Van Cleef & Arpels(ヴァン クリーフ&アーペル)の世界は、いつでも夢と希望に満ちあふれています。
本記事では、1年に1度発表される特別なハイジュエリーコレクションにフォーカス。「キャトル コントゥ ド グリム」の誕生秘話や、制作に2,060時間以上も要した特別なネックレスの知られざるストーリーなど、伝説級の制作秘話を、ヴァン クリーフ&アーペル ジャパン プレジデントであるアルバン・ベロワーさんに特別にお聞きしました。
夢と希望が詰まった「ヴァン クリーフ&アーペルのキャトル コントゥ ド グリム」の誕生秘話を特別公開
Q1:ハイジュエリーコレクション「キャトル コントゥ ド グリム」の誕生秘話を教えてください。
A. 代表的なハイジュエリーコレクションというとシェイクスピアの『真夏の夜の夢』を思い浮かべる方も多いかと思いますが、ヴァン クリーフ&アーペルはご存知の通り、文学と関係性の深いメゾンです。
グリム童話を題材にしたのは今回が初めてですが、詩的な表現が多く使われているという点でも、色とりどりの花々といった印象的な植物や動物が多く登場するという点でも、メゾンの世界観を語る上で親和性が高いのでは、ということで、今回コレクション化が決定しました。
Q2:数ある話の中から、『黄金の鳥』『12人の踊る女王』『三枚の羽根』『ブレーメンの音楽隊』の“4つのグリム童話”が選ばれた理由は、どんなところにあったのでしょうか。
A. なぜこの4つの物語を選んだかというと、ジュエリーと紐付けやすいものが多数、登場していたからです。
例えば、『黄金の鳥』ですと、タイトルに「黄金」という言葉が入っている通り、「黄金のりんご」「黄金のかご」「黄金の鳥」「黄金の馬」など、“黄金”というキーワードのものが多数登場します。金を扱っているジュエラーとしては、制作面でもデザイン面でも、リアリティーがありました。
『12人の踊る女王』には、王女たちが着用しているドレスやジュエリー、そして自然を表現したシーンが多数登場しますし、『ブレーメンの音楽隊』には動物が描かれています。そして、『三枚の羽根』にはカエルの王女や王冠、息子のひとりがリングを探しに出るシーンなど、いずれもジュエリーに落とし込むインスピレーションソースとして、可能性の幅が広がったのです。
Q3:それぞれのストーリーにおいて、どのような視点から「キャラクターやシーン」を選んで、ジュエリーに落とし込んでいるのでしょうか?
A. それぞれの物語にはヒーローをはじめ主役級のキャラクターが登場し、話が進むなかで、それらの登場人物が感情を表現する瞬間が出てきます。そのなかで、ポジティブなムードや、友情や愛情を如実に表しているシーンなど、ヴァン クリーフ&アーペルがもつ精神性と近い表現を選び、ジュエリーに落とし込んでいます。
例えば『12人の踊る女王』では、踊るシーンが印象的ですので、そのシーンを切り取っています。そこに登場する王女が着用しているネックレスなどの小物にも、サプライズがあるんです。
小道具として出てくるワインカップのなかの“ワイン”がルビーで表現されていたり、お城にはビルマ産の希少なサファイアが使用されたりしているんです。アプローチはさまざまですが、実は、ディテールにかなりこだわりが隠されているんですよ。
Q4:代表的なジュエリーを、ストーリーとともに解説いただけますか?
A. ストーリーからインスピレーションを受けて描く場合には、シーンや感情など抽象的な表現を示すアプローチと、動物や植物など直接的なものを示すアプローチの2パターンがあります。
例えば『黄金の鳥』コレクションには、フルーツモチーフのリングや植物を連想させるブレスレットなど、自然の恵みを感じさせるアイテムがそろいます。
水の湧き出るようなイメージの、生き生きとした湖を想起させるジュエリーも素敵です。
籠の中から動物が覗き込んでいるような、可愛らしいモチーフのデザインもありますよ。
『三枚の羽根』コレクションでは、末の王子が選んだカエルが王女へと変身した、ビューティー&エレガンスを表現した麗しいジュエリーも。
夜に静かな森の中に入っていき、夜空を見上げると……!? 美しい景色を目にした瞬間の感動を表現した、非常にミステリアスなネックレスにも惚れ惚れします。
石を敷き詰めて、カーペットを表現したジュエリーも壮大です。
そのほかにも、ペンダントトップをクリップとして使用できたり、長いネックレスを短くして使うことができるなど、「変身」するアイテムも潜んでいるんです。このように、どのジュエリーにも職人の遊び心が隠されているので、ひとつひとつ丁寧に眺めながら仕掛けを紐解いていくというのも、新たな一面が見えて楽しいかもしれませんね。
Q5:実際にジュエリー制作をする過程で、職人技術など苦労する点があれば教えてください。
A. ヴァン クリーフ&アーペルの物づくりは、まず、インスピレーションやアイディアが軸となってスタートします。ストーリーを表現するピースをつくるために、イメージの仕上がりをドローイングし、石を探します。そこから、技術的に可能かどうかを検証。ここでは、デザインスタジオとアトリエを行き来しながら幾度となくチェックし、調整する作業が続きます。
これらの段階を踏む上で職人にとってのチャレンジとしては「どれだけ最初のアイディアに忠実にジュエリーをつくり上げるか」という点に尽きるんです。だからこそ、完成したジュエリーピースすべてにはストーリーがあり、物語を奏でられるのです。
それこそがヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーの真髄を築いてきましたので、テクニックありきで進行することはほとんどありません。“テクニックはあって然るべきもの”という考え方ですので、クリエイティビティーをサポートするためのスキルという認識です。
Q6:今回の制作で、最も時間を要したピースを教えてください。
A. 2,060時間以上かかった、こちらのネックレスです!
着用した方の首にぴったり寄り添うようなカーブへの仕上げ、複数のストーンをセットしていますが、重くなりすぎないような加工、そして、見た目の美しさ。すべてにこだわったため、相当な時間を要してしまいました。
ホワイトゴールドとピンクゴールドを両方使用しているという点でも、プロセスが増えていますね。それから、セッティングをより美しくするための石のリカットにも時間がかかっています。それから……と、言い出したらキリがありませんが、メゾンの集大成ともいえる職人技術が集約されている唯一無二の作品です。
Q7:今回のハイジュエリーコレクションを通して、どんなことを伝えたいですか?
A. 「キャトル コントゥ ド グリム」コレクションは、ヴァン クリーフ&アーペルの世界観を伝える上でパーフェクトなコレクションといえます。メゾンがもつ詩的でポジティブ、カラフルでミステリアスなムードを、クリエーションを通して伝えているのです。
さらには、「クラフツマンシップ(職人とメゾン双方のクオリティー)」「貴石といわれる希少価値の高い石のラインナップ(ビルマのサファイア、コロンビアのエメラルド、モザンビークのルビーなど、クライテリアの高い石)」「ディテールへのこだわり」という、3つの重要なポイントも網羅しています。
石のクライテリアといいましたが、単純に色やカラット、カットやシェイプという物質的なことだけでなく、メゾンが厳選する「感情を揺れ動かす比類なき貴石たち(ピエール ド カラクテール)」にもあるように、石で感情のベクトルを表現することにも重きを置いています。
コレクション自体がアイデンティティーともいえるヴァン クリーフ&アーペルのハイジュエリーコレクションには、歴史や文化、芸術など時代背景のみならず、職人などメゾンに関わる人、すべての愛情が灯されているのです。一言では語り尽くせないジュエリーを、多くの方に見ていただけるとうれしいですね。
以上、ヴァン クリーフ&アーペル ジャパン プレジデントであるアルバン・ベロワーさんに、ハイジュエリーコレクション「キャトル コントゥ ド グリム」の制作秘話をお聞きしました。
歴史あるメゾンが年月をかけて完成させたコレクションには、職人たちの葛藤や、あふれんばかりの愛情が詰まっています。その美しいジュエリーの魅力はこちらからぜひのぞいてみてください。
問い合わせ先
関連記事
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- EDIT&WRITING :
- 石原あや乃