家にいる時間が多くなった今、これまで「やりたいけれど、忙しくてなかなかやれなかったこと」をやるチャンスでもあります。手間暇かけて、じっくりと自宅で何かを手作りするのもそのひとつ。
今回は、そんな手作りの醍醐味を存分に味わえる、「梅干し」のつくり方をご紹介。梅干しを誰よりも愛する梅マイスター、梅干しソムリエの梅干梅子さんに、梅干しを手づくりすることのメリット、梅干しの基本のつくり方、おいしい食べ方を教えていただきました。
毎年、6月初旬ごろから出回り始める梅を使って梅干しを仕込み、7月下旬ごろから食べられるようにつくりましょう。
梅酢という副産物も!梅干しを手作りすることのメリット3つ
今の時代、梅干しも、こだわりのものがネットでもお取り寄せができますが、自分で手づくりすることもできます。まずは梅干しを自分でつくるメリットを教えていただきました。
■1:いい香りで癒される
「梅干しをつくるのには完熟梅が適しています。梅干しを漬ける作業をしている間、部屋の中が桃のような甘くてとってもいい香りになるので癒されます」
■2:梅酢も作ることができる
「毎日少しずつ漬けた梅から、梅酢が出てきます。この梅酢は栄養価がとても高く、殺菌力もとても強いもの。料理の調味料をして使用したり、喉の痛みがあるときのうがいや、まな板の殺菌にも使用したりできます。
梅酢はお手軽な値段で購入することもできるのですが、自分でつくった梅酢を使用して料理などをつくるのは、とても楽しいものです」
■3:愛着が出てくる
「購入する梅干しも、もちろんおいしいものはたくさんあるのですが、自分で漬けたり、干したりする間にどんどん愛着が出てきます。『もう少しこうしたらよかったなあ』と反省して、『次はこういう風に工夫してみよう』など考えるのも楽しみです」
梅干しづくりの材料は意外とシンプル!
メリットを知ると、早速、梅干しを手作りしたくなってきますよね。梅干しのつくり方を教えていただきましょう!
梅干し作りの時期は6月の今がまさにベスト
「梅が出回り始める6月中旬から下旬ごろまでの時季につくりはじめるのが一般的です。そして梅干しを仕込んでから、3か月後くらいから食べ始めることができます」
【必要な道具】
・保存瓶(5kg)
・ふきんかタオル
・ビニール袋…2~3枚
・消毒用のアルコール(ホワイトリカーまたは35度以上の焼酎)少々
・竹ぐし
・ザル(梅干しを干すもの)
梅と塩のみでOK!「白干梅」の作り方
白干梅(しらぼしうめ)とは、梅と塩のみを使用してつくる梅干しです。
【材料】
・完熟梅…2kg
・あら塩…400g
「梅干しをつくるのには完熟梅が適していますが、完熟梅は傷みやすく手に入りにくいです。スーパーなどで色づいた梅を購入して、自宅で追熟させて使用しましょう」
【つくり方】
下準備:保存瓶をアルコールもしくは焼酎で消毒しておく。
(1)たっぷりの水で、梅が傷つかないように洗う。
(2)ふきんかタオルで優しく水気をふく。
POINT:「少し水気が残しておくと塩となじみやすくなります」
(3)竹串で梅のへたをとる。(完熟梅はヘタがすでにとれているものが多い)
(4)瓶に梅とあら塩を交互に入れていく。
POINT:「このときになるべく梅を塩で覆うようにするとカビが生えにくくなります」
(5)ビニール袋2~3袋に水を入れて重石にし、瓶の中に入れる。水がこぼれないようにしっかりとビニール袋を閉じる。
(6)蓋をしたあとに、瓶にもう一度アルコールを吹きかけておく。涼しい場所で保管する。
(7)2~3日で梅酢が上がってくる。梅酢の上がり具合が少ない場合は水を追加して重石を増やす。
POINT:「梅が常に梅酢に漬かっている状態にしてください。カビが生えていないかもチェックしましょう」
(8)梅雨が明けて、天気のよい日に3日間、ザルの上で干す。梅のどの面も干せるように、ある程度干したら、梅を裏返してまんべんなく日光が当たるようにする。
POINT:「瓶に残っている梅酢は捨てずに、消毒した容器に入れておきます。梅酢も天日に干しておくと殺菌されます」
(9)3日間干し終わったら、保存容器に梅干を入れておく。
【食べごろ】
「最初は干して乾いていた梅干から少しずつ蜜が出てきます。(9)で保存容器に梅干を入れてから3か月くらいたったころから食べることができますが、そのまま1年くらい熟成させると味や梅のやわらかさも変わってきます」
【保存方法と消費期限】
「塩分20%で漬けたものなので、基本的にはカビが生えない限りは、冷暗所で何年でも保存できます。ただ20%以下の場合は、カビなどが生える可能性もありますので、冷蔵庫などで保存したほうがいいと思います」
梅干しを手作りする際の注意点
続いて、梅干しを手づくりする際の注意点を教えていただきました。
■1:しっかりと容器や器具を消毒してから
「カビの予防のために、容器や器具などをアルコール(ホワイトリカーや35度以上の焼酎)などでしっかり消毒しておきましょう」
■2:3日間しっかり干せるように天気予報をチェック
「梅はできれば3日間干したほうがいいので、干す前に天気予報をしっかりチェックしておきましょう」
■3:初心者は塩分20%からトライ
「塩分20%以下だとカビが生えやすいので、初心者の方は20%から挑戦したほうがいいと思います」
手作り梅干しの味わいを存分に楽しむ食べ方
手づくり梅干しは、どんな風に食べるのがおすすめでしょうか。
「温かい炊き立てのご飯にのっけて食べると、自分でつくって、おいしくできてよかったなあとしみじみとした気持ちになります。おすそ分けした人や家族にもおいしいと言われると、とても嬉しい気持ちになります」
そこで、梅干さんがおすすめするそのほかのおいしい食べ方を3つ教えていただきました。
酸味がやわらぎ、食べやすくなる「焼き梅」
【つくり方】
フライパンで焼く場合:弱火でじっくりと、両面にほどよく焦げ目がつくくらいに焼く。油は引かない。
レンジの場合:爆発しないように梅干を水で湿らせてから、レンジ500ワットで1分くらい加熱する。
おいしい上に、風邪のひき始めにも効果的な「梅湯」
【材料】
梅干し…1~2個
すりおろした生姜…ひとかけ
熱いお湯…コップ1杯分
【つくり方】
コップに梅干し、すりおろした生姜、お湯を注ぐ。
「黒糖を入れてほんのり甘くしてみたり、わさびを入れたりしてピリリと辛くしてもおいしいです。お湯ではなく緑茶でつくってみてもおいしいと思います」
さっぱりした飲み口が爽やかな「白梅酢とはちみつの炭酸割り」
【材料】
白梅酢…大さじ1
はちみつ…大さじ1
炭酸水…200mlくらい
【つくり方】
(1)コップに白梅酢大さじ1、はちみつ大さじ1を入れて混ぜる。
(2)しっかり混ぜて炭酸水を注いだらできあがり。
「白梅酢はかなり塩分が高いですが、はちみつを入れると甘くて飲みやすくなります。さっぱりしたいときにもおすすめです」
手順は多いですが、難しいことはなく、少ない材料でも挑戦できる手作り梅干し。今年は、ぜひ梅干しを仕込んで、自分好みの味を見つけてみましょう。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 石原亜香利
- EDIT :
- 安念美和子、榊原淳