「がんサバイバー」であるモデルの藤森香衣さんに、乳がん闘病の経験を伺っている今回のインタビュー。前編では病気が見つかったときの心境を、後編では、手術当日のことから、その後の啓蒙活動に関することまでを語っていただきました。
がんを公表することで、病気への理解が少しでも広まればと思った
――― 手術を控え、藤森さんは病気を公表することに決めたんですよね。
藤森 そうなんです。マネージャーたちと相談しながら、手術の数日前にブログやSNSを通じて公表することにしました。「私が公表することで病気への理解が少しでも広がって、救われる人もいるかもしれない」。その想いを理解し応援してくれた事務所やモデル仲間の皆には、感謝の気持ちでいっぱいです。言ったら言ったでどんな反応があるかもまた、不安でしたね。バッシングされたらどうしようって。でも実際には、嫌なことを書き込む人はいませんでした。「会社には話していないけれど、私もがんなんです」など、同じくがんと闘っている人からのコメントや、がんを過去に経験した方からの励ましをたくさんいただきました。
――― 手術直前のお気持ちは?
藤森 公表するにあたり、気持ちに整理をつけながら想いをブログに綴っていたこともあって、比較的落ち着いていたと思います。あとは、それまで手術を受ける病院や手術方法を一生懸命調べたり、主治医から説明を聞いていくことで、不安要素を減らしていけたような気がします。その上で(手術に)臨めた、ということが大きかったのかな、と。自分の中に納得感があって前に進めるって、大事だと思うんです。身を預けるわけですからね。
――― 摘出と、同時再建手術についても教えていただけますか?
藤森 私の場合はリンパ節に転移していなかったので、抗がん剤治療はしていないんですね。文字通り「同時再建」なので、摘出手術をしたらそのまま形成外科の先生にバトンタッチをして、再建手術をしました。全身麻酔をしているので、目が覚めたらもうふくらみがある状態なんです。でも、それで終わりではなく、切除した胸の部分の筋肉の下に入れた水風船のようなものを数か月かけて膨らませ、皮膚を徐々に伸ばし、後からシリコンに入れ替えます。手術直後は、下から常に押されているような痛みがしばらくありましたね。腕も思うように上がらなくて。仕事もありますし、翌月のランのためにもリハビリは頑張りましたね。ランは5kmだったんですが無事に完走し、寄付金を「日本対がん協会」に寄付をしました。その後の検査の結果で、無事に治療終了。それを聞いた時は、大きな荷が下りたような、心からホッとした瞬間でした。今は一年に一度、検診をしています。右胸は、乳腺を切除しているので再発の可能性はほぼないのですが、左が大丈夫かな? というチェックですね。その不安は、ずっと背負っていなくてはならないですね。
――― そうだったんですね。発見から2年、病気と一緒に「怖さ」とも闘ってきたんですものね。30代と、若くしてがんを経験されたことで実感したことはありますか。
藤森 そうですね。まず自分の身は自分で守らないと、というのを強く思いました。働いていて貯蓄があったとしても、それが病気に持っていかれてしまう。キャリアがあっても、それがどうなってしまうんだろう、という不安もありますよね。がんの治療をしながら、同時に日々の生活のことも考えなくてはならないのは、こんなにも大変なんだと思い知らされました。こういうときに頼りになるのは生命保険かと思いますが、昔に加入した保険を見直すことも大切だと感じました。例えば、最近は入院日数が短いと聞いていましたが、私も9日間ほどと、あっという間でした。入院に対する補償が手厚い保険より、女性特有の病気だったり、先進医療に対してどこまでカバーしてくれるか、をチェックした方がいい場合もあるかもしれません。病気になってしまったらでは、加入できませんから。こういうことって、元気なときは後回しにしがちですよね。でも、「何かあったときに、心身ともに倒れてしまわない準備」を整えておくことって、自分や周りの人を守るためには外せない、重要なことなんですよね。
――― モデルのお仕事にほかに、講演活動など精力的に活動できるその源は?
藤森 私ががんを早期発見できたのは、亡くなった友人の言葉のおかげなんです。その感謝というか、恩返しの気持ちが大きいかもしれません。あとは、がんサバイバーの先輩たちから「あのときはああだった、こうだった」という話を聞くことで勇気を得たということもあるので。大げさかもしれませんが、「がんになっても、生きて(元気に)生活してる人がいる」ということを伝えたいという気持ちがあるんです。テレビドラマなどの描かれ方やネット情報のせいか、多くの人にとっては「がん=不治の病い、怖い」というイメージが先行していると思うんです。でも本当は、治ってからの人生の方がずっと長いんですよね。
――― 今後、予定している活動や目標はありますか?
藤森 私が理事を務めるNPOの活動として、ヘアメイクの仕事をしている友人と、メイクイベントを企画しているんです。抗がん剤の影響で肌がくすんで見えたり、眉やまつ毛が抜け落ちてしまったり、そんなサバイバーさんにも、そうでない方にも楽しんでもらえるような内容を考えています。プロからメイクを教わる機会もなかなかないと思うので。私は、病気になったことでこれまでの人生で出会えなかったような、いろいろな人たちに出会えたんですよね。そういった繋がりを大切にしながら、まだ顔の知らない誰かの役に立ちたいという気持ちがあります。あるとき、病院の窓口のお会計で女性に話しかけられたことがありました。「ブログ、いつも見ています。ありがとう」って。病気で辛いときは特に、ひとりで闘ってるわけじゃない、ということを知るだけで、気持ちが軽くなることだってあるかもしれないと思うので。ささやかでも、そんなお手伝いができたらうれしい。そんなふうに思っています。
「夏の肌と、ポイントレッスン」
プロのヘアメイクアップアーティストによる、夏の肌に必要な基礎知識とケアについて。夏の基礎化粧品と美容、紫外線対策、皮脂と汗で崩れたメイクの直し方…etc.
日時/7月9日 (日) 14:00~16:00 ※受付13:30〜
会場/東京都 永田町エリア
講師/Yuko (ヘアメイクアップアーティスト)
会費:/¥3,000(お土産付き)
※サバイバーの方でなくても女性限定で参加可能。
http://www.c-ribbons.com/archives/information/20170526
【参加ご希望】の方は、上記URLのお申し込みフォームより登録をお願いします。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- クレジット :
- 構成/八木由希乃