため、やる気が起きなくなります。

そこで自分基準の意識に書き換えて、『他者がどう評価しようと、これをやることが自分にとっては意味がある、自信につながる』と自分で判断して行動に移せばいいのです。自分基準で物事を意識すると『この作業は誰かのためにやっている、やらされている』という発想にもつながりませんので、自然とやる気が湧いて来ます」(梯谷さん)

何事に対しても自分の意志をしっかりと反映させることが大事、ということですね。ぜひ自分基準もしっかりと育てていきましょう。

■6:心の中に自己否定感があるからやる気が起きない

自分の中に抱えてしまった矛盾した思いは要チェック!
自分の中に抱えてしまった矛盾した思いは要チェック!

行動に対して、「自分にはできる」という意識と「自分には無理」という両方の意識があって、その結果「やる気が起きない」となってはいませんか?

「私のクライアントの方で、こんな悩みを語ってくれた方がいます。その悩みとは、仕事や恋愛等で『何かでうまくいきそうになると、なぜかいつも自分でつぶしてしまう』というのです。

カウンセリングしてみると、その人の顕在意識と潜在意識の中には、自分はできるし、幸せになりたい自己肯定感の高い自分と、私は幸せになってはいけないという、自己否定感の両方があることがわかりました。

この自己否定感は、病気がちだった妹さんに、いつも『お姉ちゃんはやりたいことをやれていいわね』とうらやましがられていたことで、妹に対しての間違った同情から生まれた意識でした。この不要な自己否定感が、あと一歩でうまくいくという段階で意識の中に現れては、やる気をなくすという形で足を引っ張っていたのです。

『自分は無理、できない』という自己否定感をなくし、『自分にはできる、成功できる』という高い自己肯定感だけに一本化することで、一気にやる気がみなぎるはずです」(梯谷さん)

自己肯定感と自己否定感は、多くの人が意識の中に同居させて持ち合わせているそうです。その自己否定感がどこからきているのかを見極めて、物事に対しては、自己肯定感だけを意識して向かうようにしましょう。

やる気が起きないとき、私たちの意識の深いところからさまざまなメッセージが出ていて、正しい意識の持ち方をするよう教えてくれているのです。もやもやしたときは、まずこれらの声に耳を傾けること。そうすれば、おのずとモチベーションは上がっていくはずです。

梯谷幸司さん
心理技術アドバイザー/メンタルトレーナー、トランスフォームマネジメント株式会社 代表取締役。米国NLP協会Art of NLPトレーナー、LABプロファイル・コンサルタント&トレーナー
(はしがい こうじ)人間心理、言語心理学、催眠療法、NLP(神経言語プログラミング)など、これまで世界的な専門家に師事し、30年以上の歳月をかけ科学的手法に基づいた独自の成功理論「梯谷メソッド」を確立。夫婦問題からうつ病患者、経営者、アスリートにいたるまで、クライアントの抱える先入観や思い込みを素早く特定し、脳の95%を支配する潜在意識をフル活用させ、精神的、身体的苦痛を伴わずに、のべ48,800人のセルフイメージを変革してきた。わずか30分で成功者ゾーンに意識変革させるその手法は、経営者やビジネスマンからも「再現性が高い」と絶大な支持を得ている。30年超のキャリアと起業家からアスリートまで、のべ48,800人のセッション経験を武器に、外資系企業へのコンサルティングや研修事業なども行い、一般向けにはワークショップを精力的に開催中。
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