d映画作品からのインスパイアで、古典作品を刺激的に新解釈する名手、マシュー・ボーンの最新作!
『赤い靴』を履いてしまった娘は、死ぬまで踊り続けなくてはいけない――。ヒロインにそんな恐ろしい呪いがかけられてしまう、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話『赤い靴』をご存じの方も多いはず。6月に東急シアターオーブにて来日公演を行なうマシュー・ボーンの『赤い靴』は、そんな名作童話と、その童話をベースにつくられた同名傑作バレエ映画をもとにしたダンス作品です。
マシュー・ボーンといえば、古典バレエの名作『白鳥の湖』を、男性ダンサーたちがワイルドに、パワフルに白鳥を踊る作品へと読み替え、スマッシュ・ヒットを飛ばしたイギリスの演出家・振付家。大英帝国勲章を受章しており、「サー」の敬称で呼ばれる方でもあります。
<ファム・ファタル>の代表・カルメンの物語を男性の主人公へとスイッチして描いた『ザ・カーマン』、おとぎ話を第二次世界大戦下のラブ・ストーリーへと置き換えた『シンデレラ』など、斬新な作風で話題を博してきた鬼才です。
もともとのダンス・カンパニー名が「アドベンチャーズ・イン・モーション・ピクチャーズ」(モーション・ピクチャーズとは「映画」の意)であったことからもうかがえるように、多くの映画作品からもインスピレーションを受けてきており、たとえば、『ザ・カーマン』も、『カルメン』のみならず、たびたび映画化されてきたジェームズ・ケインの小説『郵便配達は二度ベルを鳴らす』がベース。
また、ティム・バートンのファンタジー映画『シザーハンズ』の舞台化も手がけているのです。
愛を取るか、キャリアを選ぶか――。そんな根源的な問いに挑む『赤い靴』
そんな彼が、このたび日本の観客に贈る『赤い靴』、そのもととなった映画版はと言えば、1948年のイギリス作品。童話『赤い靴』を原作としたバレエに主演し、スターとなったヒロインが、恋とバレエ、愛と芸術との狭間で悩み苦しむ物語です。
ヒロインを世界のスターへ育て上げようとする敏腕プロデューサーと、彼女と恋に落ちてしまう若き作曲家。――ちなみに、筆者自身、子供のころにこの映画版をテレビ放映で観た経験があるのですが、踊ることに取り憑かれたヒロインの生き様に激しい衝撃を受け、自分自身、しばらくの間、呆然としてしまったほどの作品だったと記憶しています。
生きること。踊ること。愛すること。人にとって、キャリアとプライベートの両立、バランスとは――? そんな根源的な問いを、自身、この作品に若いころから魅せられてきたと語るサー・マシュー・ボーンが、いかに舞台上に描き出すのか、注目です。
Information
マシューボーンの『赤い靴』
バレエ界の奇才マシュー ・ボーンによって、伝統的な映画とアンデルセンのおとぎ話をモチーフに描かれた究極のラブストーリー。世界一のプリマを目指すバレリーナのヴィクトリアと、彼女を育てるために情熱を注ぐ辣腕プロデューサーのレルモントフ。2人の夢は順調に実現に向かっているようにみえたが、そこへ作曲家のジュリアン・クラスターが現れ、運命の歯車が狂い始める…。
- 期間/2020年6月17日(水)〜28日(日)
- 場所/東急シアターオーブ
- ホリプロチケットセンター TEL:03-3490-4949
- TEXT :
- Precious編集部
- PHOTO :
- ©Johan Persson
- WRITING :
- 藤本真由(舞台評論家)
- EDIT :
- 宮田典子(HATSU)、喜多容子(Precious)