大人向けのラグジュアリーマガジン「Precious」では、2004年の創刊以来、世界で活躍するキャリア女性たちの「今」を毎号追いかけ、彼女たちがどのように仕事や人生を輝かせているのか?を見続けてきました。

仕事への情熱や楽しむ気持ちなど、15年間変わらないものがある一方で、働く場所や時間などの制限がはずれ、「働き方」は今、大きく変わってきています。

世界各都市キャリアの15年間を振り返りつつ、国内で多様な働き方を実践する女性をレポート。そして未来の「幸せな働き方」を考える一助になれば幸いです。

15年を振り返って、時代ごとに更新される「幸せな働き方」

欧米や北欧、アジア諸国と世界中のキャリアを紹介している、プレシャスの創刊以来続く巻頭連載「Life is so precious!」。15年分のインタビューを一気に振り返り、その時代ごとの働き方の傾向や特徴を探っていきます。

【2004~2008年】時間も能力も惜しみなく…、全力で疾走した時代

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2004年~2008年。

2004年、連載がスタートした記念すべきPrecious創刊号を飾ったのは、パリにある高級ホテルの総支配人フランカ・ホルトマンさんでした。フランスの格式高いホテルの歴史において、女性初となる支配人が誕生したと、当時のニュースで大いに話題となった女性です。

以降も2010年ごろまで誌面では、「国内唯一の女性」「社内で女性初」という言葉で形容されるトップキャリアが多く登場しました。

男性社会のなかでときに悔しい思いをしながらも、次々とチャンスをものにする海外のキャリア女性たちに、今後の目標を聞くと「これからは世界に向けて広げていくつもり」「10年後、20年後、もっと評価を高めたい」など、さらに大きなビジョンに向かって突き進む言葉が迷いなく出てきたことも、印象深く残っています。

また、この時期に登場したキャリア女性たちが、多くの時間を仕事に捧げていたことも特徴です。

インタビュー中には「実働7日、ほとんど休みなし。でも全然気にならないわ」「睡眠時間は3時間が平均ね。私は立派なワーカホリックよ(笑)」と話し、疲れなど微塵も感じさせないその笑顔の裏には、過酷な競争を生き抜くための、猛烈な努力が垣間見えました。

この時期、輝かしい経歴をもつ女性たちが、社会貢献活動に参加するという、新しい働き方の成功例も多く紹介しました。

日本では’98年にNPO法が施行されたばかり。NPO発祥の地であるアメリカの活動規模や資金源のスケール、その層の厚さには、本当に驚かされました。

100年以上の歴史がある、子供をサポートするNPO代表や、650万ドルの寄付金を集め公園を新しくつくる活動を行うNPO代表など、多忙を極めるキャリアたちが、社会活動にも力を注ぎ、両立させる働き方は、読者からも同じ働く女性として「感銘を受けた」との反響が届きました。

【2004~2008年】美貌もパワーもあふれる、女性トップキャリアが活躍

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1.アンジー・タンさん(2007年6月号掲載)、2.フランカ・ホルトマンさん(2004年4月号掲載)、3.ジョージェット・ファーカスさん(2004年4月号掲載)、4.ウェンディ・フォガーティさん(2007年5月号掲載)、5.カレン・ハリガンさん(2005年2月号掲載)

■1:アンジー・タンさん
アジアの物流の拠点シンガポールで、海洋産業関連の会社を共同設立した、アンジー・タンさん。超男社会のなかで活躍し注目を浴びる。

■2:フランカ・ホルトマンさん
「オテル・ド・クリヨン」総支配人フランカ・ホルトマンさん。パリの格式高いホテルで初めての女性支配人。フランスの高級ホテルで働きたい、その一心で渡仏し夢をかなえた。

■3:ジョージェット・ファーカスさん
ニューヨークのスターシェフのPRを担当する、ジョージェット・ファーカスさん。「仕事で大切なことは、人や物を的確にミックスできること」

■4:  ウェンディ・フォガーティさん
シェフの片腕として、必要な食材を探し、アドバイスやアイディアを提供する、食のコーディネーター"フォリジャー"を務める、ロンドンのウェンディ・フォガーティさん。超人気レストランのフォリジャーとして、世界を飛び回っていた。

■5:カレン・ハリガンさん
ロサンゼルスで活躍する獣医師、カレン・ハリガンさん。NPO団体に勤務し、動物を通して命の尊さを訴える。


【2009~2012年】アジアの大きなビジネス舞台で、活躍するプレシャスキャリア

2010年ごろから目立ち始めたのは、アジア諸国、特に驚異的な経済成長を遂げる、中国やインドで活躍するトップキャリアの存在でした。

「トレンドエリア外灘(ワイタン)を新生させた、中国屈指のスーパーキャリア」「シンガポール海洋産業界が世界に誇る、すご腕ウーマン」「インド初の巨大娯楽施設をつくり上げた、最注目の女性」

などの見出しとともに登場した女性たちは、スピード感をもって大きな仕事を成し遂げていき、トップに立つその顔は皆、仕事への誇りに満ちていました。

「プレッシャーもパワーの源よ!」「私は働くために生まれたの」「次の仕事でも、シンガポールの皆を驚かせるわ!」など、自らの手で新しい時代を切り拓いている充実感と、キャリアアップに燃える熱いパワーは、誌面からもありありと伝わってくるようでした。

【2009~2012年】目覚ましい経済躍進で注目を集めた、アジア諸国のキャリアたち

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1.アンジェリーナ・チャンさん(2011年12月号掲載)、2.アンヌ=ソフィー・ピックさん(2011年6月号掲載)、3.ナターシャ・プランガーさん(2012年1月号掲載)、4.シュウ・チュンリンさん(2012年5月号掲載)

■1:アンジェリーナ・チャンさん
シンガポールで超巨大プロジェクトを次々と手がけた、建築家のアンジェリーナ・チャンさん。「前例のないスケールの建物を完成させた達成感は最高の体験!」 

■2:アンヌ=ソフィー・ピックさん
掲載当時、世界でただひとりの、三ツ星を獲得したフランスの女性シェフ、アンヌ=ソフィー・ピックさん。

■3:ナターシャ・プランガーさん
シアトルの科学捜査官、ナターシャ・プランガーさん。DNA分析のプロとして犯罪解決に導く。

■4:シュウ・チュンリンさん
上海の富裕層に向けた、ドライバー付きの上質なレンタカーサービスを始めた、シュウ・チュンリンさん。旅行客の欧米人などに向けて起業。成功を収める。


【2013~2016年】強さから親しみやすさへ。時代とともにリーダーも変化

さて、再び世界に目を向けてみると、2015年ごろからプレシャスキャリアに見る女性リーダーの形にも、少しずつ変化が起きたようです。

だれもがついていきたくなるような“強い”リーダー像から、全員が能力を発揮できるチームをつくる“ともに歩む”リーダーへ。彼女たちの口からよく出てきたのは、「オープンマインド」という言葉。

「私が大切にしているのは、役割や肩書きなどのしがらみを超えた、オープンな関係をつくることよ」「孤立するのではなく、オープンマインドで情報や意見を交換し、人の輪を広げながら会社も育てるの」「若い人にSNSでの戦略を教えてもらうのも楽しい」と、自らの弱点も含めて自己開示しつつ、ポジションの垣根を超えて、ていねいにコミュニケーションを深めるリーダーたち。

連載内のコラムで全員に聞く共通質問「言われてうれしいほめ言葉は?」に対して、「(自分の仕事ぶりよりも)あなたのスタッフは優秀ね、とほめられること」と答えるリーダーが多かったのも、スタッフを信頼して大役を任せる、彼女たちのマインドが表れています。

【2013~2016年】「オープンマインド」を唱える女性リーダーが仕事の形を変える

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1.キャサリン・サージェントさん(2016年1月号掲載)、2.シャールー・ジンダルさん(2014年7月号掲載)、3.バベット・ペパイさん(2013年12月号掲載)、4.ミリアン・ロペスさん(2014年9月号掲載)

■1:キャサリン・サージェントさん
高級テーラーが軒を連ねるロンドンのサビル・ロウ・ストリートでヘッドカッターを務めるキャサリン・サージェントさん。

■2:シャールー・ジンダルさん
インドの古典舞踊の伝承者、シャールー・ジンダルさん。同時に女性の社会進出をサポートする団体の役員も務める。

■3:バベット・ペパイさん
食をテーマに、世界中の読者がリアルタイムで会話のできるサイトを運営する、ロサンゼルスの起業家、バベット・ペパイさん。

■4:ミリアン・ロペスさん
スペイン最大の食の見本市をオーガナイズする、ミリアン・ロペスさん。超多忙にもかかわらず、常に笑顔の余裕ぶり。


【2017~2020年】独自の視点やアイディアで、新たな仕事を生み出す現代

そして、数年前から現在にかけて、キャリア女性の働き方は、より自由で、多様で、柔軟に変化してきました。それを表す傾向として、仕事の規模や収益を拡大・向上させる以外に、これまでになかった仕事を“生み出す人”に注目が集まったのです。彼女たちは、あたりまえとされるルールにとらわれることなく、これまでの人生の経験をすべて生かした、柔軟な発想で新しいニーズを引き出していました。

なかには代々続く伝統の企業を引き継ぎながらも、先代のやり方を一新し“自分らしい”アイディアで、ブランド力や経営を再生させたワイナリーオーナーやホテルオーナー、ショコラティエも。

ほかには、一夜限り出現するポップアップレストランオーナーや、高齢者向けの大人の学校の代表、LGBTである警察官が対応する性的マイノリティの人たちのためのホットライン設立者など、そのアイディアはどれも“今”のニーズに寄り添い、かつだれも思いつかなかったような、革新的なもの。

スペインでは食とマーケティングのスペシャリストが、食専門の広告代理店を立ち上げ、その動きに合わせて法が改正に向かうほどの大きなムーブメントを起こしました。

彼女たちに自身の働き方について尋ねると「自分のビジョンを頼れる仲間たちと創造することが、やりがいなの」「専門分野をもつスタッフとチームで行う仕事は最高」など、多くの人を巻き込みながら、自分らしい仕事、働き方を追求していることがわかります。

【2017~2020年】自分らしさ重視の時代だから、「新しい職業」が続々登場

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1.ヘレン・ノニーニさん(2018年9月号掲載)、2.パトリシア・マテオさん(2019年3月号掲載)、3.アレクサンドラ・リマージュさん(2019年2月号掲載)、4.ホベルタ・フェルナンデスさん(2017年6月号掲載)、5.カレン・ネデーゴーさん(2017年4月号掲載)

■1:ヘレン・ノニーニさん
ミラノで活躍するブランドアドバイザー、ヘレン・ノニーニさん。企業のブランド戦略をメインに執筆業やモデルとしても活躍。オフィスはもたず美術館が仕事場だとか。

■2:パトリシア・マテオさん
マドリードで、シェフをブランディングするという新しい仕事を編み出し、食専門の広告代理店を立ち上げた、パトリシア・マテオさん。「私たちのような起業家は社会に居場所がないから自分で仕事をつくり出すのです」

■3:アレクサンドラ・リマージュさん
ベルギーの運送会社社長のアレクサンドラ・リマージュさん。倒産した会社を買い取り、オーナーに。

■4:ホベルタ・フェルナンデスさん
ブラジルサッカー界で活躍する女性CEO、ホベルタ・フェルナンデスさん。サッカークラブ内に人事部をつくり、従業員の労働環境の改善を図るなど、改革を進める。

■5:カレン・ネデーゴーさん
コペンハーゲンのホテルオーナー、カレン・ネデーゴーさん。創業者の孫のカレンさんが改革し人気ホテルに。

そして、彼女たちに共通するのは、仕事にもプライベートにも100%集中していること。時間や場所、年齢の枠を軽々と超えて、好きな仕事のためにプライベートを犠牲にするのでもなく、私生活のためにやりたい仕事を諦めたりもしない。自分のいるフェーズに合わせて工夫をしながら双方を充実させるのが、現代のトップキャリアの生き方。

毎月登場するニューヨークやミラノ、パリや上海、シンガポールなど世界各都市のキャリアたちは、私たちに長く、バランスよく、自分らしく、そして幸せに働くための極意を教えてくれているように感じます。

※記載した名前や肩書き、活動している都市名は、掲載当時のものです。

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PHOTO :
唐澤光也(RED POINT)
ILLUSTRATION :
霜田あゆ美
WRITING :
大庭典子
EDIT :
大塚將生(marron's inc.)
RECONSTRUCT :
樋口澪(HATSU)、喜田容子(本誌)