平成6年、「パンナコッタ」BOOMに火が付いたきっかけは?
パンナコッタは平成6年(1994年)に人気に火が付いたスイーツ。なぜ、ブームになったのでしょうか? 名古屋にあるイタリア菓子専門店「ドルチェッツェ」代表のパティシエ・村上 功さんに伺いました。
「1990年過ぎからイタリア料理がブームになり、『アンティパスト、プリモ、セコンド、ドルチェ』と皿盛りで少量の料理を、順番通り楽しむというイタリアンレストランの形を、西麻布のイタリアンレストラン『アルポルト』の片岡さんが始めたのをきっかけに、ほかのシェフが同じことを始めました。
またドルチェといえば、つくり置きできるパンナコッタをつくるコックが多かったことも、提供される機会が自然と増えたことで多くの人に親しまれ、火が付いた要因となったと思います」
パンナコッタは、イタリア料理、いわゆる「イタメシ」ブームを背景に火がつき、料理人側の「つくり置きできる」という都合も相まって、ヒットスイーツになったようです。でも本当に、それだけでしょうか?
パンナコッタのスイーツとしての魅力
その謎を改名するべく、パンナコッタはほかのスイーツと比べると、どんな魅力があるのか?を、村上さんに教えていただきました。
■1:材料がそろえやすい
「パンナコッタの材料は生クリーム、牛乳、砂糖、ゼラチンと、シンプルなもの。そろえやすいのが魅力です」
■2:誰でも失敗せずつくることができる
「パンナコッタは、鍋に牛乳、生クリーム、砂糖を煮て、ゼラチンを入れて冷やし固めるだけと、簡単に誰でも失敗せずにつくることができます。これは家庭でも広まった理由かと思います」
■3:ソースを変えれば、いろんな味を楽しめる
「パンナコッタそのものはシンプルな味ですが、ソースによっていかようにも変えられるため、アレンジは無限大。これも魅力かと思います」
■4:つくり置きできるので、パーティーに利用しやすい
「パンナコッタはケーキ類と比べて冷蔵保存ができるため、つくり置きができることから、ホームパーティーなどにも適しています」
誰でもつくれて、失敗しづらく、”味変”ができ、忙しくない時間帯につくることができる。なるほど、料理が苦手な人でも、時間がない人でも、飽きずに食べたいという人にもマッチする、まさに現代の私たちのライフスタイルや飲食店の都合に寄り添うかような特性をパンナコッタが持っているため、HITしたということがよくわかりました。
パンナコッタの発祥とは?
時短・失敗知らず・味変ができると魅力の広いパンナコッタ。ところでこのスイーツはいつごろ、どこが発祥なのでしょうか?
「パンナコッタの始まりには諸説ありますが、ヨーロッパで食用ゼラチンが生産された19世紀初めに、ハンガリー出身バレリーナが愛する人を喜ばすために工夫してつくったという説がひとつ。
名前の由来は、イタリア語で『Panna=生クリーム』に『cotta=火を入れた』という意味です」
イタリアでどのくらい食べられている?
パンナコッタは今、イタリアでどのくらい食べられているのでしょうか?
「残念ながら、イタリアのケーキ屋で、パンナコッタが並んでいることはまずないです。パンナコッタを見かけるのは、バールかトラットリアくらいではないでしょうか。
イタリアンドルチェは、家庭でマンマが手づくりするお菓子がベースになっているため、イタリアでパンナコッタを食べるのは、友人の家庭に招待されて、自家製手づくりパンナコッタをごちそうになるときが多いと思います」
パンナコッタは家庭での手づくりが基本のスイーツだったようですね。
パンナコッタのトリビア3つ
最後に、村上さんに、パンナコッタのトリビアを教えていただきました!
■トリビア1:ゼラチンがなかった時代は卵白を利用していた!
「消費者の方には浸透していませんが、12世紀にイタリアでつくられていたパンナコッタは、まだゼラチンがなかったため、生クリームを卵白の凝固作用を利用して、カスタードプリンのように湯煎で蒸して火を通していました」
■トリビア2:生クリームを牛乳で割るのは「くどさ回避」のため!
「今のパンナコッタのレシピが生クリームを牛乳で割るようになったのも、生クリームだけでゼラチンで固めると、くどくて重たいパンナコッタになるからです」
■トリビア3:卵白のパンナコッタは濃厚でなめらか!
「ゼラチンの代わりに卵白でつくったパンナコッタは、濃厚な味でなめらかな口当たり。卵白でつくるパンナコッタは、ゼラチンでつくるパンナコッタほどは長く日もちはしないですが、また違った味わいがありますので、ぜひ一度お試しください」
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 石原亜香利