仕事で信頼を得るのは、どれだけキャリアを積んできても、なかなか難しいもの。人と人との心のやりとりだけに、毎日の積み重ねがモノを言います。そこで3つのシチュエーションごとに、「信頼されるビジネスパーソンになるための良習慣」を3人のビジネスマナーの専門家にお聞きしました。
タイムマネジメントがうまくいく良習慣
信頼されるビジネスパーソンになるためには、時間を守ることが大切。タスクがいくつもあるときには、優先順位のつけ方が問題になります。
これまでに30冊超の書籍を出版し、アーティストとしても活躍する-夢-実現プロデューサー・山﨑拓巳さんが実践する良習慣は――。
■1:優先順位を考える前に使える時間をすべて使ってみる
仕事に優先順位をつける前に「使える時間をすべて使い、口内炎をつくるぐらい働いてみる!」と山﨑さん。
「そんなときに、新たに重要な仕事がやってくる。そのときに『何を手放すか?』という問いが自分の中で発せられます。ここでようやく『優先順位』の出番です」。本当に時間をすべて使っているときには、優先順位は自ずと決まってくるものなのです。
■2:いちばん新しいものから対応する
信頼されるビジネスパーソンの優先順位のつけ方について、アドバイスをもうひとつ。山﨑さんの知人は、大量に受け取るお歳暮を管理するとき「今日届いた明太子から開けなさい!」 と口にしたそうです。
理由は、遅れている仕事から手をつけると、すべてが遅れるから。たとえば、大量にたまったメールは新しいものから返信する。すると、「すぐに返事がいただけた」と相手は喜びます。「勇気のいる選択ですが、ぜひ、実験してみてください」。
■3:自分のつけた優先順位に振り回されないで「少しのあそび」を入れる
山﨑さんによると、仕事には今やるべきこと(to do)と、どんな自分で仕事をしたいのか(to be)がある、とのこと。その両方の予定を手帳に書き込み、あとは「適度に本気に、適度に抜きながら物事を遂行します。このイイ加減が、よい加減なのです」。
ひとまずの目安は、優先順位の20%をこなすこと。「上位20%を行動に移せれば、おおかたのことは達成につながると言われます」。うまくいき続けるサイクルを手に入れた人に、信頼は集まるのです。
初対面の人とのやりとりがうまくいく良習慣
面識のない方との間に信頼関係を築くことは至難の技。しかし、仕事の場面では初対面の方とのコミュニケーションは非常に多いことですよね。魅力が伝わる「愛されマナー術」を主宰する、マナーコンサルタント・樋口智香子さんが心がけていることは……。
■4:どんな人ともとにかく笑顔で会話する
笑顔はコミュニケーションの入り口。中でも樋口さんは、宅配サービスの配送員さんやエレベーター内で会った近所の人、といった日常のちょっとしたやりとりでも笑顔を心がけているそう。「“人と会話する=笑顔”が習慣になり、表情がやわらかくなります」
■5:自分の話をするのではなく相手のことを知ろうとする
相手の勤め先など地域のお話や、仕事に関する話題を糸口に「相手のことを知ろう」という気持ちをもつことが、心の距離を近づける秘訣。たとえば、「今のお仕事をするきっかけが、何かおありだったのですか?」などと質問すると、相手は自分のストーリーを話してくれるそうです。
■6:プライベートに関する自己開示で相手との距離を縮める
初対面の方とのコミュニケーションは、緊張を伴いますよね。しかし、会話の中でプライベートに関する話題をすると緊張がほぐれます。
「例えば私の場合、高校生の息子の話をすると一気に親近感をもっていただけます。あまり緊張感を与えすぎないというのも、信頼を得るポイントだと思います」(樋口さん)
そして、難しいのがメールなど非対面コミュニケーション。
■7:メールやメッセージの返信は24時間以内に送る
樋口さんは、ビジネスメールやプライベートのLINEなども含め、メッセージには24時間以内に返信を心がけているそう。
「イベントなど参加の可否を問うメッセージは特に早く返信し、検討してからお返事をする場合でも、まずはメールを受け取ったことを連絡する一報を入れています」(樋口さん)
ミスをしてもすぐに信頼を取り戻せる良習慣
仕事で失敗したとき、信頼は大きく揺らぎます。一方で、その失敗をうまく取り返せれば、より信頼を強固にすることも。失敗を信頼に変えられるビジネスパーソンの良習慣を、現役ホテルフロントスタッフとして勤務しながらフロント接客トレーナーとしても活躍する、古岡めぐみさんにお聞きしました。
■8:ミスをしてしまったら、すぐ相手にきちんと謝罪をする
まずは「信頼を得るためには『礼儀正しいこと』が基本です」という古岡さん。
「たとえばお客様のチェックインや滞在中にミスが起きてしまったときは、まず本人がきちんと謝罪をすることが大切」といいます。そして重要なのは、謝罪のしかた。失敗からなるべく時間をおかず、きちんと自分の口から伝えることで、誠意が伝わります。
■9:ミスしたことが恥ずかしくても、背筋を伸ばして顔を上げる
ミスをしてしまうとうつむきがちになったり、悲観的な言葉を発してしまったり。「そうではなく、顔を上げて誰からも話しかけてもらえるような雰囲気に切り替えるんです」。
これを古岡さんは“表情管理”と呼びます。「鏡を見るなどして表情管理をし、姿勢を正すことで、気持ちも晴れ、相手からも受け入れてもらえて信頼が得られやすくなります」
■10:普段から途中で相手の話を否定せず最後まで聞く
職場で起こったミスは会社全体で共有すること。そして、本人以外の担当者もその方にお会いしたときに、すぐ謝罪することが信頼回復につながる、と古岡さん。
ミスを共有するためには、すぐになんでも話せる環境づくりが大切です。
「すぐに怒ってしまうと、次に何かが起こったときに、伝えようという意識がなくなってしまいます」。風通しのよいチームほど、失敗を取り返し信頼に結びつける力を備えているものなのです。
信頼を得るために、3人のビジネスマナーの専門家がもっとも大切にしていることは、「『速さ』。素早く仕上げ、お届けし、報告する」(山﨑さん)、「小さなことでも、嘘をつかない」(樋口さん)、そして「約束を守る」(古岡さん)。
ひとつひとつは些細なことであっても、積み重ねが大きな成果を生むのが世の常。「習慣」のもつ力を信じ、まずは自分のできることから始めれば、信頼される上司やビジネスパーソンに近づくことができます。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- クレジット :
- 文/酒寄美智子