本格的な夏の暑さを間近に、「日が長くなったな…」と感じるころ、「夏至」を迎えます。「夏至」は毎年6月21日ごろにあたり、北半球では昼が最も長い日です。今回は「夏至」について、その意味や言葉の使い方、夏至の過ごし方や食事など、「夏至」にまつわる雑学を解説します。

【目次】

夏至とは?北半球では昼がもっとも長く、夜がもっとも短い日です。
夏至とは、北半球では昼が最も長く、夜が最も短い日です。

【「夏至」とは?「読み方」と「意味」、「由来」】

「読み方」

「夏至」は「げし」と読みます。

■「夏至」ってどんな日?「由来」は?

「夏至」は二十四節気のひとつです。「日長きこと至る(きわま-る)」という意味をもち、太陽の黄経(こうけい=天球上にある天体の位置を示す座標系)が90度に達し、太陽の南中高度が最も高くなる日を指します。そのため、北半球では昼が最も長く、夜が最も短くなります。反対に、南半球では一年のうちで昼の時間が最も短くなる日です。

■二十四節気をおさらい!

二十四節気とは、古代中国でつくられた季節の区分法です。黄道(地球から見て太陽が移動する天球上の経路)を基準に、1年を24等分して気候の推移を示します。そのため、各節気の期間は約15日。例えば、「夏至」といった場合、「夏至」に入る日を指す場合と、「夏至」にあたる期間を指す場合があります。

二十四節季の中で重要な節目となるのが、「二至二分(にしにぶん)」と呼ばれる、春分、夏至、秋分、冬至の4つの節目です春分と秋分は昼と夜の時間が同じになり、夏至は昼の時間が最も長く、冬至は昼の時間が最も短くなります。また、それぞれの季節の始まりを告げる立春、立夏、立秋、立冬の4つを「四立(しりゅう)」と呼び、二至二分と四立をあわせたものが「八節(はっせつ)」で、この八節を3つの節気に分けたものが二十四節気となるのです。


【2024年の「夏至」はいつ?】

■「夏至」はいつ頃?

太陽の軌道は一定ではないため、「夏至」をはじめとした二十四節気の日付は固定されておらず、毎年、国立天文台暦計算室によって定められます。「夏至」は太陽暦(現在使われている暦)の6月21日ごろ。期間としては6月21日ごろからの約15日間を指します。

■2024年の「夏至」はいつ?

2024年の夏至は、6月21日の金曜日です。

■暦のうえでの「夏」っていつなの?

二十四節気では、「立夏」(5月6日ごろ)から「夏至」を経て「立秋」(8月7日ごろ)の前日までが、暦の上での「夏」にあたります。手紙を書く際には、時候の挨拶として、二十四節気を意識することが大切になります。


【夏至の「昼の時間」は何時間?】

■全国の平均は、約14時間50分

「昼の時間」とは、日の出から日の入りまでの時間を指します。2024年6月21日の東京の日の出・日の入りの時刻を、国立天文台のホームページで調べてみましょう。
日の出:4時26分
日の入り:19時00分
2024年の「夏至」、東京の昼の時間は約14時間34分です。もちろん日本国内でも緯度が違えば地域によって日の出・日の入りの時間は異なり、昼の時間も違ってきます。全国の平均時間は、約14時間50分程です。ちなみに、2024年の「冬至」にあたる12月21日、東京の日の出、日の入りの時間はそれぞれ6時47分と16時32分で、日照時間は9時間45分です。「夏至」と「冬至」で、5時間弱も差があることがわかります。

■「夏至」は、いちばん日の入りが遅い日?

「夏至」の日は「日の出が最も早く、日の入りが最も遅い日」、そして「冬至」は「日の出が最も遅く、日の入が最も早い日」だと思っていませんか? 実はここには少々誤解があります。日本では、日の出が最も早い日は、夏至より1週間ほど早く、日の入が最も遅い日は夏至より1週間ほどあとになります。冬至に関しても、日の出が最も遅い日は冬至のあと、日の入が最も早い日は冬至の前になります。この現象は、日本中どこでもほぼ同様です。


【日本でいちばん「昼の時間」が長い場所は?】

「夏至」の日、太陽は一年の中で最も北寄りから昇り、最も北側に沈みます。そのため、この時期、日本の中でいちばん「昼の時間」が長いのは、北海道です。そして、北海道の中でもいちばん昼が長くなるのは、日本最北端の「稚内」です! 稚内は北緯45度。日の出・日の入りの時間をみてみましょう。
日の出:3時44分
日の入り:19時25分
となり、約15時間41分が「昼の時間」となります。東京の約14時間34分とは、1時間程の差がありますね! 北海道の稚内にあるノシャップ岬は夕日スポットとして人気。「夏至の日の入り」を楽しむ方が多く訪れるそうです。


【「夏至」の食材・行事食は?】

「夏至」は二十四節気の中でも、大切な節目の日のひとつです。そのため日本では昔から、夏至の日に特定の食べ物をいただく習慣がありました。日本各地の「夏至」にまつわる食材や行事食をご紹介しましょう。

■「小麦餅・半夏生餅」(関東・河内地方や奈良)

昔、多くの農家は小麦と米の両方を育てる二毛作を行っていました。「夏至」を迎える頃には小麦の栽培と収穫が終わり、「夏至」から数えて11日目の「半夏生(はんげしょう)」のころ、田植えが終わったといわれています。ちょうどそのころに食べていたのが、小麦餅です。小麦餅とは小麦粉をこねて焼いた餅のこと。農業の繁忙期に、小麦の収穫などを無事に終えたことを神さまに感謝したり、お互いに労をねぎらう意味があったそうです。また、「夏至」に頂いた小麦餅は、河内地方や奈良県などでは「半夏生餅」とも呼ばれています。

■「タコ」(関西)

小麦餅(半夏生餅)と同様、夏至~半夏生のころに関西で食べられているのが、この時期に旬を迎える「タコ」です。半夏生の頃に田植えを終えた農家の方々の、「植えた稲の根がタコの足のように地にしっかりと根付いてほしい」「タコの吸盤のように、稲穂も大きく育ってほしい」という願いが込められているといわれています。

■「無花果田楽(いちじくでんがく)」(愛知県)

「夏至」に食べられている食材のなかでもユニークなのが、愛知県に伝わる「無花果田楽」です。半分にカットしたイチジクを田楽味噌で頂きます。不老長寿の果物とされるイチジクを食することで、健康や長生きを願う意味合いを込めたのではといわれています。

■「焼き鯖」(福井県)

福井県大野市を中心に残っているのが、半夏生に焼さばを食べる風習です。現地では「半夏生鯖(はげっしょさば)」と呼ばれています。「夏至」のころは農家にとって最も忙しい時期にあたり、この地方で水揚げ量が多い鯖を丸焼きにして食べるようになったのだとか。鯖はタンパク質やDHA、EPAなどが含まれ栄養豊富なので、夏至の時期に焼き鯖を食べることで疲れた体を癒し、暑い夏を乗り切ることを目的に食べられているのでしょう。

■「水無月」(京都府)

京都で広く知られているのが、「水無月」と呼ばれる和菓子です。これは、白いういろうの上に小豆を乗せたもので、京都の多くの和菓子店には、夏至の時期になると水無月が並びます。氷のかけらにみたてた水無月で夏の暑さを乗り切りたいもの。また、上に乗っている小豆には、悪魔を払う意味もあるそうです。昔は、このような和菓子は庶民にとって貴重で高価なものでしたが、夏至などの節目のときには、無病息災を願い、食べられていたと考えられます。

■「うどん」(香川県)

うどんが名物である香川県では、夏至にうどんを食べる習慣があります。これは、小麦の収穫などが終わる夏至から半夏生のころに、うどんを打って人々に振る舞っていたため、といわれているようです。

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「夏至」は、北半球では「昼の時間」が最も長く、「夜の時間」が最も短い日です。「昼の時間」とは、日の出から日の入りまでの時間を指します。一方、「日照時間」は、1日のうちで、直射日光が地表を照らした時間を指すため、この記事では「昼の時間」とは区別しています。日本だけでなく世界各地に、「夏至」にまつわる風習は残っているようです。「昼の時間」が長いことを歓迎する気持ちは、世界共通なのですね。2024年の「夏至」は6月21日の金曜日です。さて、あなたはどう過ごしますか?

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社) 国立天文台「暦Wiki」https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B5A8C0E12FC6F3BDBDBBCDC0E1B5A4A4CEC4EAA4E1CAFD.html 「日の出入り」(https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/dni/2024/s1301.html) :