新型コロナウイルスの影響はさまざまなところに及んでいますが、今や私たちの睡眠をも脅かし始めています。テレワークや外出自粛など、日常生活の変化による生活リズムの乱れ、人とのつながりが減ったことへのストレス、先の見えない不安などが原因で「よく眠れない」という方が増えているといわれています。
しかし、パンデミック下において、感染症予防のためにも、睡眠力を高めることはとても大切なこと。そこで、ぐっすり眠るための方法を、睡眠コンサルタントの友野なおさんに伺いました。
免疫力がアップ! ぐっすり眠るために心がけたい10のこと
現在、猛威をふるっている新型コロナウイルス。コロナウイルスに負けない体づくりために必要なのは、「免疫力を高めること」といわれていますが、睡眠と免疫の関係は実際のところどうなのでしょうか?
「153名の21歳から55歳を対象とした睡眠時間と免疫系の関係性を調査した研究では、睡眠が7時間未満の場合、8時間以上眠る人より約3倍風邪をひきやすくなることが報告されています(参考1)。さらに、米カリフォルニア大学が18~55歳までの健康な男女164名を対象に行った研究においても、1日の睡眠時間が6時間以下の場合、7時間以上眠っている人に比べて風邪をひくリスクが4.24倍高くなるという研究報告も(参考2)。慢性的な睡眠不足は、免疫機能を落とすということは明らかになっている事実なのです」と友野さん。
コロナウイルスの予防という観点からも、免疫力を高めてくれる睡眠の重要性は高いといえます。以下に、コロナ禍における、快眠のためのテクニックをまとめてみました。ご紹介します。
■1:規則正しい生活リズムを保つこと
「私たちの体内時計は光の影響を最も強く、そしてダイレクトに受けるので、光を味方につけることが欠かせません。朝と昼はなるべく部屋に光を取り込んで、明るくすること。そして、就寝1時間前になったら、やや暗めの暖色系の照明に切り替える。こうして昼夜の光のメリハリをつけることが体内時計を乱さないために重要なことです。
そして、基本的には就寝時間よりも、起床時間を一定にする方が身体のリズムは乱れません。起床後は、真っ先に窓際1メートル以内に立って、太陽の光を15秒間、目の中に入れます。すると、覚醒モードのスイッチが入ると同時に、そこから約14~16時間後に眠くなる予約のスイッチが押されるので、自然と夜になると眠気が訪れ、生活のリズムが乱れにくくなります。
睡眠や健康、美容に関するホルモンの分泌や体温のリズム、自律神経のバランスなどを考慮すると、0時から6時にかけて7時間程度睡眠をとっている状態が理想です。テレワーク中は、これらを意識しながら、生活を行うようにしてみましょう」(友野さん)
■2:起床後、1時間以内に朝食を摂取!
「夜ぐっすり眠るためにも、起床後1時間以内に朝食は必ず食べるようにしましょう。中でも積極的に摂取したいのがタンパク質。タンパク質に含まれるトリプトファンは、セロトニンの原料となるもので、眠りを促す働きのあるホルモン、メラトニンに変化します。
セロトニンの生成には、トリプトファン以外にもビタミンB6と炭水化物が必要で、この3つの成分を含むのがバナナ。朝食を食べる習慣のない方は、まずはバナナだけでも食べるようにしてみてください」(友野さん)
■3:寝る部屋と仕事をする部屋は別々に!
「テレワーク中は、寝る部屋と仕事をする部屋は別々にするのがベスト。ワンルームの場合は、簡易的でも良いので、布やパーテーションで仕切りを作るようにしましょう。特に、ベッドの上で仕事をすることは控えるようにしましょう。不眠の大きな原因となってしまいます」(友野さん)
■4:3つのルール守って、お昼寝を取り入れよう
「お昼寝は寝不足の解消にもおすすめです。日々、溜まっていく睡眠負債を補うだけでなく、QOL(生活の質)や生産性も上がることがわかっています。ただし、以下の3つのルールを守って、お昼寝をするようにしましょう」(友野さん)
<お昼寝の3つのルール>
1.昼寝は15時まで。それを過ぎるとその日の夜の睡眠に悪影響を及ぼします。
2.昼寝の時間は20分以内。
3.座った姿勢でお昼寝を!横になると20分では起きることができなくなります。
■5:ヨガやストレッチなど運動を心がけよう
「スポーツクラブなどが休館中のため、運動する機会も失われがちですが、心地よい眠りのためには、運動はできるだけ行うのがベター。快眠へつなげるためには、19時前後に30分程度、運動をすることが望ましいです。体内時計だけでなく、身体が疲れることで、眠くなる作用も質の高い睡眠には必要だからです。この時間帯に運動しておくことで、体温が上昇し、その後、体温が下がって眠くなる際の落差が大きくなるので、よりスムーズに眠れるようになります。
また、運動は心の健康を維持する効果もあります。ただし、21時以降は深部体温が低下して、身体がおやすみモードに入っているので、呼吸があがったり、心拍数が高くなるような激しい運動は避けましょう。気持ち良いと感じる程度のストレッチやヨガがおすすめです」(友野さん)
■6:寝室の睡眠環境を整えよう
「寝室の環境は、睡眠の質を大きく左右します。リラックスして眠れるよう、寝具も含め、寝室の空間作りにもこだわりましょう。心地よく眠るための寝室の温度は1年を通じて19~27℃の間、湿度は60%がベストです。寝床内気候は、1年を通して33℃前後が良いといわれています。冷たい空気は下に、暖かい空気は上にたまりやすいので、空気を循環させるためにもサーキュレーターを上手に活用してください。
また、沈みすぎるマットレスや合わない枕では、寝返りがしにくくなり、体の痛みや歪みを引き起こす原因に。寝返りは、就寝中の体の健康を保ち、質の高い睡眠を維持するためにも重要です」(友野さん)
■7:パジャマを着て寝る習慣を身につけよう!
「スウェットやパーカーなどで寝ている人も多いと思いますが、ルームウェアなどの分厚い衣類では、寝返りが上手にできないため、睡眠の質が悪くなってしまいがち。快眠を目指すなら、きちんとパジャマを着て寝るようにしましょう。パジャマデビューする人は、コットン素材のものがおすすめ。肌触りや心地いいと思うものを選びましょう」(友野さん)
■8:寝る30分〜1時間前にはスマホはオフ
「テレビやPC、スマホの画面から発せられるブルーライトは、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌を抑制し、入眠を妨げます。特にスマホ画面からのブルーライトは暴露量が非常に高く、顔との距離も近いので要注意です。就寝30分〜1時間前になったら手放すようにしましょう。
また、不安になるようなニュースもできるだけ避けるようにしましょう。夜は脳も疲れていて、ネガティブになりやすいので、なるべく情報量は少ない方が良く、心が和むこと、リラックスできることに時間を使うことで、快眠がサポートされます」(友野さん)
■9:眠れない時は、一旦ベッドから出ましょう
「ベッドに入って30分以上眠れない場合は、一旦ベッドから出てください。そこに居続けると眠るための場所なのに休まらない場所と脳に意識づけされてしまい、翌日ベッドに入っても眠りづらい状態が起こりやすくなってしまいます。結果、人によっては入眠障害へと発展しまうケースも。ベッドから出たら、次のことを守って行動してください。
1.光の刺激を受けない。スマホやテレビは見ない。
2.頭を使わずにできる単調な作業を行う。読書や塗り絵、洗濯物をたたむなど。
3.時計は絶対に見ない。
4.眠くなったらベッドに戻る。
この4つが『眠れない時の夜のお約束』になります」(友野さん)
■10:スリープセレモニーでよい眠りをサポート
「スリープセレモニー(入眠儀式)とは、『これをすると眠れる』といった、無条件な意識づけを脳にさせるための行いのこと。例えば、ピローミストなどお気に入りの香りや、ヒーリング音楽など、自分だけのおまじないを持っておけば、スムーズに眠りのスイッチを入れやすくなります。また、おすすめの快眠法を以下にご紹介します」(友野さん)
<4−6呼吸法>
4秒かけて吸い、6秒かけて吐く「4−6呼吸法」は就寝前におすすめです。ゆっくりとした深い呼吸はリラックス感を高め、快眠を促進してくれます。
<足浴>
女性は末端冷え性の方が多いですが、手や足が冷えていると入眠が妨げられてしまうので、快眠促進効果のある足浴がおすすめです。43度程度の熱めのお湯で10分間、リラックスできる香りの精油をプラスすると良いでしょう。面倒な場合は、レッグウォーマーを着用し、10cm程度離したところから1分間ドライヤーの温風を当ててあげるのもおすすめです。
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いかがでしたでしょうか? 不安な毎日が続く中、慣れない生活でストレスも溜まり、生活リズムが乱れたり、不眠気味の方もいるかと思います。
ここで紹介した快眠のテクニックを取り入れて、心地良い眠りを手に入れて下さい。感染症予防のためにも、ぐっすり眠って、免疫力を高め、ウイルスに負けない体づくりを心がけましょう。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- EDIT&WRITING :
- 小池田友紀