身長156cmのインテリアエディターが「大人の家具選び」を実際に見て・触って・座ってレポート、より読者の皆様にわかりやすくインテリアをご紹介する連載企画「身長156cmのインテリア」第22回目です。

本記事では、イデーの一人がけソファ「エンブリオチェア」の魅力をご紹介します。

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アートのようなイデーの家具のなかでも、力強いフォルムが目をひく黒いエンブリオチェア。

凝り固まった心と体をほぐしてくれる!座れるアート「エンブリオチェア」

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【商品名】「エンブリオチェア 1988」【ブランド】イデー【価格】¥266,200(税込)【サイズ】幅830×奥行890×高さ800 座面の高さ460mm 21kg【材質】本体:ネオプレーンカバー(ブラック)、脚:アルミニウム

力強いカーブと踏ん張った脚、生命力にあふれたエンブリオチェアは、空間の主役になり、一度みたら忘れられないカタチをしています。一人がけソファは、ライフスタイルの変化にも柔軟に対応できるので長く大切にできるものを選びたいところ。もちろん座る姿の美しさも重要です。

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くぼみに収まるように横座りしても心地いい。

アートのようなたたずまいのエンブリオチェアは、一見どう座るのか迷ってしまう形状をしています。

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普通に正面に腰かけると、腰がカーブに沈みこみ、足が浮き不安定な姿勢になります。
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足がつくように端っこに座ると、腹筋に力を入れる必要があり軽いエクササイズのようです。

いつもの「正しい美しさ」と思っている座り方ではくつろげません。実はそれこそが、エンブリオチェアの魅力でもあるのです。少しお行儀悪いのですが、またがって背を抱きしめるようにして座ってみてください。

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お腹の丸みをエンブリオチェアのカーブに預けて、あごや頬を乗せると、大切なものを全身で抱きしめているような安心感が広がります。

これがデザイナーの提案したエンブリオチェアの座り方です。エンブリオは「胎児」という意味です。抱きしめる心地よさを味わいながら、「こういう座り方も、ありかも」と、心と体の緊張がほどけるような気がしませんか?

家は、本来の自分に戻れるための場所。さまざまな立場で、日々「正しい判断」を迫られることに慣れても、自分のなかにあるやわらかな気持ちを大事にしながら毎日を過ごしたいですよね。

エンブリオチェアをデザインしたマーク・ニューソンは、デザイン界のスーパースター

マーク・ニューソンは、1963年オーストラリアのシドニー生まれ。Apple Watchをはじめ、カトラリーからジェット機まで、非常に幅広い分野で活躍するデザイン界のスーパースターです。大胆な曲線を描くシンプルで力強いフォルムと鮮やかな色使いは、時代を超えた魅力を感じさせてくれます。

幼いころから、母親に連れられ、さまざまな国を旅してきた彼は、ロンドンの学校で10代を過ごしたのち、シドニーでジュエリーデザインを専攻します。87年に東京へ移住し、イデーで本格的にデザインに従事しました。91年パリにスタジオ設立し、その後ロンドンに移住。

ルイ・ヴィトン、モンブラン、エルメス、ナイキ、など多くの一流ブランドと良好な関係を築き、サザビーズ、クリスティーズ、フィリップスのカテゴリのオークション総売上の24%を占めました。MoMAやV&A、ロンドンのデザインミュージアムなどに永久保存多数。

2005年にはアメリカのタイム誌で「世界で最も影響力のある100人」に選ばれ、2012年には大英帝国勲章のコマンダーを受賞します。「Apple Watch」の設計に初めて携わって以来、 Appleで特別プロジェクトのデザイナーを務め(2014)、ほかのクライアント企業でも上級職を務めました。(2014)

若かりし日のマーク・ニューソンの才能を見出し、世にリリースしたイデー

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骨董通りにあったイデーで「ロッキードラウンジ」に座るマーク・ニューソン。当時イデーが発行していた雑誌「ROJAK」より

発売当時イデーでの販売価格は300万円ほどだった「ロッキードラウンジ」は、デザインオークションの分野で史上最高額をつけたことでも有名です。初期のモデルは、マークが23歳の大学卒業時に奨学金を得て開催した個展で発表された作品でした。

のちに世界的スーパースターになる若き日のマーク・ニューソンは、当時親しくしていた友人の紹介でイデーのファウンダー・黒崎輝男氏に会います。

「黒崎さんは僕の作品の資料を見て、すぐに気に入ってくれた。そして僕のデザインを製品化する機会を与えてくれたんだ。実際、イデーとの仕事は僕にとって大きなステップだった。初めて自分のデザインが会社に採用され、それが生産されたわけだからね。

若いデザイナーにとっては、誰かが『君のスタイルは信頼に値する』と言ってくれたようなもので、とても勇気づけられた」(「ROJAK vol.0 IDÉE magazine」P.77 イデー発行‘98より引用)

エンブリオチェアは、黒崎氏からの依頼で、マーク・ニューソン自ら手がけた樹脂型を使って、現在でも製作されています。工業製品でありながら、デザイナーの手跡のあるアート作品でもあります。

ウェットスーツ素材のカバーは、イデースタッフがサーフィン仲間に頼み、一から起こした型紙を使っています。エンブリオチェアは、のちにイタリアの「カッペリーニ」からも発売されていますが、オリジナルはイデー現行品です。

デザイナーの息吹が伝わるエンブリオチェアで、自分を解放してみたいと思いませんか? ぜひ店頭で、抱きしめる心地よさを体感してみてください。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM