令和を迎え、これを機にリセットして新しく始めたいことや、自分自身のこれからや生き方について想い馳せる機会も増えているのでは。

日本の歴史や文化についても、元号の起源や皇位継承の式典などを通じて、あらためて知らないことの多さに気づいた方もいらっしゃるかもしれません。現代の情報過多な暮らしの中では、身の回りのことでも精いっぱい、可視化されていないことへの「気づき」は年々難しくなっていますよね。

7人のうち1人が「貧困」?日本の子どもたちの現実

例えば、少子高齢化の進む日本はどのような社会になっていくのか。低所得世帯の授業料無償化や就学支援金支給制度が検討されるほど「ひとり親世帯の貧困」「こどもの貧困」が深刻な社会問題となっているのをご存知でしょうか。

少し前のデータになりますが、「子どもの相対的貧困率」は2015年時点で13.9%。これは子ども7人のうち1人、実に約280万人の子どもたちが、この日本で貧困で苦しんでいるという数字です。

いわゆるシングルマザー・ファーザーと呼ばれる、ひとり親世帯の相対的貧困率は50.8%。2人に1人が貧困状態にあることを示します。にわかに信じがたい話ですが、想像以上に多いと感じるかもしれません。

※平成28年 国民生活基礎調査(厚生労働省)データより 〔画像引用元:おてらおやつクラブ

貧困のために十分な教育が受けられない、毎日の食べ物にも困っている子どもたちがいる。と聞くと、どことなく海外の発展途上国を思い浮かべてしまいがちです。

しかし、震災や災害支援など、大きくメディアに取り上げられて話題になるなどの可視化がされていないだけで、切実に救いの手を必要としている子ども達は身近に存在するんです。

日本の将来を担う子ども達を取り巻く、さまざまな課題解決のために立ち上がったNPO団体は各地に存在しますが、非営利という特性上、多くの人手やコストのかかる全国規模での働きかけはハードルの高い状況にあります。

そんな中、ありそうでなかった取り組みに手を挙げ、多くの人の心を動かしはじめたのが、奈良県にある安養寺を拠点とする「おてらおやつクラブ」でした。

取り組み自体がGOOD!│2018年度グッドデザイン大賞「おてらおやつクラブ」

グッドデザイン賞はこの「Gマーク」でご存知の方も多いと思います。形が見えるものや手に取れるものだけでなく、暮らしの質の向上や社会の課題やテーマの解決に対し、どのようにデザインが活かされているか評価されるもので、毎年国内外の多くの企業や団体が参加する国際的なアワードです。

2018年度グッドデザイン大賞(内閣総理大臣賞)を受賞した、特定非営利活動法人おてらおやつクラブ(事務局:奈良県磯城郡田原本町、代表理事:松島靖朗)。授賞式の模様。

「貧困問題解決に向けた活動」そのものがグッドデザインである、という賞本来の意義にもばっちりハマった「おてらおやつクラブ」は、奈良県・安養寺を拠点に、2014年より本格的に活動をスタート。

きっかけは、2013年に大阪で起きたとある母子家庭の餓死事件に衝撃を受けた安養寺住職の松島氏が、お寺が何か手を差し伸べることはできないのだろうかと、支援団体の方々を訪ねたことが始まりでした。

日本古来の「営み」を、現代社会にデザインし直す

生きるための食糧も十分に得られない子どもたちや、その親が求めている支援は、やはり食べ物。お寺にできることはすぐに見つかりました。

気持ちとして「お供え」されるお菓子や食品。お盆やお彼岸など、たくさんお供え物が集まる時期には、ときに「もったいない」ことをしてしまう状況があり、近年よくニュースに取り上げられる、賞味期限切れや在庫処分などで食品が大量廃棄される「フードロス問題」にも通じるところがあると、松島氏は常々感じていたそう。

お供えしたものが、めぐりめぐって、本当に必要な人に届けられる。素敵な循環が生まれています。

せっかくのお気持ちや食べ物を無駄にすることなく、仏様からの「おさがり」として、さまざまな事情で生活に困窮している世帯へ「おすそわけ」してみよう。そんな風にまず地域で出来ることから動き出した活動が、インターネットやSNSを通じて情報拡散され、全国各地のお寺、支援団体、企業、個人から賛同の声がかかるように。

今では全国1,174の寺・連携430支援団体が各地で活動、この取り組みによって毎月10,000人の子どもたちが、おすそわけを受け取ることができるようになりました(2019年5月現在)。

松島氏は「支援を求める世帯とのコミュニケーションは、メールで細やかにやり取りされることが多い。本当に困窮している方なのかどうかは、多くのやり取りの中から直感的に解かることもあるし、仏の御心で接している面もある。

救済を求める勇気もなく孤独や孤立の中にある方は、まだまだ居る。子どもの貧困だけでなく、お寺や仏の教えの元に解決できることは他にもあるんじゃないか」ともおっしゃっていました。

アジアからの反響に驚き

2019年4月には中国・杭州で開かれた「Alibaba Design UCAN 2019」に招かれ、20-30代で98%を占める若きデザイナー4,000人を前に登壇も。多くの女性参加者から「素晴らしい取り組み」と反響があった。

持続可能な社会の実現、循環型社会など、未来につながる取り組みがクローズアップされる昨今の世相ともマッチしたこの取り組み。

日本各地のお寺がこれまで地域社会で行ってきた営みを、現代的な仕組みへとデザインし直した、おてらおやつクラブの掲げる「利他」の施しは、ひとびとの心の拠り所を再定義し、凝り固まった社会問題に対して一石を投じることができるのかもしれません。

発展めざましい中国の若手からの反響は、仏教の教えが、現代にも新たな気付きをもたらすものであることを感じさせてくれます。アジア全体がこのムードに包まれていくと、より明るい未来が見えてくるような気がしますね!

私たちには、どんな支援ができるの?

心の拠り所として、人が集まる場として。お寺が本来持っている機能を、再デザインする動きに注目が集まっています。

■1:WEBで完結できるドネーション│お金を送る(寄付)

「おてらおやつクラブ」運営支援として寄付をする(銀行振込/郵便振替もしくはクレジットカード決済)という、直接的な方法がまずひとつあります。1度だけでもいいし、毎月500円から継続して支援することも出来ます。必要資金の目安は、月1,000円で1世帯のひとり親家庭に「おすそわけ」ができるとのこと。

5,000円以上寄付すると、「おてらおやつクラブ」が発行するフリーマガジン『てばなす』最新号を読むことができます。

寄付する:https://otera-oyatsu.club/donation/offer/

■2:書棚を整理して支援│古本を送る(古本勧進)

フリマに出したり身内に配るほどの手間が掛けられず、捨てるには心許ない…自宅に眠っている古本・CD・DVDを断捨離するいいキッカケになりそうなのが、古本勧進です。

提携会社に電話での集荷依頼ができ、査定買取金額が「おてらおやつクラブ」へ寄付されるというもの。同時に書き損じハガキも受け付けてくれます。段ボールにまとめて送るだけの「手間いらずプラン」も。

古本勧進する:https://otera-oyatsu.club/donation/book/

■3:フードロス解消を兼ねた支援│おやつを送る

防災用の備蓄食材(賞味期限が1か月以上余裕あるもの)、食べきれない贈答品のお菓子、イベント出店などで余剰が出たストック、さまざまな状況で処分せざるを得なくなった食品類は、「直接支援」の支援物資としておすそわけを必要としている世帯や子どもたちへと配布されます。

おやつを送る:https://otera-oyatsu.club/donation/snack/

■4:ふるさと納税と支援を両立!│返礼品の宛先にする

通常は納税者が受けとる自治体からの返礼品送付先に「おてらおやつクラブ」を指定すると、連携する支援団体を通して子どもたちへ届けることができます。

対象となる返礼品は、お肉やお魚など要冷蔵品以外。特にお米(白米、玄米)、麺類(うどん・そば・そうめん)、果物(みかん、りんご等)、野菜(じゃがいも、さつまいも、にんじん等)、加工品・調味料(味噌・醤油・塩・だし・ドレッシング・油・缶詰・ジャム・乾物・海苔・レトルト食品)など。

保存食や、毎日の食事に必要な食材であるほど助かるようです。

ふるさと納税:https://otera-oyatsu.club/donation/furusato/


無理なくできる範囲で、誰かの切実な問題を救うことができるなんて素敵なことです。見返りを求めず「ちょっと良いことした」気分って、めぐりめぐって自分自身の幸福度も高めてくれるような気がしませんか?

どこかしら昨今、若い世代を中心に、モノを所有することよりも、人の想いやつながり、ストーリーに価値を見出すムードが進んでいます。現在の支援者は、1,000円(1人の子どもにおすそわけができる資金目安)の継続支援が多く、学生、社会人、ご自身も戦後ひとり親家庭にならざるを得なかった寡婦の方や、アジアから日本に留学している学生など実にさまざま。見えない何かを感じ取った方が、静かにその手を差し伸べ始めているんですね。

ギブミー! な自我欲求が強まりすぎると、執着心からくるダークな思いにも支配されがちです。仏様を拝むときにも「いつも見守ってくださってありがとうございます」と、気持ちの中から余分な欲をてばなすことをこころがけるだけで、新たな時代によりよいご縁をつかむことができそうですよ。

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EDIT&WRITING :
飯塚美穂