第1回の記事では、美容医療を受ける前に「美容医療の効果を最大限に高めるためのポイント」を松宮先生に伺いました。それをクリアした方の次の選択肢として訪れたいのが「美容皮膚科」です。

 
 
———前回の記事で、40代女性の美容に関する悩みのトップは「たるみ」であるとお伺いしましたが、美容皮膚科ではどのような診察を行うのですか?
松宮先生:美容皮膚科で最初に行うのはカウンセリングと事前検査です。現在の肌状態を調べて、皮膚の水分量や油分量を測定したり、シミやくすみのチェック、毛穴は開いたり汚れていないか、肌のハリが失われていないか、などの肌診断をもとに、その方に最適な施術方法を考えます。まずは、事前検査である程度肌のコンディションを知り、整えてから治療をスタートしたほうが、施術効果が出るまでの時間も短くて済みますよ。
実際のたるみ治療では、たるみ具合にもよりますが、メスを入れなくてもレーザー治療やラジオ波(高周波)、超音波などである程度は引き締めることは可能です。
———レーザー治療やラジオ波(高周波)を使用した施術でも、実際に受けるとなると「肌に傷がつく=怖い」思う方もいるかもしれません。
松宮先生:レーザーと聞くと、最初はやっぱり怖いですよね。ですが「エステの延長」と捉えていただければ少しは不安が和らぐのではないでしょうか?
美容皮膚科で使用する医療用の機械は、エステなどで使う機械よりも設定出力が高く、深達度が高いのが特徴です。エステで使用するものは角質層まで働きかけるのが基本ですが、医療用は真皮層より深くまで働きかけることができるので、効果をより実感していただきやすいと思います。また、レーザーは「メラニンや赤み、皮膚の水分などに反応して熱で破壊させたり、その刺激で自己回復力を呼び覚ましたりすることで美容効果を得られる」という治療法です。それだけを聞くと怖いかもしれませんが、体内も肌も健康で、栄養をしっかりと蓄えていれば、レーザーの反応もいいし、傷の回復は早く、キレイになるまでの時間も短縮できます。
なので、美容皮膚科で施術を受ける前にはなるべくコンディションを整えてくださいね。勿論コンディションが悪い場合はご相談ください。レーザーだけでなく、ラジオ波や超音波などを使った医療用美容機器の施術を受けるだけでも、肌へのアプローチとしては効果的です。レーザーはシミ、毛穴、赤み、小皺など目的に応じて使い分けをします。ラジオ波や超音波は皮膚の深部に刺激を与えることでコラーゲンをつくらせ、ハリを出したりたるみを改善したりできます。
その他、皆さんがよくご存知の脱毛レーザーやピーリング、イオン導入も医療用では効果の高い機器や成分を使っています。心配な方は、スキンケアとしてはピーリングやイオン導入から、たるみ予防にはラジオ波、ピンポイントのお悩みがあるならレーザー、というように、少しずつ選んで段々と確実に綺麗になっていかれてはいかがでしょうか? 美容皮膚科での施術をいわゆる医療と捉えるよりは、「メディカルエステ」として捉えると、気持ちもラクになりますよね。
 
 
 
———なるほど。メディカルエステだと思うとハードルが下がりますね。レーザー治療やラジオ波にも、外科手術のようなダウンタイム(傷が治るまで安静にしている期間)はあるのですか?
松宮先生:ものによってはありますね。レーザー治療も肌に傷をつけるものですし、施術の後は紫外線を浴びないほうがいいなど、制約がある施術もあります。お手軽と思われがちなヒアルロン酸注入やボトックスでも、内出血や腫れが出る場合もあるので、ダウンタイムを頭に入れて施術を受けなくてはいけません。
ダウンタイムを短くしたい方は、なるべく侵襲(医学用語、生体の内部環境の恒常性を乱す可能性がある刺激全般)の少ない施術を選ぶ、侵襲がある程度ないと効果が出ないものに関しては、機械だけでなくビタミンCの点滴やサプリメントなどをプラスし、自己回復力をフォローしてあげる、といった方法を取ることもあります。
レーザー治療で一時的に傷ついた肌にはLEDライトを当てて炎症を抑える、といった別のアプローチもあるので、気軽に相談していただきたいですね。受ける方の多くは働く女性なので、医学会でもいかにして患者さんのニーズに応えていくかが、議題に上がっています。

「施術」と「処方」どちらかを選べるのが美容皮膚科

———美容皮膚科では施術のほかに、処方という形での治療もありますよね。美容皮膚科で販売されている薬は市販のものをやはり違うのでしょうか?
松宮先生:市場で売っている基礎化粧品は「保湿」がメインですよね。医薬部外品は別ですが、角質層までしか浸透しないものがほとんどです。
それに対して医療用の薬は、角質層を通り越して真皮にまで達するような強いものもあります。美容医療で使用されるものは、肌が赤くなってしまったり、キレイな状態に落ち着くまで時間のかかってしまったりするものがあります。その人の肌状態によって使う量や頻度を変えないといけないので、医師の診察や処方が必須なんです。
———処方されたものを使うだけでキレイになれるなんて、気軽にトライできていいですね!
松宮先生:そうですね。塗布するだけ、飲むだけというものは、施術するよりも負担は軽減されます。ですが、中にはダウンタイムが必要なものもあるんです。つけると一時的に肌の状態が不安定になる薬もあるので、医師の説明をよく聞くことが大切です。その薬を使うとどのような工程をたどってキレイになるのか、肌の状態が落ち着くまでどのくらい時間がかかるのかなどをきちんと確認しましょう。
医療用化粧品は効果を求めて使用量を勝手に増やしたり、反応の強さに驚いて途中でやめたりする方も多いのですが、自己判断はせず、心配なときはどんなことでも医師に相談することをオススメします。
———医師と相談できたら、本当に心強いですね。
松宮先生:美容医療というと「いきなり整形する」というようなイメージが強いかもしれませんが、美容皮膚科でレーザーやラジオ波、薬などでちょこちょこメンテナンスするだけでも、美しさや若さを保つことができます。もう少し気軽にご相談にいらしてもらえるとうれしいですね。皮膚科でも満足できないという方には、美容外科という選択肢もご紹介できます。韓国などでは、美容医療のことが女子会トークの話題のひとつにあがるほど身近なものになっています。日本でもそうなっていくとうれしいですね。

まとめ

美容医療を受ける前に、まずは自分を知り、生活習慣を見直す。それでも悩みが解消できない方は、今回紹介した「美容皮膚科」の門を叩く。これが美容医療の効果を最大限に得るための、正しいステップです。

次回は、美容皮膚科で解決できなかった悩みを治療する「美容外科」についてのお話を伺います。信頼できる美容外科医の選び方や、40代、50代女性の悩みを解消する施術方法についてもうかがいます。

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PROFILE
松宮敏恵(まつみや としえ)さん
形成美容外科医。天現寺美容クリニック、昭和大学藤が丘病院形成外科勤務。日本形成外科学会専門医、抗加齢学会専門医、リハビリテーション科学会専門医、分子栄養医学認定医、美容外科医として働く傍ら、形成美容外科・リハビリテーション科・分子栄養医学の3つの観点から、見た目・身体機能・栄養からのアンチエイジング医療を提唱している。美しくなるためには、外面と内面(主に食事)両方からのアプローチが大事!がモットー。
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この記事の執筆者
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WRITING :
竹林和奈
DIRECTION :
青木 笑