経営者や上級管理職であるエグゼクティブ女性は、富裕層に位置することも多く、詐欺に狙われやすいといえます。あらかじめ、どんな詐欺に狙われやすいのかを知っておくだけでも、リスクを回避するすることができるはず。

そこで今回は、詐欺などの捜査を行っていた経験を持つ元刑事で、現在は一般社団法人日本刑事技術協会の代表理事として経営者やビジネスマン向けに講演などを行っている森 透匡さんに、エグゼクティブや富裕層がだまされやすい詐欺の手法と共に、それらにだまされないコツを教えていただきました。

森 透匡さん
一般社団法人日本刑事技術協会 代表理事(経営者の「人の悩み」解決コンサルタント)
(もり ゆきまさ)警察の元警部。詐欺、横領、贈収賄事件等を扱う知能・経済犯担当の刑事を約20年経験。 東日本大震災を契機に独立し、刑事が職務上体得したスキル、知識を用いてビジネスの発展と社会生活の向上に寄与することを目的とし、一般社団法人日本刑事技術協会を設立。現在は代表理事として「ウソや人間心理の見抜き方」を主なテーマに大手企業、経営者団体など毎年全国180か所以上で講演・企業研修を行い、これまで7万人以上が聴講。TBS、日本テレビ、読売新聞、日経新聞などメディアへの出演、掲載も多数。著書に「元刑事が教えるウソと心理の見抜き方(明日香出版社)」がある。ホームページ

エグゼクティブ・富裕層女性は「カモリスト」に載るリスクが大!

エグゼクティブ女性は詐欺に狙われやすい? ※画像はイメージです
エグゼクティブ女性は詐欺に狙われやすい? ※画像はイメージです

そもそも、エグゼクティブや富裕層の女性は、詐欺に狙われやすいという事実はあるのでしょうか? 森さんは次のように話します。

「エグゼクティブや富裕層の女性は、詐欺に狙われやすいといえます。なぜなら、まず富裕層はお金を持っているからです。詐欺師にとって詐欺はビジネスですから、当然、お金のない人より、ある人にターゲットを絞るのは当然です。

また、詐欺集団は富裕層女性のリストを持っています。例えば高級なマンションや自動車、さらには高級エステ、化粧品などの資料請求者や顧客のリストを、名簿屋などから入手するわけです。

そのリストは彼らに言わせれば『上客の見込み客リスト=カモリスト』になります。これらを駆使して、あらゆる方法でターゲットにアプローチをします。

ですから富裕層の女性は、常に自分が『カモリスト』に載る可能性があるということを覚悟しておくべきです。そのためにはネットなどで出元がよくわからないサイトのアンケートに安易に答えたり、資料請求をしたりしない、ということを心掛けてください」

エグゼクティブ・富裕層女性がだまされやすい詐欺は「国際ロマンス詐欺」と「投資詐欺」

マッチングアプリやSNSにも危険が…。※画像はイメージです
マッチングアプリやSNSにも危険が…。※画像はイメージです

では、エグゼクティブや富裕層は、どのような詐欺にだまされやすいのでしょうか。森さんは「国際ロマンス詐欺」と「投資詐欺」を挙げます。

東京の50代女性も被害にあった、国際ロマンス詐欺

「最近流行っている『国際ロマンス詐欺』は、主にインターネット上の交流サイトなどで知り合った海外の男性が、日本の女性を言葉巧みにだます手口です。

メールやチャット等のやりとりで恋人や結婚相手になったかのように振る舞い、金銭を送金させます。いわゆる『振り込め詐欺』の一種ともいえます。

送金してしまうと連絡がとれなくなり、ようやくだまされたことがわかるというわけです。

この詐欺は恋愛感情を上手く利用して相手をだますので、富裕層で特定の交際相手がいない方は、お金に余裕がある分だけ注意が必要でしょう。

昨年10月に犯人が検挙された事例では、東京都内の50代女性会社員が被害に遭いました。

これは一昨年3月下旬、マッチングサイトでシリア派遣中の50代の米軍人『アレックス』を名乗る人物と知り合い、SNS(会員制交流サイト)でやりとりを開始しました。

米軍人を名乗る人物は結婚をちらつかせた上で、『軍から報酬としてシリアで採れたダイヤモンド8個をもらったので預かってほしい』ともちかけ、日本への通関費用などで必要として、女性に同5月以降、金を振り込ませたというものでした。

不審に思った女性が警視庁に相談しましたが、この米軍人は実在せず、国際的な詐欺組織のメンバーがなりすました可能性があるということです。

この事件では、振込み先として指定された口座名義人の在日外国人が逮捕されたわけですが、この預金口座には他の女性からも約1億8,700万円が振り込まれていたそうです。

恋は盲目とは言いますが、会ったこともない人からお金を要求されることに『おかしい』と思えるかどうかが、だまされないポイントだと思います」

紹介制で利回りが以上に高い投資詐欺

「投資詐欺とは、『高配当の投資案件がある』などと虚偽の内容言って投資させ、金銭をだまし取る手口です。

昨今では、システムトレード、未公開株、事業への出資などを装ってだまし取る詐欺が横行しています。

詐欺話には特徴があって、利回りが異常に高い、勧誘・紹介の仕組みを導入している、元本保証であるなどを強調してだますことが多いと思います。

投資は『お金を殖(ふ)やす』ということですから、そこに目がくらむと冷静な判断能力を失い、だまされてしまいます。あくまでも冷静に判断しないといけません。

一方で、従来の投資とは違った投資、例えば『ビットコイン』などの暗号通貨を利用した投資話もあります。

未だにビットコインが怪しいと言う方もいますが、私も数年前まではそう思っていました。しかしよく勉強してみると我が国でも貨幣として認められたお金であり、世界でお金として使われていることを知りました。

つまり私が無知で不勉強なだけだったのです。正しい投資をするためには勉強も必要だということです。

そして紹介者がいれば、その紹介者が『もうかるよ』と言う根拠は何なのか、自分なりにきちんと根拠を調べて、投資するかどうかを判断すべきでしょう。

私も幾つか投資をしていますが、今の世の中では、過去の経験からして、"あり得ない高利回りの投資"というものが実際に存在します。すべてがすべて詐欺ではないのが判断が難しいところです。

ですから、正しく知る努力を惜しまないことが、だまされないためにも重要と考えます」

エグゼクティブ・富裕層女性が詐欺にだまされない3つのコツ

入念な確認と直感で判断して ※画像はイメージです
入念な確認と直感で判断して ※画像はイメージです

そこで森さんに、エグゼクティブ女性が詐欺にだまされないコツを教えていただきました。

■ポイント1:「情報源」と「根拠」を確認する

「国際ロマンス詐欺も投資詐欺もそうであるように、人間の欲望を刺激して相手をだまそうとするのが詐欺師のやり口です。

こういった詐欺にだまされないために、まず言えるのは、常に耳にする情報について『情報源』と『根拠』をしっかり確認することが大事だということです。つまり『誰が言っているのか?』『その根拠はなにか?』を確認するということ。

例えば、知人の『ある人』から投資話があったとします。その『ある人』がそもそも信用できる人なのかというところから確認が必要です。

そしてこの投資が儲かるというなら、その根拠を確認するということです。根拠には投資会社の信用、実績、実際に投資している顧客の口コミなどがあるでしょう。

これらに納得できれば投資を前向きに検討してしよいということになります」

■ポイント2:「直感」を大事にする・欲望に流されない

「詐欺にだまされないためには『直感』を大事にすることも重要です。相手の話を聞いていて直感で違和感を感じることはありませんか? 

相手の態度、言動などから上手く説明できないけれど『何かおかしい…』という直感です。

詐欺にだまされた方が警察に相談に来ると『あのとき、なんかおかしいと思ったんですよ』という言葉をよく使います。

『おかしい』という理由は説明できないけれど、実は違和感を感じていたわけです。しかし、結局は欲望が勝ってその直感が活かされなかったということです。少しでも違和感を感じたら、その直感を大事にしましょう」

■3:信頼できて事実に詳しい人に相談する

「自分の直感が反応したら、信頼できる人に相談してみるといいと思います。ただし、投資の話なら投資に詳しい人に相談すべきです。

知識のない人に相談しても参考にならないためです。詳しい人に聞いて、その意見を踏まえて、さらに検討するということになります。

他人に相談するということは、冷静さを取り戻す意味でも必要です。判断に迷ったときは必ず『信頼できる+事実に詳しい人』に相談しましょう」

エグゼクティブ・富裕層向けがだまされやすい詐欺と、詐欺全般にだまされないコツを教えていただきました。

直感を頼りにしつつ、その直感を逃さないこと、いったん、信頼できる人に相談することが重要であるようです。ぜひ参考にして、リスクを少しでも回避しましょう!

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この記事の執筆者
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WRITING :
石原亜香利
EDIT :
安念美和子
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