あなたの職場に、残念な人物はいませんか?
ただキャリアが長いだけで、それに見合った仕事の能力やリーダーシップ、人望があるわけでもない。上司や、同僚、部下・後輩に至るまで誰からも慕われず尊敬もされないような人物が……。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉が示すように、人の上に立つ人物ほど謙虚に学び続け、スキルアップを図っているもの。ほかならぬ自分自身が、そんな惨めな裸の王様には絶対になりたくないですよね。
そこでリーダーシップ・行動心理学の研究者である池田貴将さんから、人間力向上の妨げになる悪習慣について教えていただきました。イエスマンにしか認められないような人間にならないよう、以下の8つには気を付けていきましょう。
謙虚な人は絶対にやらない「人間的成長の妨げになる悪習慣」8選
■1:人から「すごいね」と褒められようとするのはNG
SNSで、「ダイエット中。これからジムでトレーニングです」や「資格試験のためにテキスト購入」など写真とともに投稿しているのをよく見かけますよね。このように、自分の目標や現在の取り組みについてSNSに投稿するのは、その意図によっては人間力向上の妨げになると池田さんは主張します。
「例えば、ダイエットを頑張っているかどうかは、その人の体型を見ればわかること。なのに、わざわざ“ダイエット中です”とか“これからジムでトレーニング”などとわざわざSNSでアピールするのは、その人に“人からすごいねと褒められたい”という欲求があるからではないでしょうか。
人から褒められること自体が目的化してしまうと、SNSで“いいね”を集めるだけで満足してしまい、目標達成に向けての肝心の行動が疎かになってしまう恐れがあります」(池田さん)
そもそも、SNSに投稿する時間があれば、その間に少しでも運動したり、勉強したりするほうが目標達成には近づけるはずですよね。
たしかに、「全世界に向けて公言するからこそ自分は頑張れる!」と自分のモチベーションアップに役立てているのであれば、SNSの活用は有害とまでは言い切れません。ただ、もしも「いいね」が欲しいという下心があるのであれば、目標や取り組みを投稿するのは控えたほうがよさそうです。
■2:やった方がいいことのやらない理由を探すのはNG
人間力が高い人というのは、自分にとってプラスになると思ったことは即実行するというフットワークの軽さがあります。他方で、何かやるべきことがあっても、何かと理由をつけて先延ばしにする癖のある人は、いつまでたっても成長が望めません。
「 “いつも仕事の締切に追いたてられている”とか、“本当はもっと待遇のいい職場で働きたい”など、現状に対するあらゆる不満は過去の自分が行動しなかった結果だといえます。
例えば、いつも締切に追いたてられているのは、日々の仕事において“締切まで時間があるから”と言い訳して先延ばしする習慣があるからではないでしょうか。また、待遇のよくない仕事に従事せざるをえないのは、スキルアップのための勉強や転職活動などを“忙しい”や“自信がない”といった理由で避けてきたためかもしれません。
このように、何も行動を起こさないうちから、できない、やらない理由ばかりにフォーカスしてしまうと、不満が増えるばかりで、人間的成長の機会も失ってしまいます」(池田さん)
先延ばし癖がある人は、何か思い立ったときに、それをできない、やらない理由を探さないようにしましょう。思考パターンをすぐに変えるのは難しいですが、「~~だからできない(しない)」といういつもの発想がよぎった瞬間、逆に、それを実行したほうがいい理由に目を向けることをおすすめします。
■3:自分以外に責任転嫁してしまうのはNG
何か問題が起こったときに、すぐに投げ出して「~~のせいで、できなかった」と自分以外に責任転嫁してしまう。そんな習慣も、人間力向上の妨げになると池田さんは主張します。
「例えば、仕事上でお客様から重大なクレームが発生したケースで考えてみましょう。
問題が起こってから『助けてください』と上司などに丸投げ。しかも、フォローする上司に対して、きちんと経緯も説明せず、ただ『変なお客さんだった』など自分以外に責任転嫁するようでは、信用はガタ落ちです。上司としては、このような部下には以後、大事な仕事を任すことができません。
もちろん、トラブルが生じたときにはひとりで抱え込まず、周りの協力を得ることも必要ですが、他者を上手に頼ることと、問題を丸投げするのは全くの別物です。
自分が最後まで責任をもつのだという覚悟があれば、単に『助けてください』ではなく、自分のお客様への対応でまずかった部分も含めて包み隠さず話し、そのうえで上司の指示を仰ぐのではないでしょうか」(池田さん)
仕事をしていくうえで、ミスやトラブルをゼロにすることは不可能ですが、肝心なのはミスやトラブルの発生自体よりも、それに自分がどう向き合うのかという点にありそうです。
生じた問題が大きければ大きいほど、自分以外に責任転嫁して逃げたくもなりますが、そういうときこそ人間力が試されているのだと腹をくくりましょう。
■4:その場しのぎで乗り切ろうとするのはNG
前述の先延ばし癖ともリンクしますが、いつも締切ギリギリまで行動を起こさない人は、「そのやり方でこれまで乗り切ってきた」という刷り込みがあるのではないでしょうか。
もちろん、締切になんとか間に合わせることができれば、上司から怒られることはありません。しかし、ギリギリセーフの習慣がある人と、いつも余裕をもって物事を遂行できる人とでは、人間力において大きな差が開いてしまうようです。
「いつも締切直前に仕事をなんとか間に合わせている人は、日頃は暴飲暴食しているのに健康診断の直前だけ食生活に気を付ける人と同じようなものです。
たしかに、数日間、酒や脂っこいものを控えるようにするだけでも、健康診断の数値は改善されるので、結果的に診断には引っかからないで済むでしょう。しかし、そんなその場しのぎ対応は、長期的に見ると自分にとってマイナスになってしまいます。
本来、健康診断は結果に一喜一憂するものではなく、根本的に自分の生活習慣を見直すためのもの。健康診断を機会に、自分の食生活や睡眠、運動習慣などを振り返り、それを改善すれば、病気になりにくい健康的なからだを手に入れることができるのです。
ところが、ただ目先の結果だけで安心して、また普段の不健康な食生活に戻ってしまえば、いつかは重大な疾患につながる恐れがあります。
仕事も同じで、締切ぎりぎりになってしまうのは、そもそも普段の仕事の進め方に問題があるというサインなのではないでしょうか」(池田さん)
ただ締切に間に合わせるだけで安心していると、自分にとっての課題がいつまでも未解決のままになってしまうということですね。
ここで「無理な納期を指定してくる上司が悪い」などと、できない理由を他人に求めて思考停止すると、自分の成長の機会を失ってしまいます。何か少しでも自分に改善できることはないかスキルアップの糸口を見つけましょう。
■5:他人のアドバイスを拒絶するのはNG
他人から「~~したほうがいいよ」とアドバイスされた際、あなたはどのように反応していますか? とりわけそのアドバイスが自分にとって耳に痛いものであるときの対応は重要です。
「今やろうと思っていた」とか「~~だからできない」などとすぐに言い返してしまう。または、その場で聞くふりをするだけで、言われたことを実践しないなど、他人のアドバイスを拒絶する習慣がある人は、人間的成長が望めません。
「精神的に余裕がない人ほど、自分とは違う意見や価値観を受け入れることができず、少しでも自分の意に沿わないことを言われるとすぐに『そうじゃない』と否定的な態度をとってしまいます。
ただ、アドバイスをくれる人は、あなたによくなってほしいという好意があるわけです。そうした相手側の事情を一切考えず、自分の価値基準に合わないからと拒絶してしまうと、アドバイスした側は当然面白くありません。
そうなると、あなたにアドバイスや有益な情報を与えようという味方はどんどん減っていくばかりです」(池田さん)
これぞまさしく裸の王様状態。他人から何かアドバイスを受けたら、「それやってみます!」とまずは素直に実践しましょう。
特に、物事が停滞しているときは、従来の自分のやり方に何か問題があるのかもしれません。そういうときには、アドバイスの内容に多少は納得がいかなくても、思い切ってやってみることで事態が打開できることも少なくないようです。
■6:人の話を聞くことよりも自分が話すことに夢中になるのはNG
会話中に、何に意識を向けるのかにも要注意です。人の話を聞きながら、自分が話すことを考えてしまう人は、人間力が低くなる傾向があるとのこと。
「人間力は、狭い価値観にとらわれず、自分とは違う考え方や価値観を柔軟に受け入れることで高めることができます。この点、人の話を聞きながら自分が話すことを考えている人は、相手の考え方や価値観を受け入れることよりも、自分がすごいと思われたいという点に意識が向いています。これでは、せっかく相手からよい刺激を受ける機会に恵まれても、それをキャッチできないかもしれません」(池田さん)
他人の何気ない一言にも人間力アップのヒントは隠されているもの。ちょっとした雑談においても、自分が話すことよりも、宝物探しをするようなつもりで相手の話に耳を傾けてみては?
■7:自分の価値観に合わないものをスルーするのはNG
上記でも再三、“自分とは違う考え方や価値観を受け入れること”の大切さを強調してきましたが、実は人との会話だけでなく、日頃の情報収集においても、人間力には大きな差がついてしまうようです。
「新聞やテレビ、ネット上には日々おびたただしい量の情報が流れていますが、そのなかで自分にとって都合のいい情報や価値観の合う情報しか受け入れないでいると、人間力は高まりません。
例えば、ネット上ではニュースに関してさまざまな意見が飛び交っていますが、人間力の低い人は自分の価値観に反する見解を見かけてもスルーするか、深く読み込まずに終わりです。
また、読書するのでも、自分の興味のあるものしか読まなかったり、『面白そう』と思って手にとった本を読んでいる途中で『なんか思っていたのと違う』と投げ出してしまったりすると、なかなか視野が広がりません」(池田さん)
日頃、情報収集する際には、自分のフィーリングに合うものに浸って安心するのではなく、敢えて自分にとって異質なものにもアンテナを張ってみましょう。
■8:すぐにコスパを考えるのはNG
「それがなんの役に立つの?」という口癖は禁物。すぐにコスパを考えてしまうのも残念な習慣のひとつだといいます。
「例えば、読書をする際に、てっとり早く知識を入れようと薄い本、わかりやすくかいつまんで解説した本ばかり選び、重厚なものや難解なものは『時間がもったいない』と避けていては、人間力を磨くチャンスを損ねてしまう恐れがあります。
もちろん、薄い本、わかりやすい本が一概に悪いというわけではないのですが、読書に対して常に短期的な成果を求めていては、自分が理解できる範囲の世界にしか触れることができません」(池田さん)
そもそも、役に立つかどうかという基準自体が自分の物差しにすぎません。それで行動を規定してしまうと、人間の器が小さくまとまってしまいそうです。自分の殻を破り視野を広げるべく、無駄になりそうな読書にもどっぷり浸ってみましょう。
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今回ご紹介した習慣のなかに、自分に当てはまるものはあったでしょうか? 年齢を重ねるごとにますます人間力を高められるように、ぜひこの機会に残念な習慣は改善しましょう。
公式サイト
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 中田綾美