「私か」の読みは?意味は?この字でそう読むと…太宰っぽい!?
本日、6月19日は『桜桃忌』=文豪・太宰 治の記念日です。「忌」がつくということは「忌日」で亡くなった日のことよね?とお思いの方、確かに「○○忌」といえば、一般的には「○○さんの亡くなった日=忌日」を表しますが、太宰 治に関してだけは、シンプルに「亡くなった日」と表現するわけにはいきません。
太宰 治は1948年の6月13日に東京の玉川上水に愛人と共に入水心中し、遺体が発見されたのが6日後の19日なのです。ですので、6月19日を「忌日」というには語弊があるのですが、6月19日は奇しくも太宰 治の誕生日でもあったことから、この日を『桜桃忌』と呼び、太宰 治の記念日としたわけです。
(ちなみに太宰 治の出身地である青森県金木町では、生誕90年となる1999年から『桜桃忌』ではなく『太宰 治生誕祭』と改名しています)。
『桜桃(おうとう)』は太宰 治の晩年の作品名でもあり、この時期が桜桃(さくらんぼ)の最盛期でもあることが、『桜桃忌』という名の由来です。
誕生日や忌日にまでこのような数奇なエピソードがつきまとうとは、自己破滅型の天才と評される太宰 治の生涯に、因縁めいたものを感じてしまいますね。
では、「忌」という字で、本日1問目のクイズと参りましょう。
【問題1】「忌々しい」ってなんと読む?
「忌々しい」という日本語の、「いまいましい」以外の読みかたをお答えください。
ヒント:「いまいましい」と読むと「しゃくにさわる」という意味ですが、もうひとつの読み方では「ほうっておくと、取り返しのつかない結果を引き起こしそうな」という意味になります。
<使用例>(いまいましい、以外の読み仮名で)
「太宰 治という作家は、存在そのものが忌々しい、という感じですね」
…さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 忌々(ゆゆ)しい です。
「ほうっておくと、取り返しのつかない結果を引き起こしそうな」というとイメージしにくいかもしれませんが、「忌々(ゆゆ)しい」を現代の若者言葉にするなら「ヤバい」と言い換えることができる感じがします。
「太宰 治という作家は、存在そのものがヤバい、という感じですね」
…しっくりきたでしょうか? ひどい言いような気もいたしますが、太宰 治の代表作にして私小説である、と言われている『人間失格』の冒頭文は、あまりにも有名です。
「恥の多い生涯を送って来ました。」
この一文だけで読者を引き込む鮮烈さを持つ、まさに名文。実際の太宰 治の生き方のエピソードとあいまって、読者の胸に迫ってきます。
というところで、2問目のクイズです。
【問題2】「私か」ってなんと読む?
「私か」という日本語の形容動詞の読み方をお答えください。
ヒント:他人に気づかれないようこっそりするさま。または、個人的に。正式ではなく」という意味です。
<使用例>「小説を書くことは、もともと、自分自身を吐露するための、日記のような、私かな営みだったのです」
さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 私(ひそ)か です。
「密(ひそ)か」という表記がポピュラーですが、
「私(わたくし)」の対義語が「公(おおやけ)」であることをふまえると、「私(ひそ)か」も「なるほど!」と納得する表記ですよね?
『人間失格』や『斜陽』を読む時、無性にドキドキするのは、「私(ひそ)か」なものを盗み見ているかのような背徳感をイメージするせいかもしれません。
本日は『桜桃忌』にちなんで
・忌々(ゆゆ)しい
・私(ひそ)か
という難読漢字をおさらいしました。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- ILLUSTRATION :
- 小出 真朱