いつもの街の景色がステキに変わる! 猪飼尚司の街ぶら、アート散歩

猪飼尚司さん
編集者
(いかい ひさし)大学でジャーナリズムを専攻後に渡仏し、1996年に帰国。現在はデザイン、アート、建築を中心に活動。インテリアスタイリスト・作原文子らとの新著『Tools 2019』(オークラ出版)が好評発売中。

退屈な待ち時間にこそ「成田空港」に散らばったアートをゆっくり鑑賞するべし

アートとデザインの展覧会「フィスカース・ヴィレッジ・アート&デザイン・ビエンナーレ」をチェックするため、フィンランドへ。しかし、機材トラブルでまさかの7時間待ち。こんなときこそ思いきって成田空港を楽しもうと、散策開始。

■1:鮮やかな青と赤の対となる彫刻『B.S.EAST/V.O.WEST』

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B.S.EASTは東の雲(Blue Sky East)、V.O.WESTは、西の波(Violet Ocean West)の意味。太陽が東の空から昇り、西の海に沈む様子を表している。

まずは、出国ゲート前の作品から。待ち合いのベンチのなかにそびえる巨大な作品は、「スピード」をテーマに創作活動を続ける中村哲也の『B.S.EAST/V.O.WEST』。鮮やかな青と赤が対照的な作品です。

■2:のびやかに天女たちが舞うステンドグラス『飛翔する天女たち』

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粟津 潔は1929年東京都生まれ。独学で絵とデザインを学び、書籍の装丁や劇場ポスターを数多く手がけた。2009年に逝去。

続いて、レストランやショップのあるエリアのエスカレーター脇に掲げられた大きなステンドグラスは、戦後まもない日本でグラフィックデザインの礎を築いた粟津 潔(あわづ きよし)による『飛翔する天女たち』。彩り明るく、のびやか。天女たちが自由に舞う大胆な構図が印象的です。

■3:光と角度によってさまざまな姿を見せる金属彫刻『時の花』

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何層にも重ねられたステンレスを、異なる色に加工。天窓から入る光の具合によって、変化を繰り返す。

出国ゲートを越えた先にも、アート作品はいくつも置かれています。今回利用した第1ターミナルの南ウイング3階・第5サテライトのいちばん奥には、ステンレスを自在に操る美術家、坂上直哉の『時の花』。天井から吊り下げられた金属彫刻は、見る角度によってさまざまに形を変えるので、周囲をぐるぐると回りながらゆっくり鑑賞。

■4:日本の歴史や工芸を描いた巨大な壁画『日本/全ては繋がっている』

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黄金の国、ジパング。日出ずる国、日本をイメージしながら、金魚が時空を超えて飛ぶ様子を壁画に発展させた。23枚のグラフィックパネルは、それぞれ内容が異なる。

そして最後に、南ウイングと北ウイングをつなぐ中央ビル通路には、グラフィックデザイナー髙橋正実が、30mにわたる2枚の壁画『日本/全ては繋がっている』を製作。こちらは作品を鑑賞しながら、日本の歴史や伝統、工芸の技を同時に知ることができるユニークな作品です。

このほかにも、山口晃、堀木エリ子など、著名なクリエイターの作品も多数。もちろん第1だけでなく、第2ターミナルにもパブリックアートは設置されているので、時間が許す限りたっぷりとご堪能を。

※本記事は2019年11月7日時点での情報です。

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PHOTO :
剣持亜弥・宮田典子(HATSU)、喜多容子(Precious)