NPOの現場を走る女性たちに聞く!N女たちのソーシャル・アクション
20年間をアメリカで過ごした菊池さんは、アーティストとして作品をつくるだけでなく、マサチューセッツ工科大学での教育主任やボストン美術館でのプログラムマネージャーなどを務めるほか、アートの機能を生かした街づくりや教育など多くのコミュニティーづくりに関わってきました。
そんな折、東日本大震災をきっかけに帰国する。「最初はボランティアで被災地に通いましたが、やはり一過性の手伝いでは限界があると感じ、日本を拠点に活動することにしました」
帰国後、最初に携わったのは六本木けやき坂にあるパブリックアートを再点灯する「リライトプロジェクト」です。震災を機に、犠牲者への鎮魂の意を込めて、作者の宮島達男氏の手で消灯された巨大文字盤『カウンター・ヴォイド』の再点灯を目指し、菊池さんは林さんとNPOを立ち上げました。それが「インビジブル」の始まり。
「アートを触媒にして、人と人、人と街、人と社会がつながる。そこにある、人々の思いを引き出して可視化する活動を行うことが、私たちの役割です」と語ります。
六本木ヒルズのオープン15周年を記念して、森ビルが主催した、まちと美術館をつなぐ「紡木(つむき)プロジェクト」にも、「インビジブル」は、企画から参加。昔からいる住人やレジデンスに住む若い起業家、ヒルズ内で働くスタッフなど街にゆかりのある人々を集め、プロジェクトを進めました。
「六本木はどんな街?」「どんな未来を描きたい?」菊池さんの問いかけに活発に意見が飛び交い、主催側からも「地域の人たちの反応も熱も自治会のときと全然違う。アートを通して人や地域をどう巻き込むのかを見た」とうれしい言葉をもらました。
この地が、麻布材木町と呼ばれていたことからも、木のピースを紡いだ作品を制作し、六本木アートナイトで発表、当日は大盛況で終えました。そして今年もプロジェクトへの参加が決定しています。
「私たちの活動は、1回の成功では意味がありません。地道に持続的に行い、アートは作家による表現だけでなく、主婦や子供、高齢者などどんな人にも開かれた日常生活の一部にあることを広めていきたい」
菊池さんのお仕事年表
2011年 東日本大震災をきっかけに帰国
2014年 NPO「インビジブル」設立
2015〜2018年 「リライトプロジェクト」に「インビジブル」が企画・運営として携わる
2016〜2018年 「クラシックなラジオ体操」のディレクション
2016年 トークイベント「アーティスト ナイトアウト」を「インビジブル」が企画
2018年 森美術館主催「紡木プロジェクト」のディレクション
2018年 展覧会「inVisible Playcityー都市は見えない遊び場ー」を企画
2018年 福島県双葉郡富岡町立小中学校の再開のための「PinSプロジェクト」のディレクション
※本記事は2019年9月7日時点での情報です。
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- PHOTO :
- 高木亜麗
- WRITING :
- 大庭典子