ふぐは冬の味覚の王様的存在ですが、普段はなかなか食べる機会がありませんよね。いざお店でふぐ料理を目の前にすると「これってどうやって食べれば……」と不安になってしまう人が多いのでは?
周りの目を気にしながらでは、せっかくのごちそうをおいしくいただくことができませんし、知らずに無作法をやらかしては恥! 場合によっては、会食者に不快感を与えることにもなりかねません。そこで、今回はマナー講師の金森たかこさんから、ふぐ料理を食べるときのNGマナーについて教わります。
ふぐ料理を食べるときにやってはいけないマナー違反行動8選
■1:ふぐ刺しに直接すだちを搾るのはNG
大皿いっぱいに盛り付けられたふぐ刺しは、見た目が華やかで気分が上がりますよね。そのふぐ刺しの大皿に向かっていきなりすだちを搾ってしまうのはNG!
居酒屋の唐揚げと同様、すだちをどれくらい搾るかは各人の好み。ふぐ刺しについてくるすだちは、ポン酢を入れた小皿のほうに搾りましょう。
■2:ふぐ刺しを大皿からランダムに取るのはNG
ふぐ刺しの大輪の花のような盛り付けは、どこから手をつければいいのか迷ってしまいますよね。ただ、よくわからないからといって、自分の好き勝手に食べ散らかすのはお行儀のいい食べ方ではありません。
「ふぐ刺しは外側から内側に向かって円を描くように盛り付けられていて、中心が頂点です。食べるときは盛り付けとは逆に、中心から外に向かって円を描くように食べていくと、盛り付けを崩すことなくきれいに食べられます。食べ方の基本は、“中から外”と押さえておくとよいでしょう。
ただし、“中から外”の食べ方は絶対というわけではありません。というのも、ふぐ刺しはとても薄くて繊細なので、時間をおくと外側に盛り付けたものがどんどん乾いてしまうからです。“中から外”にこだわりすぎると、せっかくの食材をベストの状態でいただくことができない恐れがあります。
ですから、ふぐ刺しを食べ始めてから少し時間が経ち、大皿にまだ少し残っている状態で皆の箸が止まっていたら、『おいしいうちに、外側から食べませんか?』というふうに、周りの人に提案するのも大人の気遣いではないでしょうか」(金森さん)
盛り付けが崩れないようにきれいに食べるのもさることながら、“おいしく食べる”ことこそが、料理人や食材に対する最上のマナー。食べ順にこだわるよりも、料理の状態をよく見極めて、周りの人とコミュニケーションをとりながらふぐ刺しを堪能しましょう。
■3:ふぐ刺しを一気にたくさん取るのはNG
プロ野球選手の長嶋茂雄さんには、大皿の半周ほどのふぐ刺しを箸で一気にすくい取って食べたという逸話がありますが、大人の女性が人前でこれをやるのは赤っ恥!
「ふぐ刺しはとても薄いので、1枚ずつでは歯ごたえなどが感じにくいかもしれません。とはいえ、大量に取りすぎるのもマナー違反です。2~3枚ずつ取るのが適切でしょう」(金森さん)
高級食材のふぐを一度でいいから“長嶋食い”してみたい……という願望のある人は、お店ではなく自宅でこっそり実現するのがよいかもしれません。
■4:ポン酢の小皿をテーブルに置いたまま食べるのはNG
ふぐ刺しにはポン酢がよく合いますが、ポン酢の小皿は手で持つこと。和食では小皿をテーブルに置いたまま食べるのはマナー違反に当たります。
「洋食では原則としてお皿を持ち上げませんが、和食では手のひらサイズの器は手で持ちます。小皿をテーブルに置いたままでは、汁がたれやすかったり、姿勢が悪くなって犬食いのようになったりするので、小皿は手に持って食べましょう」(金森さん)
■5:自分のペースで鍋にどんどん具材を入れるのはNG
続いて、ふぐ鍋を食べるときのNGマナーについて。金森さんによれば、具材がふぐだからこうしなければならない、という特別なマナーはないようですが、鍋料理の一般的なマナーとして、鍋に具材を入れるペースに要注意とのことです。
「お店の人にお任せするのではなく、自分たちで鍋に具材を入れるときには、1度にたくさん入れすぎないように注意しましょう。ふぐ鍋の場合は、ダシの出る骨つきの身を最初に入れて、あとは火の通りにくいものを順番に入れていきます。周りの食べるペースをよく見て、『そろそろ●●を入れましょうか?』などと一声かけてから入れるようにしましょう」(金森さん)
ふぐ刺しの取り順でもお伝えしましたが、その場で一緒に食事をしている人とのコミュニケーションを大切にしましょう。
■6:直箸や逆さ箸をするのはNG
鍋料理の一般的なマナーとして、直箸や逆さ箸がご法度という点も押さえておきましょう。
いくら親しい間柄であっても、複数人でシェアするお鍋に口をつけた箸が触れるのを不快に感じる人はたくさんいます。また、お箸を逆さにして取り分けをする行為も、手で持った部分を鍋に入れることになり、不衛生であることに変わりはありません。
もし取り箸がなければ、お店の人に頼んで持ってきてもらいましょう。
■7:唐揚げの小骨を堂々と口から吐き出すのはNG
ふぐ料理のなかでも特に食べるのが難しそうな骨付き唐揚げですが、金森さんによれば、あまり神経質にならず、手づかみで食べてもOKとのことです。
そんなワイルドな食べ方が許されている骨付き唐揚げですが、口の中に残った骨の扱いには気を付けましょう。堂々と口から吐き出すのはエレガントではありません。
「小骨を口から出すときには、口元を隠しましょう。懐紙があれば懐紙を使ってもよいですし、もしなければ手で隠すだけでも結構です」(金森さん)
なお、和食では懐紙を使うのがマナーだと聞いたことのある人も多いかと思いますが、懐紙の使い方については、金森さんから以下のようなアドバイスもあります。
「懐紙を使うのは正式なマナーではありますが、状況によっては必ずしも使うことだけが正解とは限りません。例えば、その場で誰も使っていないのに、自分だけ懐紙を使うのはかえって場のムードにそぐわないことも。懐紙を持っていても敢えて使わないという判断もありますし、もしくは、自分だけ持っている場合は、周りの人に『これよかったらどうぞ』と懐紙をすすめてみるのもよいかと思います」(金森さん)
口元を隠すのは手でも懐紙でもOK。懐紙は食事の席に持参したほうがよいアイテムではありますが、状況に応じて活用するようにしましょう。
■8:唐揚げの骨を皿の上に散乱させるのはNG
食べ終わったあとのお皿の上が散らかった状態では見苦しいですよね。唐揚げの骨は、もし骨入れがあれば骨入れに、なければ皿の1か所にまとめておくようにしましょう。
ふぐ料理も、これらのマナーを押さえておけば宴会や接待でも安心ですよね。また、わからないことがあればお店の人に聞けば快く教えてくれるはずなので、会食者やお店の人とのコミュニケーションも大切にして、ふぐ料理を堪能しましょう!
ウイズ
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 中田綾美