年末の一大イベントといえば大掃除。今年の汚れは今年のうちに対処して、すっきりとした気分で新年を迎えたいものですよね。

しかし、毎年気合いを入れて大掃除に臨んでいるわりには、なかなか思うように家の中がきれいにならない、と感じている人は多いのではないでしょうか。それ、掃除のやり方が根本的にまちがっているのが原因かもしれません!

日本そうじ協会・理事長の今村暁さんによれば、ごく身近なツールである掃除機ですら、実は正しく使えていない人が少なくないのだそうです。

今村さんから、大掃除でやってはいけないNG行動について、お話をうかがいました。

大掃除でやってはいけないNG行動7選

■1:窓を開けずに掃除を始めるのはNG

大掃除の第一歩は窓を開けること
大掃除の第一歩は窓を開けること

家中にたまった汚れは、たった1日ではとても対処しきれません。大掃除は大晦日だけに行うのではなく、12月に入ったら少しずつでも進めていくべきですよね。

とはいえ、「そろそろ大掃除しなきゃ」と思いつつ、「年末までまだ時間はあるし」と、なかなか重い腰が上がらない人が多いのでは? そんな人たちに向けて、今村さんは次のようにアドバイスしています。

「掃除をするときに、真っ先にやるべきなのは窓を開けること。これまで掃除指導のために、多くの企業や家庭を訪問してきましたが、いわゆるゴミ屋敷、汚部屋では、ほぼ例外なく窓を閉め切って、室内の空気が淀んでいます。そんな環境では、人は無気力になり、ますます掃除することができません。

掃除を効率的に行うには、換気が非常に重要です。この時期は寒くて窓を開けたがらない人が多いですが、何はともあれ、窓を開けて室内に新鮮な空気を入れましょう。それが掃除スタートの合図のようなものです。

窓は1か所だけ開けるのではなく、もし対面にも窓があれば、両方開けて空気の流れをつくりましょう。窓が部屋に1か所しかない場合は、ドアを開けたり、換気扇や扇風機を活用したりして、空気を循環させることをおすすめします」(今村さん)

寒いからといって窓を閉め切ったままでは、いくら掃除機をかけたり拭き掃除をしたりしても、舞い上がった埃が室内に残ってしまうおそれもあります。大掃除の基本ルールとして、まずは窓を開放しましょう。

■2:掃除機のヘッドを素早く動かすのはNG

掃除機は「1畳=1分」を目安とする
掃除機は「1畳=1分」を目安とする

部屋のゴミや埃を取り除くには、まず掃除機を正しくかけることが欠かせません。「掃除機がけなんて、誰でもできること」と侮るなかれ。今村さんによれば、掃除機を正しく扱えていない人が、かなり多いというのです。

「掃除機の使い方の誤解でまず多いのは、ヘッドを動かすスピードが速すぎることですね。特に、フローリングは抵抗や負荷がないので、ヘッドを勢いよく滑らせるように使っている人をよく見かけますが、それではゴミが十分とれません。

掃除機は“たたみ1畳を1分間”を目安にしてゆっくりかけるようにしましょう。また、カーペットの場合は、ゴミや埃がからみついていることがあるので、一方向からだけでなく、縦・横の両方からかけることを意識してみてください」(今村さん)

あなたは掃除機を1部屋かけるのに、どれくらい時間をかけていますか? “1畳1分”というルールを守れているかどうか、ぜひチェックしてみましょう。

■3:掃除機のヘッドを床に強く押し付けるのはNG

ヘッドを強く押し付けるのは逆効果
ヘッドを強く押し付けるのは逆効果

「ヘッドを強く床に押し付けても、吸引力が変わるわけではありません。むしろ、あまり強く押し付けると、ヘッドの向きが曲がり、逆効果になるおそれもあります。

また、力を込めるとおのずと腰が曲がって疲れやすくもなるので、掃除機のハンドルを片手で持って優しくかけるようにしましょう」(今村さん)

肩の力を抜いて、ゆっくりとヘッドを動かすことを心がけましょう。

■4:壁に掃除機のヘッドをぶつけるのはNG

壁の手前で寸止めして最後に壁際を掃除
壁の手前で寸止めして最後に壁際を掃除

「部屋を隅々まで掃除しようとして、壁に掃除機のヘッドをガンガンぶつけていると、壁の幅木(床と接する部分に張る横木)が傷だらけになるおそれがあります。

掃除機は壁の手前で寸止めして、壁際は最後にかけるとよいでしょう」(今村さん)

■5:乾いた埃を濡れ雑巾で拭きとろうとするのはNG

乾いた埃は乾いたまま処理するのが正解
乾いた埃は乾いたまま処理するのが正解

続いては、拭き掃除について。拭き掃除といえば、まず、雑巾での水拭きを思いつく人が多いのではないでしょうか。しかし、何でも濡れ雑巾で対処しようとすると、かえって汚れが悪化するおそれが……。

「汚れのなかでも、乾いた埃は、濡れた雑巾で拭くと汚れが伸びて広がったり、水分を含んで落ちにくくなったりします。乾いた埃は、ハタキや掃除機で処理するようにしましょう。濡れた雑巾は、ハタキや掃除機では取り除けないこびりついた汚れに使います」(今村さん)

乾いた埃は乾いた状態で、こびりついた汚れは濡れ雑巾で……と状況に応じて道具を使い分けましょう。

■6:洗剤を使った拭き掃除を、上から下の方向で行うのはNG

洗剤を使った拭き掃除は下から行う
洗剤を使った拭き掃除は下から行う

「乾いた埃をとるときなど、掃除は上から下の順に行うのが原則なのですが、網戸や窓などの拭き掃除で洗剤を使うときには、方向が逆になります。下から上へ拭きましょう

というのも、洗剤を使う拭き掃除を上から行うと、洗剤液が垂れて、その跡が残ってしまうおそれがあるからです。下から拭いていったほうが、きれいに磨くことができます」(今村さん)

上から下という基本ルールはよく知られていますが、それに縛られて洗剤を使うときにも、上から順に拭いている人が多いのでは? 2019年末の大掃除で網戸や窓をピカピカにしたい人は、下から上の順で!

■7:むやみにメラミンスポンジを使うのはNG

メラミンスポンジを使ってはいけない場所は?
メラミンスポンジを使ってはいけない場所は?

洗剤なしで力を込めなくても汚れが簡単に落ちるため、大掃除でも活躍しそうなメラミンスポンジ。ただ、使用場所にはくれぐれも要注意です。

「メラミンスポンジでなぜ簡単に汚れが落ちるのかというと、サンドペーパーのように表面を研磨する作用があるからです。

たしかに、茶渋などを落とすのに便利ですが、メラミンスポンジを使った箇所には、目に見えない細かい傷が無数についています。一時的にピカピカになったように見えても、その傷の部分に汚れがたまりやすくなる、という悪循環に陥るおそれは否めません。

また、トイレや洗面台など陶器にメラミンスポンジを使うと、表面の加工がはがれてツヤがなくなり、くすんでしまうリスクもあります」(今村さん)

メラミンスポンジに限らず、洗浄力の高いものは汚れを落とすだけでなく、素材自体を傷めてしまうおそれがあります。使用に際しては、念のため目立たない箇所で試し拭きを行いましょう。

最後に、今村さんから一言アドバイスを。

「大掃除は、もともとは煤払いといって、新しい年神様を迎えるために、12月13日に行うものでした。そうした由来をもつ大掃除ですから、今年1年がんばったことを振り返ったり、2020年がどのような1年になるのか思いを馳せたりしながら、前向きに取り組んでみてはいかがでしょうか?」

掃除はやり始めるまでは面倒なイメージもありますが、家の中がきれいになれば心まで晴れるもの。ぜひ今回ご紹介した掃除の基本ルールを押さえて、よい年を迎えましょう。

今村 暁さん
一般財団法人日本そうじ協会理事長
(いまむら さとる)1971年、静岡県生まれ。北海道大学法学部卒業後、日本長期信用銀行を経て独立。「感性教育」「習慣教育」「能力開発」「掃除道」などの研究と実践を基に、数多くの企業のコンサルティングを行なう。同時に、経営者、管理職、アスリートの目標達成のサポートも行なっている。著書は「10秒朝そうじの習慣」「そうじ習慣手帳」等多数。日本、韓国、台湾、中国、タイでベストセラーになっている。
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WRITING :
中田綾美
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