目下、「最強美女」の呼び声高いこの人は、次期アメリカ大統領候補にしたい人!?

絶世の美女役がイヤで、極悪の女連続殺人鬼を演じたシャーリーズ・セロン

今や、「世界で一番美しい顔ランキング」と銘打ったサイトはネット上にいくつも存在し、有名無名を問わず世界中の美人女優の名が続々と出てきて、何が何だかもう訳が分からなくなっている。

でも、そんなふうに美人が五万といる時代。だから余計に今、この人の美しさが際立つ気がするのだ。シャーリーズセロン、44歳。

20代、30代のフレッシュな美貌の前でも、まったく色褪せて見えないほどの申し分のない美しさ。177センチの長身に、スーパーモデル以上のプロポーション。しかしそういう容姿の美しさとは相反するような精神性が、この人をさらに美しく見せているという話をしたいのである。

まずハリウッドの映画関係者の間でも、「奇跡的な美しさを持つ演技派」という最高評価を得ているが、単に演技の上手い美人女優に甘んじていないところが、この人の身上。役作りの凄さは、尋常ならざるものがある。

言うまでもなく、今年のアカデミー賞では映画『スキャンダル』の主演女優としてアカデミー賞はじめ、数々の映画賞にノミネートされているが、この作品でも、実在の女性キャスター、メーガン・ケリーを演じるために自ら望んで、ご存じ日本人メイクアップアーティスト、カズ・ヒロ(辻 一弘)氏の特殊メイクによって、完全にその人自身になりきることに執拗にこだわったとされる。

まぶたの厚み、鼻の幅、エラの張り方など、微妙に細工を凝らしていて、確かに本人によく似ている。結果としてこの特殊メイクが評価され、カズ・ヒロ氏はアカデミー賞を受賞。シャーリーズ・セロンは自分のことのように喜んだと言われる。役作りへの情熱が伝わってくる話だ。

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アカデミー賞のシャーリーズ・セロンとカズ・ヒロ(左)

また、この人を語るうえで、絶対欠くことができない作品が『モンスター』。犯罪史上稀に見る“女連続殺人鬼”を描いた作品だが、シャーリーズ・セロンはこの役を演じるために14キロ太った、という話はつとに有名。

けれども、彼女が自らこの役を演じたいと名乗り出て、徹底してこの凶悪犯の詳細を調べあげ、製作にも関わったという事実は、あまり知られていない。

そもそも、似てもにつかぬ殺人鬼の役をシャーリーズ・セロンにオファーすること自体が、普通に考えたらありえない。本人がこの醜い役を買ってでたのも、美し過ぎるが故に、いわゆる金髪美女の役しか得られないことに業を煮やした結果だと言われる。だから、単に贅肉を大量に増やしただけではない、眉を抜き、肌を荒らしての体当たり。

しかもこの時、シャーリーズ・セロンはまだ27歳だった。その若さで挑んだのは、道端でヒッチハイクのように客を取る中年の売春婦。最悪の家庭環境で育ったために、男を憎みながらも若い頃から売春を始め、金のために客を殺していくという最悪の人生を描こうとしたのだから、大層な精神の持ち主だ。

当時この変身ぶりは、アカデミー賞狙いなのではないかとも揶揄されたが、仮にそうだとしても、その美しさを100%封印し、最強最悪の汚れ役に挑むなど、まともな20代にできることではないはずなのだ。

その壮絶な生い立ちが、強靭な精神の源となっていた?

じつはこの時、同時に注目されたのが、シャーリーズ・セロン本人の壮絶な生い立ち。日ごろからDVが絶えなかった父親を、母親が銃殺してしまうという、あまりにも悲劇的な出来事があったことを、自ら語っている。母親の正当防衛は証明されたものの、当時15歳であった少女の心がどれだけ深く傷ついたか、想像に難くない。

しかし見方を変えれば、そういう過酷な体験が、強靭な精神をもたらしたと考えることもできる。その証拠に、続けてオスカー賞など映画賞にノミネートされた映画『スタンドアップ』は、高校時代に性的虐待を受け、未婚の母となってから仕事場でもセクハラを受けて、世界で初めてそのセクハラを訴訟に持ち込んだ、実在の女性を描いている。

今回の『スキャンダル』も、ご存じの通りセクハラ訴訟がテーマ。あくまでも社会悪と戦うという姿勢が、もうこの頃から確立していたのである。

おそらくこの人は正義感が強すぎて、女優の仕事と社会的な活動を切り離すことができないのだろう。自ら製作や総指揮に取り組む映画も多くなっていくが、ほとんどの映画で社会的な問題をしっかりと捕まえている。

ベルリンの壁崩壊にまつわる謎の組織やレバノン内戦や湾岸戦争を取材した女性記者、感情をコントロールできなくなる抗NMDA受容体脳炎に犯された女性の実話、さらにはちょっと空気が読めないアラサーバツイチ女子の話、子育てに極限までのストレスを抱えてしまう母親の話まで、まったく身近な問題をも含めて、ことごとくが問題作。

それは、本気を超えた筋金入りの社会性を物語っているのだ。

44歳の今まで未婚。でもふたりの養子を育てる人。虐待疑惑もはねのけて

さらに言うならこの人は、44歳になる今日まで、1度も結婚したことがない。俳優スチュアート・タウンゼントと10年間ほど交際していたが、なかなか結婚に至らなかったのも、「アメリカで同性愛者の結婚が法的に認められるまで、結婚はしない」と宣言していたから。

結局、結婚には至らなかったが、同性愛への偏見に対する批判を早くから訴えていたことから、GLAADメディア賞の名誉賞を受賞している。

そして未婚のまま、ふたりの養子を取っているが、じつはこの人に児童虐待の噂が出たりもしている。ただそれも、車の中で子どもを大声で叱りつけていたとか、手を強く引っ張って車に乗せたとか、実際には普通の親子に見られる躾けのレベル。逆に言えば、セレブにありがちな「養子を取っただけでシッター任せ」ではなく、あくまでも真剣に子育てしていることの証にほかならないのではないか。

さらにその息子に、女の子の服を着せているということでも虐待疑惑が出たのだが、これは本人が望んだことだと反論。「自分は男の子じゃない」と言ったとかで、LGBTの概念は何歳から適用されるのかという問題にも発展してしまうが、ともかく自分の信念は子育てにおいても守り抜く、という意識の表れだろう。

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子どもと歩くシャーリーズ・セロン

気骨のある人……そういう言い方がある。

単に気が強いのとは違う。自分が正しいと信じていることは、どんな障害にも屈服しないで貫き通そうとする強い心。それが気骨。

しかし、例えば誰? と言われると答えに戸惑ってしまうほど、そうは簡単に見つからない。しかし、シャーリーズ・セロンは紛れもなく気骨のある人。これほど才気煥発、気概に満ちた人は滅多にいない。そう言い切れるのだ。

だからだろうか。この人は一年一年、年齢を重ねるほどに素敵になる。人間としての奥行きを増している。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で、とてつもなく激しいアクションを見せる女性大隊長を演じたり、悪魔のような悪徳上司を演じたり、今何をやっても見事にはまる人。

そして『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』で、アメリカの次期大統領候補となる国務長官の役をも演じているが、それはもうハマり役どころではない、そうだこういう人こそ、アメリカの大統領になって欲しいような人、そう強く思ったのは私だけではないはず。

そういう壮大な魅力を持った絶世の美女、なんて、それ自体が奇跡。ともかく何らかの奇跡を起こしてくれそうなシャーリーズ・セロンから、ますます目を離せない。目を離してはいけない人である。

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この記事の執筆者
女性誌編集者を経て独立。美容ジャーナリスト、エッセイスト。女性誌において多数の連載エッセイをもつほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。近著『大人の女よ!も清潔感を纏いなさい』(集英社文庫)、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)ほか、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。好きなもの:マーラー、東方神起、ベルリンフィル、トレンチコート、60年代、『ココ マドモアゼル』の香り、ケイト・ブランシェット、白と黒、映画
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