たくさん種類のあるナッツですが、中でもアーモンドはお菓子に多く使われるだけでなく、調理にも使われ、バラエティミックスにも必ず入っているナッツといえます。最近は、日本でもアーモンドミルクにスポットが当てられ、今注目されています。

栄養素も豊富というアーモンドの美容効果について、栄養学博士である江崎グリコ株式会社 健康科学研究所の宅見央子さんにお話を伺いました。

 
宅見央子さん
江崎グリコ株式会社 健康科学研究所 マネージャー
(たくみ ひろこ)1993年 大阪大学工学部卒業後、江崎グリコ株式会社入社。入社以来、研究所に所属し、食品の機能性研究や食品の開発に従事。2012年学位取得(徳島大学大学院栄養生命科学教育部、栄養学博士)

「アーモンド」は、美容効果の期待できる栄養素がたっぷり

健康や美容に効果的な栄養素が豊富。
健康や美容に効果的な栄養素が豊富。

「アーモンドにはたくさん栄養素が含まれています。エネルギーを供給し、食欲を抑えることに役立つとされる植物性たんぱく質や、血圧を調節し、心臓の健康や筋肉の収縮に必要とされるカリウム、満腹感が得られ消化器の健康促進と正常な血糖値の維持に役立つとされる食物繊維が豊富です。

また、アーモンドの約半分は脂質です。アーモンドの脂肪酸組成の約70%は、良質とされる一価不飽和脂肪酸のオレイン酸が占めています。オレイン酸は、血中コレステロールを下げ、生活習慣病を予防します。そして、肌を健康に保つという利点もあるのです。

さらに、アーモンドは皮ごと食べるのが主流だと思いますが、これにも理由があります。アーモンドの皮にはポリフェノールが豊富に含まれます。ポリフェノールは抗酸化力が高いので、これもまた肌には嬉しい効果が期待できます。

そして、アーモンドの皮には強い抗糖化作用もあります。糖化反応は皮膚の老化や骨粗鬆症などにも関係すると報告されているため、皮ごとアーモンドを摂取することがおすすめです」(宅見さん)

【アーモンドに含まれる多様な栄養素】
・たんぱく質・食物繊維・一価不飽和脂肪酸・ビタミンE・カリウム・カルシウム・マグネシウム・リボフラビン・ナイアシン・リン・鉄

■食後の血糖値上昇を緩やかにする作用が!

「アーモンドには、食後の血糖値の上昇を抑えてくれる効果があります。炭水化物だけ食べた場合と、炭水化物とともにアーモンドを食べた場合で血糖値の上昇を比較した結果、炭水化物とアーモンドを一緒に食べたときの方が、血糖値の上昇が緩やかであることが実証されています(*1)」(宅見さん)

*1炭水化物を摂取する際にアーモンドを一緒に食べること、また、摂取するアーモンドの量を変えることで、食後の血糖値変化にどのような影響を及ぼすかを調べた研究。食後2時間の血糖曲線下面積を計算して評価した結果、アーモンドを炭水化物と一緒に摂取すると、食後の血糖値上昇が抑えられ、その影響はアーモンドの摂取量が多い方が大きいことが実証されました。
Josse, Metabolism 2007 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17292730-almonds-and-postprandial-glycemia-a-dose-response-study/

■気になるアーモンドのカロリーは!?

体にいいとはいえ、ナッツ類はカロリーが高いイメージ…と懸念する人もいるでしょう。しかし、実際に摂取してから体内で消化されて吸収されるカロリーは別物なのだそう。

2012年に公開されたアメリカ合衆国農務省(USDA)の調査(*2)では、実際に消化され吸収されるアーモンドのカロリーは、栄養成分表示に記載されているアーモンド全体のカロリーよりも20%少ないと示唆しています。

アーモンドはおいしいけれど、他のものも食べたいし、カロリーは少し気になるという人には朗報ですね!

*2 Novotny, AJCN 2012 https://academic.oup.com/ajcn/article/96/2/296/4576806

■注目すべきはビタミンE

ビタミンE含有量はナッツ随一。
ビタミンE含有量はナッツ随一。

栄養素の豊富なアーモンドですが、先述のように抗酸化物質が豊富に含まれている食品の一つであり、ナッツの中では最も多くビタミンEが多く含まれているのも大きな特長といえます。

「アーモンドのビタミンE含有量は、食品トップレベルです。ビタミンEは、体内や環境で作られるフリーラジカルとよばれる物質が引き起こすダメージ、酸化ストレスから細胞を保護するために必要な抗酸化物質です。

抗酸化作用により、体内の脂質を酸化から守り、細胞の健康維持を助けます。

また、アーモンド中のビタミンEは血中に吸収され、アーモンドを摂取することで血中のビタミンEは上昇します。

ビタミンEに加え、リボフラビン、亜鉛、ナイアシンなどの様々な栄養素も含まれるので、アーモンドを摂取することは、ビタミンEを摂取することで健康でいきいきとした肌を保つことができます。

肌の状態はわかりやすい健康のバロメーターです。天然のビタミンEを摂取することは、身体の健康にも役立ちます」(宅見さん)

肌への効果が期待できる「アーモンド」パワー

抗酸化作用で美肌に導く効果が期待される。
抗酸化作用で美肌に導く効果が期待される。

日本人に必要とされるビタミンEの量は、成人女性で1日6.0g(*3)と言われているのですが、手のひら一杯のアーモンド(約23粒 30g)で、ビタミンEは7.7g含まれています。これは、1日に必要な量の120%以上です。

この抗酸化作用に有効とされるビタミンEを多く含むアーモンドを摂取すると、具体的にどう肌への影響があるのでしょうか。

*3 出典:日本人の食事摂取基準(2015年版)より

■気になるシワ対策にも有効!?

アーモンドが肌の健康に及ぼす効果の検証について、エイジングケア対策としてアーモンドを日々摂取することが、スキンケアにも良い効果をもたらすことが示唆されました(*4)

カリフォルニア大学デービス校のラジャ・シヴァマニ博士率いる皮膚科医グループによる、閉経後の健康な女性に対して、日常的なアーモンド摂取が顔のシワに与える影響の検証です。

参加者は、米国の白人女性で非喫煙者、閉経後の健康な女性28人(53〜80歳)。

介入群と対照群(*5)のグループに無作為に分け、16週間にわたりランダム化比較試験を実施。

肌評価は、調査開始時、4時間経過時、8時間経過時、12時間経過時、16時間経過時に実施し、高解像度の顔撮影技術を使って顔のシワの深さや高さなどの評価を行い、顔の3Dモデリングと測定値での検証です。

結果は、アーモンドを間食として摂取した参加者は、対照群と比較して、シワの幅が10%減少し、シワの重症度が9%減少という、統計的に大幅な改善が見られました。(現在は、肌の老化の兆候をさらに評価するために、さらに規模を拡大した長期的な追跡調査を実施しているとのこと)

この結果を受け検証を実施したシヴァマニ博士は、「高齢者、特に閉経後の女性が健康的な食生活に取り入れる食材としてアーモンドに期待できる可能性が示唆された」とコメントしています。

*4 2019年10月に米国カリフォルニア州でカリフォルニア・アーモンド協会が発表
*5 介入群/アーモンドを間食として1日の合計カロリー摂取量の20%摂取  対照群/ナッツ類を含まない間食として、シリアルバーやグラノーラバー、プレッツェルを1日の合計カロリー摂取量の20%摂取

■日常に取り入れたいアーモンド飲料

豆乳が苦手な人にも香り高いフレーバーで取り入れやすい植物性ミルク。
豆乳が苦手な人にも香り高いフレーバーで取り入れやすい植物性ミルク。

アーモンドをナッツそのまま摂取することはもちろん有効ですが、たくさんの粒を一度に食べることが難しいという人もいると思います。

昨今、植物性たんぱく質の飲料として豆乳の他に注目され、すでに多くの人が取り入れ始めているというアーモンド飲料。

他に、グリコでもアーモンド飲料の試験を実施しました。

フルタイムで就業している健常な成人男女60名に対し、4週間30名ずつに分けて、アーモンド飲料と、アーモンド飲料からアーモンド・ビタミンE・食物繊維を除きアーモンドフレーバーを添加した比較対照用の飲料(コントロール飲料)を、それぞれ1日3本飲んでもらいました(*6)。

すると、アーモンド飲料を1ヶ月継続摂取で、血中コレステロール値が減少したという結果が出ました。また、1ヶ月継続摂取することで、血中ビタミンEが増加するという結果も出たのです。

アーモンド飲料を日常的に摂取するだけでこれだけの健康効果が期待できるので、食事や間食のお供はもちろん、休憩時など取り入れると良いでしょう」(宅見さん)

*6 どちらも200mlあたり
【アーモンド飲料】エネルギー:81kcal・たんぱく質:0.9g・脂質:2.9g・炭水化物:14.7g・ナトリウム:155mg・食物繊維:3.1g・ビタミンE:7.8mg
【コントロール飲料】エネルギー:88kcal・たんぱく質:0.0g・脂質:3.0g・炭水化物:15.5g・ナトリウム:154mg・食物繊維:0.0g・ビタミンE:0.0mg

***

ナッツは、ダイエット時の間食にも推奨されているので、アーモンドならどんな時でも気にせず摂取できます。砕いてサラダにまぶすなど、料理に使うのもいいですね。毎日続けるには、アーモンドミルクを飲むことを新習慣に初めてみるのもいいかもしれません。

問い合わせ先

グリコお客様センター

TEL:0120-141-369

この記事の執筆者
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EDIT&WRITING :
Sachi Tamura