色鮮やかで稀少なジェムをふんだんに使い、大胆でドラマティックなデザインのジュエリーが特徴のBVLGARI(ブルガリ)。

何十年も前からブルガリ・ファミリーとともに宝石のバイイングに携わり、クリエイティブディレクターとして活躍中のルチア・シルヴェストリ氏が来日し、Precious.jpで特別にインタビューの機会をいただきました。

極上の贅沢さにあふれたジュエリーがどうやってできるのか、また日本の文化からインスピレーションを得たデザインについてもクローズアップします。

どんなときも石に話しかけて、新しいジュエリーとしての命を与える

ブルガリでファミリーとともに40年以上、ハイジュエリーの石の買い付けをしているというルチア氏は、笑顔がチャーミングで、自身のジュエリーコーディネートもとても素敵なイタリアンマダムです。

2013年、それまで培った経験やキャリアが評価され、ジュエリー部門のクリエイティブディレクターに就任。宝石にかける情熱と創造的才能を発揮し、今に至っています。

ジュエリー・クリエイティブディレクター&ジェムバイイング エグゼクティブディレクターのルチア・シルヴェストリ氏
ジュエリー・クリエイティブディレクター&ジェムバイイング エグゼクティブディレクターのルチア・シルヴェストリ氏

日常業務について伺うと、「私はまず石を前にして見つめ、そこからスタートします。普段クリエイティブな作業を行うとき、ワックスからできたキャンバスのジェムテーブルがあるのですが、そこに石を並べてデザインを考えます。

そこで、こうしたらこの石は美しくなる、と頭の中に浮かんだものをデザイナーに伝え、形にしていくのです。どんなときも私はまず石に話しかけます。そうすると石が何かを応えてくれます。そうしていくうちに石が美しく姿を変えていくのです」。

ルチア氏が使用しているジェムテーブル
ルチア氏が使用しているジェムテーブル

「先日59カラットというとても大きな石に出合いました。原石は多面体でも、光を帯びていないものでしたので、それをスパッと切り落としたほうがいいと判断し、カボションカットに。

そうすると、その石はとても美しい色を発し、新たな魅力を見せたのです。また4Cと呼ばれるカラット、カットなども大事ですが、私は石の色味に気をつけていて、石のインクルージョン(内包物)も個性だと思い、取り扱っています。

石との会話の中で、石が私にインクルージョンもひとつの持ち味だと、訴えてくるのです。歳を重ねていくとできる女性のシワと同じで、むしろその石の特長として生かして使うように考えています」

では、実際に美しい彩りが際立ったジュエリーをご紹介しましょう。

エメラルドが極上のラグジュアリーさを生み出す、気品漂う煌めき

「ワイルドポップ」のネックレス[素材:ピンクゴールド×エメラルド×アメシスト×ターコイズ×ダイヤモンド]
「ワイルドポップ」のネックレス[素材:ピンクゴールド×エメラルド×アメシスト×ターコイズ×ダイヤモンド]

センターにかけて、石のサイズに変化をつけた雫型のエメラルドが印象的に輝いて。首元に色鮮やかでドラマティックな存在感を添えています。 

またルチア氏は、オフィスのあるローマの街からも、デザインの着想を得ているそうです。

「テヴェレ川沿いにあるオフィスのデスクから見えるローマの街の美しい景色も、私のデザインソースになっています。ローマの街中のきれいな景色は、ジュエリーの色を組み合わせるインスピレーションとなり、デザインのアイデアへとつながる自然な流れになっているのです」

日本の帯から着想を得てデザインしたジュエリーも過去に発表

「ディーヴァ ドリーム」のネックレス[素材:ピンクゴールド×コーラル×クリソプレーズ×ジェイド×スピネル×マザーオブパール×ダイヤモンド]
「ディーヴァ ドリーム」のネックレス[素材:ピンクゴールド×コーラル×クリソプレーズ×ジェイド×スピネル×マザーオブパール×ダイヤモンド]

「日本でジュエリーデザインのアイディアになったものもあります。35年ほど前から30~40回来日していますが、3年前のガラディナーのときに私が着た着物がとても美しく、そのときの帯のデザインから着想を得たネックレスをデザイン。

『ディーヴァ ドリーム』の扇型モチーフに、和の文化をイメージしたカラーリングの石を組み合わせました。さまざまな作品のなかでも、お気に入りのひとつです」

今回の来日はちょうど桜の花が満開の美しい時期だったので、桜からインスパイアされたアイテムをつくろうと思い浮かんだそうです。どんなものが生まれるのか、これからも目が離せません。

そして、自身が普段ジュエリーをつける上で、どんな風に考えているか?という質問には、「ジュエリーをつけるのは、私にとって『楽しむこと』なんです。

ジュエリーコーディネートは気持ちと連動していて、気分がいいときにはたくさん重ねてつけてみたり。同じコレクションのものを合わせるのではなく、さまざまなコレクションをミックスさせるのが好き。イタリアの女性たちは楽しみながら、自分らしく重ねづけをするのが得意で大好きです。

比較的日本の女性は、ひとつふたつをポイント使いでつける厳かな人が多いかな、と感じます。でもルールに囚われず、重ねづけを楽しんで、パッションを表現してみてください。素敵な組み合わせが生まれるはずだから!」

そんなルチア氏が手がけた最新コレクションのひとつに、「ワイルドポップ」というコレクションがあります。極上の贅沢にあふれた1980年代からインスピレーションを得ていて、なかにはブルガリとアンディ・ウォーホールの特別な絆に敬意を表したものも。

一つひとつのハイジュエリーは大胆で意外性があって、まるで前衛的なアートのような仕上がりです。見ているだけでワクワクし、気分が高まる作品をご紹介しましょう。

マイクからインスパイアされた多彩な色合いのブレスレットは、まさに「ワイルドポップ」を表現

「ワイルドポップ」のブレスレット[素材:ホワイトゴールド×アメシスト×オニキス×ルベライト×ペリドット×アクアマリン×ダイヤモンド]
「ワイルドポップ」のブレスレット[素材:ホワイトゴールド×アメシスト×オニキス×ルベライト×ペリドット×アクアマリン×ダイヤモンド]

ルチア氏が「ワイルドポップ」コレクションを初めて思いついたとき、'80年代のアメリカで沸き起こったパワフルなダンスミュージック、大胆なファッション、流行をつくり出すテレビ番組を思い出したそうです。

「このデザインをしている間、心の中ではMTVのミュージックビデオに現われたシンセサイザーやマイクに思いを馳せました」とルチア氏。

ここから、この『Pop Mics/ポップなマイク』のデザインが誕生。贅沢な彩り豊かなストーンを、マイクのフォルムにしたというユニークなアイテムに。この「ワイルドポップ」コレクションは全体的に、遊び心十分に独自の感性があふれ出し、ハイジュエリーの限界を押し広げています。

最後に、ルチア氏から日本の働く女性たちへメッセージをいただきました。

「地に足をつけてあなたの夢を追いかけて。若い世代はすぐに結果を出そうとする印象がありますが、そうではなく一歩ずつ確実に積み上げて行くということを忘れないでほしいと思っています」

イタリアの伝統的な技術や気品に満ちたデザインをベースにおきながらも、新しいことにチャレンジして斬新性を取り込んだコレクションを生み出し続けているルチア・シルヴェストリ氏。

今回のインタビューでは、芸術的なジュエリーづくりに対する情熱はもちろん、ブルガリというブランドに対する愛情を感じさせてくれました。そんなジュエリーづくりにおける裏側のエピソードも知っていると、今後ブルガリの商品を身につけたとき、とても興味深いものになるはずです。

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EDIT&WRITING :
佐野有紀