世界で唯一! 1本の木材から削り出される、薄さ数ミリの「桐のグラス」
紀州桐箪笥の産地として知られる和歌山県で、120年以上にわたり桐の木材や家具を作り続けている「家具のあづま」。その5代目を担うのが東福太郎(あずま・ふくたろう)さんです。
伝統工芸士として活躍する東さんは、「桐をもっと身近に感じてほしい」という思いをこめて、2017年に新たなブランド「AZ(Active Zone)」を立ち上げました。
紀州桐箪笥の伝統技法とオリジナルの工法をアレンジすることで、1本の木材からわずか数ミリという薄さで削り出されるグラスは、世界唯一のもの。その独特の美しさは、スタイリスト河井真奈さんの心を、一瞬にしてとらえたのだそうです。
トヨタ自動車のレクサスが主催する「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT 2017」で小山薫堂さんから“注目の匠”に選出された「桐のビア杯」など、国内外で高い評価を得ているアイテムの魅力を、河井さんに伺いました。
インスタグラムの画像で一目ぼれした、今までにない美しさ
「私が東さんの桐グラスを初めて知ったのは、2019年2月。親交のあるプロダクトデザイナーの上島弘祥(うえしま・こうしょう)さんのインスタグラムで目にしたのがきっかけでした。
毎年2回、パリで開催されているデザインとライフスタイルの見本市『メゾン・エ・オブジェ・パリ』で上島さんがプロデュースされていた、和歌山県のブースを写した画像を一目見て、『なんだろう、このきれいな器は!』と惹きつけられたのです。
そこで、すぐに上島さんに問い合わせて、さらに東さんを紹介していただき、数週間後には和歌山県にある東さんの会社を訪れることになりました。
実際に桐のグラスを目にした時には、改めてその美しさに感動しましたね。さらに、手にした際の軽さや、触り心地のよさにも本当に驚かされて。
ちょうどその頃は、自分が手がけているオンラインのギフトショップの実店舗をオープンしようと動いていた時期だったので、いつかお店ができた暁には仕入れたいとお願いしました」
「伝統を守る」ために挑戦する、若き匠のエネルギーと可能性
「東さんが最初に作ったのは、起き上がりこぼしのように立ち上がる桐のロックグラスです。これからの時代は、家具だけではなくもっと生活に取り入れやすい桐の商品を開発することが、紀州桐箪笥の伝統を守るために必要と考えたのだと伺いました。
そして行き着いたのが、桐の器。桐の木で皿を作った人がいないということからスタートし、今のトレンドも意識しながらアイデアを形にしていったそうです。
薄さと耐久性とのバランスをギリギリまで突き詰めたグラスは、口当たりも最高です。しかも、これを1本の木材から切り出すという技術の高さ、洗練された曲線を描くフォルムに仕上げる美的センスにも、次世代を担う若き匠である東さんのエネルギーと可能性が感じられます」
レクサスオーナーラウンジなど、活躍の幅は急速に拡大中
「東さんの桐のビア杯は、トヨタ自動車のレクサスが主催する『LEXUS NEW TAKUMI PROJECT 2017』で、プロジェクトのスーパーバイザーを務める小山薫堂さんから“注目の匠”に選ばれました。
そして同プロジェクトの一環として、2019年11月29日から12月1日まで京都で開催された『TAKUMI CRAFT CONNECTION KYOTO』にも参加され、建仁寺を舞台に家具や小物を使ったインスタレーションを展示したそうです。
そこでは、futoとのコラボアイテムである積み木もお披露目されました。草木染をはじめとする植物性の染料を用い、さらに丁寧に面取りされているので子どもが使っても安心なつくりになっています。東さんから、外国の子どもたちにも大人気だったと聞きました」
「また、東さんはレクサスオーナーラウンジの調度品も手がけられています。
実は、南青山にfutoの実店舗をオープンするにあたり、私が東さんにもうひとつお願いしていたのがレジカウンターの製作でした。東さんの会社を訪れた際に、ショップで見かけたカウンターが素敵だったので、作ってもらえないかと。
そのことを知ったレクサスの方が、レクサスオーナーズラウンジの家具製作を依頼されたそうです。ほかにも、著名な建築家の方やパリの有名ブランドなど、各方面からさまざまなオファーがあると聞きました。
国内はもちろん海外でも、ますます活躍するに違いない東さん。温故知新の技術と美意識が凝縮された『AZ』のアイテムを、ぜひこの機会に知ってもらえたらうれしいですね」
軽くて美しい、「AZ」の人気アイテム4選
■1:桐のビア杯 鳳凰
桐の特性である「軽さ」と「熱伝導率の低さ」をいかしたビア杯。美しい曲線は持ちやすいだけでなく、きめ細かく喉ごしのいい泡が立ち上り、ビールの香りも引き立てます。商品が収められたケースの蓋を裏返すとコースターになるという、心憎い仕掛けもポイントです。
■2:桐のロックグラス
桐の加工では不可能とされてきた厚さ1ミリの切削で、器の縁を仕上げたロックグラス。何度でもよみがえる不死鳥をイメージした、起き上がりこぼしの仕様も格別です。お酒はもちろん、温かいお茶を楽しむのもおすすめ。
■3:桐のカッティングボード
天然の柿渋を使用した塗装の上にコーティングを施すことで、撥水効果が高く、速乾性と抗菌性にもすぐれたカッティングボードです。30センチ四方のスクエアフォルムは使いやすいサイズ感であるとともに、料理をのせるプレートとしても活用できると人気。また、使い込んで傷や汚れが目立ってきた場合には、表面を削って再塗装するメンテナンス(有料)も行っています。
■4:桐の積み木セット
futoとのコラボで誕生した、幼児教育の専門家にも監修を受けた知育玩具新アイテム。草木染めと植物性染料を用いているため、幼児が口に入れても安心です。桐ならではの軽さと丁寧な面取り加工により、通常の木製積み木よりもケガのリスクも大幅に軽減されています。
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今回は、紀州桐箪笥の伝統工芸士である東福太郎さんが手がける、「AZ」のアイテムをご紹介しました。
知る人ぞ知る、魅力あふれる日本のプロダクト。大切な人への贈りものにはもちろん、海外から訪れるゲストにおすすめするアイテムとしても喜んでいただけるのではないでしょうか?
※掲載した商品の価格はすべて税抜で、記事公開時のものです。
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- EDIT&WRITING :
- 谷 花生