新たなコンセプトで生まれ変わった「ショーメ」のパリ・ヴァンドーム本店
ショーメの歴史は、宝石職人マリ=エティエンヌ・ニトが1780年に開業した、サントノレ通りの店に遡ります。腕を認められたニトは、ナポレオン1世と皇后ジョゼフィーヌのお抱えジュエラーとなり、オーストリア・ハプスブルグ家など、ヨーロッパ各国の王室のジュエリーを手がけるようになりました。
1885年に店を受け継いだ、4代目にあたるジョゼフ・ショーメは「ショーメ」とメゾンの名前を改め、植物など自然のモチーフからインスパイアされたジュエリーの名作を生み出します。
特に、ショーメはティアラ(ディアデム)を多く手がけ、その数は2000以上に上ることがよく知られています。
傑作へのオマージュがちりばめられた、やわらかな光あふれるエントランス
さっそく、改装されたパリ・ヴァンドーム本店の店内を見てゆきましょう。
ヴァンドーム広場に面したエントランスを入ると、光があふれたフロアが広がります。クリスタルの原石を使った見事なシャンデリアが、天井に。白い雲のような大理石のデコレーション、風になびく金色の麦、トンボ、蜂のモチーフを彫り込んだ壁が、自然を想起させます。
ショーメは、1811年ごろに麦の穂をモチーフにしたティアラを製作しており、内装のモチーフはそうした傑作にオマージュを捧げてデザインされたもの。
正面には、本店のリニューアルを記念して、本店限定のユニークピース「トレゾール ダイユール」リング16点が飾られています。パリ、日本、中東、中国などの建物からインスパイアされたものです。
パリのグラン・パレをモチーフにした「オリアン リング」
日本をテーマにした「サクラ リング」
中国をテーマにした「キアンロン リング」
ウエディングからお直しまで。プライベートな空間でハイジュエリーを楽しむ
2階は、ハイジュエリーを中心にディスプレイされ、ゲストを迎える個室と半個室のサロンで構成されています。このサロンをいくつかご紹介します。
セルフィーが撮れるサロン
ウエディングのためのサロン・マルメゾン
ほかに、お直し、特注など、職人と話し合える特別なスペースも用意されています。
歴史的建造物とともに、メゾンの歴史を体感する
ブティックの上のフロア・3階は、メゾンの遺産を伝えるフロアです。
あのショパンが亡くなる直前まで住んでいたサロン
ティアラの雛形が350点以上並ぶサロン・デ・ディアデム
真珠のサロン、サロン・デ・ペルル
また、これまで中庭側にあったアトリエがヴァンドーム広場側に拡張移転。大きな窓をもち、自然光がたっぷり入る空間で、14名の職人が作業しています。
ショーメCEOとLVMH建築デザイン アーティスティックディレクターに、生まれ変わった「ヴァンドーム本店」についてお話を伺いました
ショーメ CEOジャン=マルク・マンスヴェルト氏「ブティック、文化遺産、アトリエを1か所に集めることによってメゾンの真髄がわかる場所に」
ヴァンドーム広場の建物は、ヴェルサイユ宮殿などを手がけた、王室の建築家マンサールによって設計されたもの。ヴァンドーム広場にショーメが最初に店を構えたのは1812年で、その当時は15番地でしたが、1907年に12番地に移転しました。
この12番地の建物は、ルイ16世下で海軍財務総督を務めていたボダール・ド・サン・ジャム男爵が、1777年に購入し、以後、さまざまな貴人の邸宅として使用されていました。
「ショーメ設立240年を記念して、本店にメゾンを象徴する場所として輝きを取り戻させたいと考えました。ブティック、文化遺産、アトリエの高度な技巧を1か所に集めることで、メゾンの真髄を体現しました。
コンセプトは『邸宅』です。クリエーション、歴史を通してショーメのエスプリに触れるというものです」と教えてくれたのは、ショーメCEOのジャン=マルク・マンスヴェルト氏。
「ヒストリーサロンとアトリエは安全性や耐久性のため基本的に一般公開しませんが、LVMHグループはサヴォワールフェールを公開する、レ ジュルネ パルティキュリエールという日を設けているので、そこでお見せすることを考えております」(ジャン=マルク氏)
ちなみに、日本の女性に人気があるショーメのコレクションは、「トルサード」だそうです。
「シンプリシティ、純粋さ、控えめさがありながら、ディテールの意味や物語性などの深さがあるのが人気の理由です」(ジャン=マルク氏)
LVMH建築デザイン アーティスティックディレクターのパトリシア・グロデマンジュさん「寄木細工、石材彫刻、高級刺繍など、最高の職人たちが本店のリニューアルに携わりました」
今回のリニューアルで建築を手がけたのは、LVMH建築デザイン アーティスティックディレクターのパトリシア・グロデマンジュさんです。
パトリシアさんは、1年半に渡り、このプロジェクトに取り組みました。
「『パリの邸宅』を訪れる人にどのように夢を見せるかということ、そして、改装前は、さまざまな様相がばらばらにある状態でしたので、貴重なヘリテージ、アトリエの職人技と関連づけて、どのように統一して一貫性を再構築するかということが、スタート地点でした」とパトリシアさん。
モダニティと歴史的な遺産を結びつけるに当たって、内装で新旧の要素をミックスしています。
「ルイ16世時代にはサロンがいくつも連なっていたスタイルだったのですが、その元々の形をリスペクトして現代によみがえらせ、また、暖炉など当時風の家具類を手に入れて、空間に配置しました。
一方で、例えばサロン・ド・ペルルでは、再生紙を使ったエコロジーなパピエ・ピエールという素材を壁に使いましたが、これにはコンテンポラリーなモチーフを採用しています」(パトリシアさん)
ブティックは麦の穂、ミツバチなどがモチーフに使われ、空間に光が満ちたとても女性らしい内装です。
「自然はショーメにとって重要な要素なのですが、洗練されて控えめなニュアンスで感じられるように、至るところに散りばめてあります。ショーメは、エレガンスを表現するブランドですから、女性らしさを表すのは自然な流れでした」
建築技術上では、さまざまなチャレンジを試みたそうです。
「まず建物の構造は、過去に行われた改築によってもろくなっていましたので、細心の注意と優れた技術が必要でした。歴史的なサロンでは、美術歴史家と共に取り組み、修復にあたりました。寄木細工、石材彫刻、高級刺繍など、最高の職人たちと共に取り組み、非常に完成度が高い内装ができあがりました」
人間の手でつくり上げる伝統の職人技でつくりつつも、あらゆる場所に最新の革新的な素材を採用したというのも見逃せません。
パトリシアさん自身は、ショーメのジュエリーのなかでは「ジョゼフィーヌ」、「ビー マイ ラブ」コレクションが好きだそうです。
「ショーメのジュエリーは、女性の表情を表していると思います。美を表していますが、弱々しくはない。自分のパーソナリティーを肯定してくれるものです。人生をともに歩んでくれる。それがショーメだと思います」
伝統と現代性が融合し、新時代の女性に向けたアイテムを発信しているショーメのヴァンドーム本店を訪れてみてはいかがでしょうか?
※掲載した商品はすべて税抜です。
店舗詳細
- 営業時間/10:30〜19:00(月〜土)
- TEL:+33 1 44 77 24 24
- 住所/12, place Vendôme 75001 Paris
問い合わせ先
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- TEXT :
- 安田薫子さん ライター&エディター